祭りの夜を語る、宴会仕掛け人の七夕プランナー
【本文とは関係のない注釈】
イベント計画の詳細説明回です。
話し的に進展がないので説明は一話に詰め込みます、つまり長いです!
冒頭のチラシ部分だけ見て下されば、後は読み飛ばしても問題ありません。次回前書きに、概要をまとめて記載します。
出し物、配置、お金の扱いなんかの話です。
あと、これは計画段階なので、開催までにまだ増えたり変わったりする可能性もあります。
て言うか少し変えます(ネタバレ)
□ □ □ □
―――――――――
『七夕祭り』
・ イベントの概要
短冊に願い事を書いて、竹につるす。
ステージを設け、出し物や七夕的雰囲気の事柄を行う。
願い事の一部を読み上げ、良いお話をする。
ノリと勢いで盛り上がる。
・ 開催概要
日時:7月7日(土)19時~
場所:フリークブルグ 城前イベントスペース(中央広場全域)
準備:同日10時~(会場の利用可能時間 7/7 10時~24時)
・ 準備する設備
① 竹・短冊
② 天の川
③ 観覧席
④ ステージ
⑤ 屋台
⑥ 花火
⑦ 演目
① 竹・短冊
竹 (お試し生産、または栽培スキル)
短冊 (大量の紙 単純作業/書記スキル)
糸 (NPCショップ、または栽培スキル)
ペン (NPCショップ、または書記スキル)
記入台(木工スキルまたは家具製作スキル)
② 天の川
穴掘り(初級魔術、土魔術など/単純作業)
水 (初級魔術、水魔術など/単純作業)
光る花(栽培スキル)
③ 観覧席
大量の座布団(栽培スキル、裁縫スキル)
畳、ゴザ等 (栽培スキル、裁縫スキル、家具製作スキルなど)
ベンチ (木工または家具製作スキル) ※なくても立ち見で可
④ ステージ
ステージ (木工または家具製作スキル)
仕切り、扉 (同上)
階段 (同上)
⑤ 屋台
屋台 (木工または家具製作/出展者次第)
提灯 (探索スキル、道具など。外装は紙で作れるか?)
⑥ 花火
爆弾 (空中でタイミングよく爆破できるか?)
火魔術(同上。爆弾よりは楽そう)
花火 (実現可否不明。調査・職人捜索が必要)
⑦ 演目
ステージで出し物をしてくれる人を探して交渉
※ 出演料はゼロ。観客席を確保、屋台の料理や記念品程度
―――――――――
「まずはイベントに対し、どこでどのようなことをやるのかのイメージを共有したく。
準備するのは、七夕イベントの設備として4点。それに屋台と花火、ステージでの演目をやりたいところでございます」
会場のイメージは、こんな感じだ。
まず、広場の中央やや北側に噴水があるが、噴出す水はイベント時には停止することができる。噴水を止め、噴水の場所にイベントステージを設置する。
短冊をつるす竹はステージの左右、観客席からお城と竹が両方見えるような位置取り。
ステージから南に真っ直ぐに浅い穴を掘って天の川とし、光る花を植えて薄く水を張る。
天の川の両脇にはゴザまたは畳を敷き、その上に座布団を並べて観客席。余裕があれば座布団列の後方にベンチを作ってもいい。
屋台はイベントの外枠となるよう、広場内の壁際に並んで設営。枠と店構えは統一感を出して屋台らしくしたいので、簡単な外枠はこちらで製作予定。
花火は、イベント会場ではないが、城の前か後ろでちょうどよい空き地を探し、そこで上げる。爆弾、火魔法、可能ならリアル花火職人等を探す。
演目については、自分たちだけでやるには手が回らない。この世界で有名なイベント集団などを当たって出演を依頼する。
なお敷地の北側・噴水より奥全体は、景観を重視し短冊を吊るした竹を立てる以外は、空き地として進入禁止。左右壁沿いにスタッフ控室を設置する。
「演目の出演料がゼロでー、人って集まるのかしらー?」
「確かに、簡単には集まらないと思います。
素人芸大会になってしまうくらいなら、演目自体をカットした方がマシでございますね」
質問したわきさんが頬に指を当てて小首を傾げるのを見つつ、落ち着いて説明する。
この質問は想定していたし、よく聞かれる問題だ。だから、いつも通りに答えを返す。
「出演料が欲しい、ギャラがないならやらない、という考えはごく自然の事でございます。
ただしそれは、あくまで現実世界なら、という面もあるのですよ。
ここはゲームで、楽しむ場所。現実的な設備や電力も不要ですし、面倒な手続きもいらない。
お金がなければ楽しめないなら、それはあんまりぼくの趣旨とは相容れないのでございます」
あ、当然ですが、七夕祭りの見学や参加は全て無料です、と補足する。
ぼくにとっては当然の事なので書くまでもなかったんだけど―――
「ええっ、こんなに色々準備とかするのに、無料なんですか?」
「短冊代とか場所代とか、座布団席は有料とかしないの?」
「無……料……っ!?」
「屋台はー、流石に無料じゃないよねー?」
「なんか、一斉に驚かれた!?」
みかんさんとリーリーさん、クルスさんとわきさん。
つまり、この世界で初めて出会った方達が、それぞれに驚きの声をあげる。
あ、屋台の内容と価格は基本的に出店者の自由ですし、主催者の屋台以外で無料は無しの方向でお願いします。
あっちの店は無料だったのに!なんてクレームが出るのを防ぐために。安売りやおまけはOK。
「らあ、お前が変わり者っチョ。みんな普通の反応っチョ、変人はお前だけっチョ」
「穴が掘れて爆弾が投げられる、工作員として他に対価など不要!」
「流石はライナ……ね」
元から知ってた3人、チョリソーは煽ってきた、ラシャは平常運転、はるまきさんは苦笑い。
とりあえずチョリソーはむかついたので1
「あー、そうですね。最初にお金関係の説明をするべきでした、すみません。
まず、原則としてイベントへの参加は無料でございます」
観客がやってきて、短冊に願い事を書き、観客席に座って演目を見学する。これらは全て無料だ。
屋台での買い物は有料だが、そこは普通のお祭りでもそうなので、当然と思って欲しい。
「イベントの開催には、イベント会場のレンタルを始めとして、
この費用の回収は、一切考えません」
「じゃあ……」
首をかしげるクルスさんに、きっと違うことを想像してるのだろうから、笑顔で首を振ってみせる。
「もちろん、協力していただく皆さんからお金を出してもらうこともしません。
と言うか、例え出そうとしても、一切受け取りません」
一人でも払ってしまえば、それをぼくが受け取ってしまえば、スタッフは同列ではなくなる。
ぼくにとっては同列でも、お金を払った人と払っていない人が居るという事実は、何らかの
だから、誰からも、一切、イベント資金は受け取らない。
変に意識させることもないので、わざわざ説明はしないけどね。
「ただしこれは、皆さんに本当に1Fもお金が掛からない、という意味とはちょっと違います。
例えば材料を取りに行くために馬車に乗ったとか、伐採で傷んだ斧を修理したとか、素材集めの途中で薬を使った、とか。
そういった経費部分は、あまり高額でない限りは皆さんに負担いただく部分ともなります」
もちろん、買出し当番の人が短冊のための紙をショップで買ってくるとか、そういうのはお金を渡すのでご安心下さい。
でも細かい部分まで収支を記録してお金をやりとりするのは、ぶっちゃけぼくが把握しきれない。処理量オーバーでございます。
―――という建前の説明で済ますけれど。こちらも実際は少しだけ違う。
経費のやりとりしようとしても、申告する人としない人が生まれてしまうので。全員同列の原則で、所持金の辛い初心者以外は、原則みなに協力してもらうものとしてるわけです。
把握? そんなの、全部入力デバイス使ってメモして計算させるだけだから、申告さえしてくれれば把握なんて余裕っすよ。これ内緒ね。
「お客さんからも、私たちからも受け取らないってことは、全てライナさんのポケットマネー?」
「ええ、ぼくがやりたくて好き勝手するんですから。ぼくが払うのが当然でございますよ」
リーリーさんの質問に頷く。
そりゃそうだ。これは、皆に協力をお願いしてるけれど、突き詰めればぼくのわがままなんだから。
―――ただし、今回に限っては、そう考えない人が居ることを忘れていた。
「そんな、そんなの駄目です!
ライナさんは、だって私が―――」
おっと。その続きは、まだ内緒でございますよ?
すぐ横の席で腰を浮かせたみかんさんの口をやんわりと塞ぎ、微笑む。
「七夕祭りは、ぼくが言い出して、ぼくが主催することでございます。
ですからぼくが払う、で良いのでございますよ」
ごめんね、今はこれで納得してね、と小声で付け加えて。
明らかに納得してない顔ながら、みかんさんは渋々座りなおした。酸味が強めで甘みの少ない
「こほん、最初に説明すべきでしたね、申し訳ございませんでした。
ですので、例えば今日わき様にご準備いただいたこの超おいしいホットドッグ、これも会議の経費であり、イベント準備の一環。ですからぼくの奢りでございます。
お金、絶対に受け取ってもらいますからね?」
笑顔でホットドッグを宣伝しつつ、言葉の最後はわきさん宛てに強めに言い聞かせる。
「ライナ先輩用のお値段で請求書出しまーす」
だけどわきさんは、いつものにこにこした表情にちょっといたずらっぽい色を乗せ、軽く受け流すのだった。
「……いや、本当に払うからね? 嘘つきにさせないでね?
まあこんな風に、各自に特技や職がありますから。出来ることに関しては、各自の裁量でご協力をお願いしますよ。
ただいまご利用のテーブルと椅子やベンチは、そちらのチョリ―――蛮族様からのご提供です」
「逆っチョ!
斧士で大工、木だって伐れちゃう蛮族系チョリソーだチョ!
隣のラシャと一緒に、以前からライナの
「
宴会勇士という名前は、昔別ゲーでイベントをやったとき、仲間達につけた役職名だ。ようするに、スタッフのこと。
けして悪の手先ではないのだが、まあ家具の提供に免じてそのくらいの
「ライナ……さん」
「クルス様、どうなさいました?」
前髪で見えないが、多分こちらを見つめて。
少し悩んだ風な後、クルスさんは小さく首を振った。
「何でもない…です」
「わかりました。何かあれば、後からメールでも良いので、気軽におっしゃって下さいね」
お金の話で随分脱線してしまったが。そろそろ軌道修正する。
「そういうわけでして。
イベント自体も無料なので、演目も無料で受けてくれる人たちにお願いしたいわけでございます。
いいツテとかあったら教えて下さいませ」
「協力してくれる人が見つかるといいですね!」
「ええ。そこはこの世界で過ごす人たちの、ノリと熱意に期待でございますね」
ユーザーイベントとしてコンサートや演劇をやっている人たちも居る。
そういう人たちと交渉して回るのがまず第一歩だろう。大抵の人たちは、公演する時は観客無料で活動しているし。
「花火は、私の火魔法と、そこの工作員の爆弾ということかしら?」
「爆弾の扱いは工作員ですが、爆弾の製作は錬金術師なんですよね。こちらも誰か製作できる方を探しませんことには」
「ふふふ。
破壊のための創造は是、これすなわち私は見習錬金術師なり。錬金術のスキル上げも着々と進んでるのである」
「ラシャ、はえーよ」
―――おっと、つい素で突込んでしまった。いかんいかん。
錬金の生産職の場合、見習調合者→見習錬金術師→錬金術師 の順にランクアップする。
爆弾自体は見習調合者の頃から作れるけど、花火に使えるようなでかくて派手な爆弾にするために、できるだけスキルレベルを上げて作成して欲しい。
「こほん。とは言え、あくまでラシャのは普通の爆弾ですので。
リアル花火師とか、この世界で花火を作っている方を探して交渉したいというのが希望でございます」
難しいとは思うけど、買いたい商品の取引掲示板とかで募集してみよう。
「いずれにせよ、花火班ははるまき様とラシャに頼むのが適任かと思ってございます」
「……わかったわ。
ええわかったわ、非常に不本意だけど、ライナの頼みなら承ってあげるわ」
ぼくの言葉に、なぜか急に顔をしかめるはるまきさん。
あれ、そんなにラシャが生理的に無理だったとか? だとしたらすっごく申し訳ない。
いや、怪しいし不審者だけど、爆弾魔で工作員だけど、根はいい奴なのですよ?
「ぷい」
よく分からぬまま顔を背けられてしまった。ううむ……
頭を振った拍子にふわりと広がった黒髪に少し目を奪われたのを誤魔化しつつ説明に戻る。
「光る花は、見習農家から農家にランクアップすれば栽培できるようになるそうです。
農家班としてリーリー様とみかん様、お願いできますか?」
「私たちに任せて!」
「はい、頑張ります!」
元気で明るい後輩二人に、栽培を任せる。あ、スキル上げついでの片手間でいいんで、竹と糸もお願いしますね。
「ステージは大工班としてチョリソー。
屋台も統一感を出したいので枠は作ります、来週から協力に来てくださるひげせんにん様&わき様の商人組の意見を聞きながら、大工のお仕事。
あとステージに付随して、敷地両サイドに作る控室関連も大工のお仕事でございます。壁作って見えないようにするだけね。
あ、短冊の記入台として、長いテーブルも6つくらいよろしく。」
「大工多すぎるチョ!?」
「ははは……すまん、ステージだけかと思ってたんだが、意外と多かった。
でもチョリソーならやれると信じてる! ありがとう、友よ!」
「チョわー、チョわー、フレ切りたい」
「錬金なら伐採も多少は適正あったはずだし、工作員って工作得意そうだからきっと木工もいけるよな、ラシャも大工班の手伝いな」
「これが宴会屋のこじつけ力であるか……」
項垂れるリアル友人ズにごめーんと謝りつつも、撤回はしない。
大丈夫、そっちも手伝うから。だから力を貸してくれ。
態度はしぶしぶながら、二人とも大工班を受けてくれたので次に進む。
「次、天の川周り。
川として土を掘り下げて水を流します。
必要になるのは、土系の魔術と、穴を掘る情熱。これははるまき様とラシャ……花火班と同じだな。事前には一度練習しとく程度なので、当日準備としてお願いします。
単純作業なので、二人で大変そうならみんなでスコップ握りましょう」
「任せろ、大工の三倍働いてみせるのである」
「……ふん、仕方ないわね」
得意分野だからかテンションの高いラシャと、先ほど同様にラシャと一緒で嫌そうなはるまきさん。
やべ、この組み合わせはまずかったか? でも頼んじゃったしなぁ、今度こっそり聞いておこう。
「観客席。
座布団には、布と綿が大量に必要で、さらに裁縫が必要でございます。生産職してないとかスキルに空きがある方は、こちらの協力もいただけると助かります」
「あのー、そもそもスキルって、いくつ覚えられるんでしょうか?」
おおっと、そこからでしたか。これは失礼。
では簡単に、スキルの仕組みをご説明いたしましょう。
職業に戦闘職と生産職の2種類があるように、スキルにも戦闘用と生産用の2種類がある。
ゲームを始めたキャラクターは、戦闘3+生産3+共用5のスキルスロット、つまりスキルを覚える枠を持っているのだ。
共用は、戦闘スキルでも生産スキルでもどちらでも入れられる枠。自分が何をメインにしたいか、今から何をするかで入れるものを選べばいい。
戦闘と生産のスロットはそれぞれの職業がランクアップするたびに1ずつ増えるので、今のぼくなら戦闘5+生産5+共用5となる。みかんさんなら戦闘職だけ戦士にランクアップしてるので4+3+5だね。
スキルはこのスキルスロットに覚える形なので、スキルに空きがなければ覚えることはできない。
なお、冒険者の酒場で扱えるシステム機能に『スキル倉庫』というものがあり、覚えたスキルをレベルそのままに預けることが可能だ。
スキル倉庫を使うことで、普段は戦士だが敵によっては『剣』『盾』のスキルを預けて『魔術刃』『火魔術』のスキルをセットするとか、生産する時には共用スロットの戦闘スキルを預けて生産スキルをセットするとか、色々できる。
このスキル倉庫のおかげで、一旦魔術師に転職してスキル上げして特殊職の就職条件を満たしてから剣士に戻るとかがやりやすくなってるのだが、その辺については今すぐには必要のない話、そのうちゆっくり教えてあげよう。
ともあれ、戦闘または生産スキルの最大数は、倉庫抜きで8~10個くらいと思ってくれればいい。
「ふわー、そうだったんですね。
教えてくれてありがとうございます、ライナズィアさん」
「みかん様の生産スキルは昨日覚えた『裁縫』『栽培』『採取』だけかと思いますので、共用スロットが空いていればまだ生産スキルを覚えることは可能でございます」
「分かりました!
使ってないスキルは倉庫に預けておきます」
「倉庫も有限で、最初のうちは預けられる数が少ないわ。使う予定がないとか、スキルレベルが上がってないなら消してしまうのもアリね」
「はい、はるまきさんもありがとうございます!」
「そういうわけで、座布団は大量に必要でございます。
材料である布と綿の調達は、農家班による栽培と、暇な人達でフィールド調達。
布を縫うのは裁縫スキルさえあればレベルは上げてなくても大丈夫かと思いますので、スキルに余裕があれば皆様ご協力下さい」
「農家班もいっぱいです!」
「うん、思ったより多いよね。もう何人か欲しいかなぁ」
「すみません、ぼくも協力しますので、一緒に頑張って下さいね。
あ、でも無理はし過ぎずに、楽しめる範囲でお願いしますよ」
意外とやることが多かった農家班。低レベルでいいので、確かにもう二人くらい欲しいなぁ。
生育待ちの時間があるから、必ずしも拘束時間が長いわけじゃないが。必要量が多いので、出来次第収穫して次を植えて、というサイクルになりそう。
まずはランクの低い布と綿の育成を進めて、農家にランクアップしたら光る花だなぁ……うん、確かに結構忙しい。
竹と糸は片手間でOK。最悪、ぼくがやっとく。
あと、土地はあるから畑ももうちょっと拡張しよう。
「当日は忙しいけれど、準備は少ないから私も
ただ、転職はあまりしたくないので、スキルレベルと
「お、ありがとうはるまき様。流石、頼りになる!」
「可愛い後輩達だし、ね」
ちょっと赤くなりながら向こうを向くはるまきさんに感謝しつつも、農家班の増員計画は考えておこう。
「それから座布団の下には何らか引きたいですが、余裕があれば畳、なければ足りない分は布かゴザで考えております」
「ゴザでござるチョ」
ネタじみた発言とともに、チョリソーがござを取り出し背後の地面に広げた。
ゴザを見たことなかった人たちが、席を立って見に行く。
誰一人、発言には突っ込まない。うん、みんな蛮族使いスキルが磨かれているね!
蛮族が悔しがってテーブルを叩く真似をしているが、それすらみんなスルー……いや、リーリーさんがどうしたのか聞いてるな。なぜ叩いているのか理解せずに。
「ゴザ等を敷けば、地面に直接座布団よりは気分的にだいぶ違うかなーと。
畳をそれなりの量作るとなると、材料を畑で栽培できるか不明だし、高レベル帯での採取だし、
「売ってるのも見たことないんですけど、畳を作るのは大変なんですか?」
「家具職人については、ぼくも全く上げてないのでございますよ。
確か畳は見習家具職人では製作不可能なので、ランク3、つまりランクアップ2回必要でございますね。
ちょっと、半月で片手間でやるには現実的ではないかと」
リーリーさんの質問に、簡単に難易度を説明する。現状、転職しまくりで対応できる範囲にはない。
家具職人の系統は、見習製作者→見習家具職人→家具職人 となる。
一番最初の
完全にゼロから始めるには、ちょっと厳しい。そもそもやることが多すぎて、家具職人だけに注力する余裕はないし。
ちなみに、農家と記者については、単一系統の職業ということで 見習農家→農家 のランクアップ一回で農家になれます。お得だね!
農家の後に育成するものの専門性で分岐するんですけど。園芸農家、みたいに。
「畳については可能なら用意する、という程度で良いと思います。
最悪、川沿いに10枚くらい敷いて、特等席扱いでも良いかと。その程度なら、買って済ませられますしね」
「本心は?」
「川沿い、ステージから川の末端まで両脇に一列ずつ畳を並べたい。
そうすれば座る席がどこか分かりやすいし、最前列として特別感があるし、川との境界もとても分かりやすい」
「必要数は?」
「噴水から川の末端まで、大体25~30メートル。
横長に置いた場合、一列に畳16枚くらい、両側で約32枚。予備入れて35~40枚。
……10枚買うくらいなら、35枚買えってことか」
はるまきさんの確認に答えながら、必要数をメモ。
購入でも、不可能な量ではない、かな?
「今調べたチョ。
畳一枚、本日の取引板の最安値で、3万5000Fだチョ」
「35枚なら、120万以上ね」
「ちなみに最安値での出品は6枚1セットのみだったチョ。
一般的な価格は、大体4~5万だチョ」
「約150万Fといったところでございますか……うへぇ」
思ってたよりずっと高かった!
実際に買う場合、必要量を考えれば安い販売者と交渉して受注依頼だろうけど。それにしたって、予想より大幅にお高い。
現状で畳を作れるのはランク3の家具職人だけ、要求されるスキルレベルも高い。
素材となるイ草も高レベルエリアでないと取れず、まあそんな価格になるのも仕方ないかぁ……
「誰もが必要じゃなくてー、家を持ってる人の嗜好品だからねー。
やっぱり高いよねー」
ホットドッグ何本分だろーなんて不穏な呟きをしつつ、わきさんが言う。その通りですね。
「畳がなくても何とかなるし、お金だけなら金策という手もございます。
現時点では、座布団は欲しい、畳は二の次ということでご認識下さい」
「はーい」
だいぶ話が長くなってしまった。
とりあえず、まだ冷たいレモンスカッシュを飲み、まだ温かいホットドッグを齧る。
んー、いつものよりもずっとトマトの風味が強い。また新作、あるいは試作品か。
「わきさん、今日もやっぱりおいしいです。ありがとうございますね」
「えへへー、ライナ先輩に褒められるとすっごく嬉しいよー。
新メニューとしては、どうかなー?」
「そうですねぇ。
とてもおいしいですが、いつものホットドッグとそこまで代わり映えはしないかと思います。
おそらく大量のトマトを使われてるのでしょうけど、もともとケチャップの味はしておりましたので」
「あー、やっぱりそうだよねぇ。
トマトドッグ、みたいな新商品として売り出すにはちょっとインパクト弱いかなぁって思ってたのー」
「でも私はトマト好きなのでおいしいです。
今度、普通のホットドッグも買いに行きますね!」
わきさんのホットドッグを初めて食べたリーリーさんが喜んでる。
販売促進につながったなら何よりでございます。
……わざわざ顧客を増やさなくても、いつも完売してるんだけどねぇ。
「リー。わきさんの屋台、完売早いわよ」
「そうなんですか? 納得のおいしさです」
「インパクトが欲しいなら、いっそトマトを上にかけてソーセージを覆い隠してしまったら面白いチョ。
真っ赤なホットドッグ(辛くないです)みたいな」
「ソーセージをチョリソーに変えて辛くしたら、本当にレッドドッグになると思うのである」
「ラシャに食われるチョ!?」
2人の意見に、ぶつぶつ呟きながらメモを取るわきさん。
きっと次回の新商品に活かされることでしょう。
「ぼくとしては、おいしい料理をみんなが作ってくれれば大満足です。
一人で何でもやれるわけじゃなく、得意な事は得意な人に任せるのがMMOの基本でございますよ」
わきさんのホットドッグの他に、販売は滅多にしてないが、はるまきさんもレベルの高い調理師だ。
普段なら薬を渡して物々交換したり、焼きエビ+のように現地
「
「ぼくの得意なことでございますか?」
からかうような
みなさんいらっしゃるし、ここは責任者としてびしっと決めますか。
「とりあえず、剣振って戦えます。護衛は任せておけですね、およそいかなる場所であろうと同行いたしますよ。
あとは、こういうやつ」
手にしてぴらぴらと振るのは、今まで色々話していた、七夕祭りの詳細の書かれた紙。
「みんなで騒いで楽しむ。
そういう時間を提供するのが、ぼくの得意分野というやつでございます」
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