レベルアップ6
「中武師匠、遅いですよ、もうこの辺の魔物は倒してしまいましたよ」
ネクロちゃんは、手を振り笑いながら魔物の死骸を踏みつける。 やはり精神的におかしくなっているのか、笑顔だが目だけが笑っていなかった。
「ネクロちゃん、少し休憩しようか。 もうずいぶんと休憩していないから疲れただろ?」
「何言ってるんですか師匠。 今の私、絶好調なんですよ。 魔物どころか今なら魔王にだって勝てそうな気分です」
「いやでも、今のネクロちゃん、は精神的におかしくなってるよ。 しばらく休んだ方がいい」
「ふざけるなッ!! 強くなっている実感があるんだよッ!! 魔物を倒せば倒すほどに体から力が溢れ出る実感がァッ!! ……だから邪魔をしないでいただけますか?」
ネクロちゃんは、頭を掻きむしり眉間にしわを寄せ、叫びながら、激しく感情を爆発させたかと思ったら、急に無表情になり、俺に向けて殺気を放ってきた。 やはり精神的にどうにかしてしまったのだろうか。
(急激に強くなって自分の力に酔ってやがるだけかと思ったが、どうやら、それだけではないようだな、すでに精神的におかしくなってやがる)
「ネクロちゃんの、今の言動で何となくはそんな気がしたが、治るのか」
(知らん。 だが原因は分かる。 数日間寝てないことによる睡眠不足と、魔物と絶え間なく殺し合いをして過ごした精神的負担で正常な判断が出来なくなったんだろう、簡単に言うと一種の混乱状態だ)
「なるほど、じゃあ落ち着きを取り戻すためには寝るのが一番ってことか」
(専門家じゃないから、断定はできんが、多分その通りだ。 だが、こうなった手合いは、寝てくださいと言っても、言葉も通じないから面倒くさいぞ? どうする放っておくか?)
「そういう訳にはいかないだろう、元を言えば俺がネクロちゃんを止めなかったことに原因がある。 なら正常な判断ができるように、休ませてやることも大人としての務めだろう」
「さっきから何をブツブツ言っているんです。 私を止める? 師匠でもそれは無理だ。 そんなことをしたら私は師匠を殺してしまうかもしれない」
剣先を俺に向けて威嚇するようにネクロちゃん、は言葉に出した。
(どうする? ガキはやる気みたいだが?)
「戦うよ。 そして気を失ってもらう。 そうすれば、ネクロちゃんも目覚めたころには、冷静さを取り戻しているだろうからね」
拳を軽く握り構えをとる。 その様子を見てネクロちゃんは口角を吊り上げてニタリと笑った。
「今の私に勝つつもりなんですか? アハハハァッ!? 笑っちゃいますねぇ!! 今の私は最強ですよ!? でも安心してください師匠!! 言葉では、殺すといいましたがァ? 四肢をもぐだけで勘弁してあげます、アナタにはオンがありますからねぇ」
「ありがとう。 でも負けるつもりは無いから安心していいよ」
「あ? やっぱり殺そう。 不快だ。 殺します。 殺すことに決めました」
笑顔が反転するかのように眉間にしわを寄せ、怒りの表情を隠そうとしないネクロちゃんは、一瞬で距離を詰め、斬りかかってきた。
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