異変5
魔王にもらった薬をネクロちゃんにかけて数時間が経過した。 ようやく薬が効き始めたのか、目の周りに浮き出た血管も引いて、今は、おとなしく寝息を立てている。
「よかった。 ずっと、もがき苦しんでいたから、魔王の薬が効かないのかと内心、不安だったんだ」
(おいおい、完璧な私が作った薬だぞ? 不安になる要素は無いだろうが)
「そうは言っても、薬をかけた瞬間から、絶叫して数時間も、その場でのた打ち回っているんだぞ? アレを見て。 あっ薬が効いているんだな……。 なんて思わないだろ、むしろ毒かと思ったぞ」
(ガキを殺すのに毒を作る必要がどこにあるんだよ。 私なら毒なんて回りくどい事なんてしないで、素手でキッチリ殺すわ)
まあ、魔王の性格上そうだろうな。 なんか妙に納得してしまう。
(それよりもだ、魔人化しかけていたとはいえ、ガキは、それなりの力を手にしたみたいだな、案外、今回の魔人化は、ガキを鍛えるという意味では良かったのかもしれん)
「んん? それはどういう意味だ?」
魔王が言った、それなりの力を手にした。 というワードが気になり思わず聞き返す。 すると魔王は、ため息交じりに返事を返した。
(魔眼で、今のガキの魔力を見てみろ。 少し魔力が上がってるだろ、空気で気が付けよ)
「空気で気が付くって何だよ……アナライズ」
魔王に言われたため、とりあえず、呪文を唱えてネクロちゃんの数値を見る。 すると、2560と真っ赤な色で表記されていた。
「んんッ!???」
見たこともない数値に、思わず驚きの声を上げて、瞼をこする。 深呼吸をして、ゆっくり、もう一度ネクロちゃんの数字を見るが、数字は変化していない。 いぜんとして真っ赤な表記でバカげた数字が並んでいる。
「シュヴァリエ、どういうこと? バグった、ような数字が見えるんだけど」
(見間違いではないぞ)
いや、どう考えても見間違いだろ。 こんな短い期間で数値30がどうしたら2560なんて数値に変化するんだよ、明らかにおかしい。
「この能力を手に入れてかなりの魔物を倒してきたが、それでも一番高い数値が300くらいだったぞ? それの8倍弱ってデタラメすぎるだろ」
(何も不思議じゃないだろ? だって魔人化しかけたんだぞ? 一度人間をやめる境地に追い込まれたんだから、それくらいの数値が変化して当然だろ)
「魔力って、そんな感じでも身につくものなのか?」
(魔に近づけば近づくほどに力を増すんだから当然だろ? まあ、普通は魔人化しかけたら戻ってこれないんだけどな)
まあ、確かに、普通あの状態から戻ってこれ無いだろうが。 それでも目を見張るほどの変化である。 しかし、だからこそ1つ疑問に思う。
「でも、おかしくないか? 俺はネクロちゃんの数値が真っ赤に見えるってことは、俺より強いんだよな? でも魔人化しかけたネクロちゃんと対峙したけど普通に戦ったら多分倒せたぞ?」
(魔力が高ければ強いって理屈が通じるのは魔物だけだ、何故なら人間は、魔力を持っていても使いこなせるかは別問題だからだ。 ガキの場合は神の加護が身体能力を向上させているだろ? 武器に魔力を付与する以外の使い方を知らないんだよコイツ)
なるほどと、俺が、魔王の言葉に納得するのとほぼ同時に、寝込んでいた、ネクロちゃんの意識が戻った。
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