第01話 はじまりの出会い-04
「はい!喜んで」
俺は彼女の部活の勧誘に笑顔でokをした。
Okの返事をするとすぐさま彼女(先輩)は登録する紙を持ってきた。
「ありがとう後輩くん、じゃあさっそくこれにサインして」
「はい、先輩!」
俺は先輩のシャーペンを借りて、部員登録用紙を書く。が、俺はふと一つ疑問に思った。
この音楽同好会は非公式だ、だからこの紙を書く意味があるのだろうか……
「先輩これ書く意味あるんですか?」
「公式になったときのためにいるから一応ね」
その後、この学校では同好会にするためには最低4人の加入、部活にするためには10人以上の加入か人数がそれに見たいのなら同好会で1年間の活動記録を書けば同好会から部活に名前を変えられると先輩が説明してくれた。
「へへ、確かに意味があるて言われたらまあ意味ないかもね」
先輩は少し悲しそう笑って、虚しい感想を添える。
「あ、そうだ活動記録書かなきゃ!今日は君が加入したからいい事が書けるよ」
先輩は自分が座っている机から活動記録と書かれたノート取り出して、悲しそうな表情をすぐにさっきのような嬉しそうな表情にしてノートに書き始めた。
「あの?そのノート去年から書いているんですか?」
「うん、まあねえ」
先輩は近眼なのかメガネをかけた姿でそう答える。
「そうですか……」
しかし、メガネというものは恐ろしい物だ。
メガネを掛けてないと可愛らしく明るいじで少し抜けてそうな先輩なのだが、メガネをかけると控えめに美しく賢そうで結構できそうな先輩になる。メガネをかけている先輩は美しさが強調されて大人感が出てちょっとセクシーな感じがする。
「どうしたの?」
書く姿にみとれていると、先輩が劣情な風をサッチしたのか俺に話しかけてくる。
「い、いえいえ何でもないです、何でも」
俺は大事な事なので2回繰り返して頑なに劣情な気持ちはないと否定をする。
「うん?なんか怪しいね……後輩くん」
先輩はメガネを上下動かしキラッとさせ、浮気に迫る妻のような顔で俺に近づいてくる。
昨日のギャルゲーのやりすぎなのか頭の中で選択肢が出てくるのを期待してしまったが、現実はそんな甘くそんな選択肢など出てこない。
選択肢などないこの現実で、俺は昨日のギャルゲと今まで見てきたアニメや漫画の経験と感性を経て、この状況で最もいいと思う判断を必死に取ろうとする。
「そ、その……メガネかけた宮崎先輩も可愛いなと思って」
そうこういう時は素直になって誉めて置けばいいのだ。
俺は今まで素直になりきれず引きずり過ぎてえらい目あってきた主人公たちを数々見てきた。
そうなのだよ、一条くん、竜二くん、早乙女くん、君らちょっとした事すら素直になってあげらないのかね。そんな先人たちを判明教師にして俺はこの選択をした。そう、この選択をすればいきなり好感度超アップ間違いなしだ。俺はそんな期待もしてその台詞を恥ずかしそうに言った後、先輩の様子を伺う。
「はう!」
先輩は謎の「はう」という言葉を言った後、頭から湯気が出てきてメガネが曇りそうなくらい顔を赤くして、しばらくそのまま停止する。
「先輩?」
沸騰しそうなくらい赤くなって停止した先輩を見る。ちょっと想定外な反応をされたので俺は頭の中がソワソワしている。ソワソワした頭を直そう頑張ったが、俺は恥ずかがってる先輩にすらみとれてしまっていた。
「しょ、初対面なのに恥ずかしいよ……後輩くん」
「……!?」
俺は頭の中でパリンと何が割れる音がした。
ともかく終わってしまった、この発言で俺への好感度が右肩下がりのジェットコースターの如く急降下しただろう。俺は大変な見落としをしてしまった先輩とは初対面なのだ。そう、初対面から先輩を可愛いと馴れ馴れしく言った事により俺はそんなやつだと思われてしまった。
いや、そうに違いない。
「あ、あのそ、その……」
失敗してしまったという思いのせいか、まともに話すことができない。
「はうう……」
また謎の言葉を発しながら、恥ずかしがる。
先輩はその恥ずかしさを解くためかメガネを外そうとケースを手に取る。と、その時旧楽器の倉庫である部屋のドアが開く音がした。
「よ!宮崎、見に来てやったぞ!」
機嫌よく現れたのは、国語の女教師、玉置早苗であった。いつも真剣な眼差しで授業をしているので、こんな機嫌のいい先生を見るのは初めてだ。しかも、髪はいつもセミロングで結すんでいるのだが、結ばすに肩までのロングヘヤーになっていた。
「て、なんだ君」
当然の事なのだろうが、先生は俺の姿を見て不思議そうな顔をする。いつもは先輩しかいないのだろうから、当たり前の反応だろう。
「まさか、宮崎お前の彼女か?」
先生は冗談めかして、先輩をからかう。
「な、何言ってるんですか先生、違いますよ!」
先輩はメガネケースを持ったまま腕を上下にバタバタさせて可愛いらしく怒りを表現する。
「ははあ、冗談だよ宮崎」
「はうう……」
先輩は頬っぺたを今にも膨らませそうな顔で軽快に笑う先生を睨む。俺は授業とのギャップがありすぎる先生と先輩のやり取りにポカーンとしつつも、思わぬ助け船が来てくれた事に感謝する。
「あ、そうそうこの子ね、この部活入ってくれたんだ」
先輩はさっきのように嬉しそうにするので、俺は心の底から安心する。
「奥谷茂明です、これからよろしくお願いします」
俺は先生に深く頭を下げ、しっかりと自己紹介をする。
「ちなみに1年で後輩くんなんだ~」
「そうかそうか」
さっきまでの空気がガラッと変わって、先輩が俺の事を先生に楽しそうに話していて、空気が和やかになりつつある。
「はい、一年生です……」
俺は先輩の紹介に照れながら、自己紹介相手の先生の方より先輩の方にチラチラと視線がむいてたまらない。
「見て見て、もう紙も書いてくれたんだよ」
「オー、そうかそうか!」
二人は俺が書いた登録用紙を見ながら嬉しそうにニコニコとしていた。
「これで、同好会への道が一本近づいたな!」
「はい!そうですね、先生!」
素直に喜ぶ先輩も、あどけなく可愛い……
喜ばしい空気の中、俺は目を休む事なく先輩を見つめる。
「よし、それはそうとだ奥谷!」
先生にさん付けてばなく、いきなりの呼び捨てでしかも、普段お堅く真面目な先生では考えられないような、気軽るそうで先生というよりは運動部の部長みたいに話してきたので、俺は
さらに普段とのギャップに戸惑う。
「はあ、はい!」
戸惑う思いと先輩を少し不埒に見ていたので何かからかわれるのでは……と身構え、声が裏返って俺は返事をしてしまう。
「大丈夫!大丈夫!そんなに緊張しなくていいよ」
幸い、先輩は俺の挙動に不審感など抱かず、逆に声が裏返ってる俺を心配して、励ましの声をくれた。
「いや、すいません、すいません、ちょっと上がっちゃって」
先輩の励ましす声に俺はわざとらしい言い方で言い訳して、先輩にこれ以上何も悟られないように言葉と表情を取り繕う。
「そうか!後輩くんそんなにこの部に入れて嬉しいんだね」
先輩はものわかりがいいのか、俺の取り繕った表情と言葉に一切の疑問を持たずに信用してくれて、先輩は嬉しそうな顔で今度は両手を握った。
「あ……」
「へへ」
俺は至近距離で先輩の何にもか飾らない素直な微笑みにみとれ、この握ってくれている手を離したくないと心から思った。
「げふん、宮崎、ちょっとそいつと顧問と新部員の2人だけで話がしたいから席を外してくれないか」
先生は突然を声をかけて、俺を呼びとめて先輩をはかし、色々と盛り上がっている俺に水を差す。
「じゃあ終わったら呼んでください!」
先輩は腕をバイバイとしながら廊下へ出ていく。
「よし、行ったか……」
ドアが閉まってしばらく沈黙が続き、先輩が完全に外に出たと確認すると、部屋が少し暗い空気になる。暗い空気になると先生の表情がいつもの授業の表情になる。
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