レベルアップ4
「おはようございます。 中武師匠」
目を覚ますと、何故だか元気いっぱいになっているネクロちゃんが俺の顔を覗き込んでいた。 どうやら状況的に膝枕をされているらしい。
「ごめん。 少し眠っていたみたいだ。 介抱してくれてありがとう」
「いえ、そんなこと気にしないでください。 それより急に倒れたので、びっくりしましたよ。 やはり連日の疲れがたまっていたんですかね」
倒れた理由は、魔王に献血されたからなのだが、説明が面倒なのでそういうことにしておく。 上体を起こして軽く頭を振る。
(わりぃ。 献血しすぎた)
体をほぐしていると。 全く悪いと思っていないような魔王の謝罪が、頭の中で反響した。
「本当に悪いと思っているのか? もし魔物に襲われていたら死んでいたかもしれないんだが?」
(べつに、雑魚の魔物に寝込みを襲われても、どうってことは無いと思うが、次は気を付けるよ)
魔王の反応は相変わらず軽い。 実際、この辺の魔物を雑魚扱いしている魔王本人だったら大したことは無かったのだろうが、俺は人間だし、寝込みを襲われればやられてしまう。 魔王は、自分を基準に俺に何かをしないでほしい。
「それよりも、大量の血液を奪って何をしたんだ?」
言い争っても、魔王の態度が変わるとは思えなかったので、不満もそこそこに、とりあえず俺に何をしたのかを聞いてみる。
(お前が、強さの指標が分かれば便利だと言っていたから、目玉を改造して魔力量が見えるようにしてやったんだ)
「……俺の体なのに、俺の知らないうちに、どんどん人外になっていってる気がするんだけど」
(魔眼くらいで何言ってんだよ、よくあるだろ)
いや、だから魔王基準で常識を語られても困る。 大体何なんだ魔眼って。 言葉の響きが禍々しいことから副作用とか無いか割と本気で心配になるんだが。
(まあとりあえず、アナライズって言葉に出してみろよ)
「……また、ぶっ倒れたりしないだろうな」
(それは無いから安心しろ、すでに魔眼に変化しきっているから魔法を使う時のように血液は必要ない)
「……アナライズ」
魔王に言われるがまま言葉には出したものの、何か変化が起こったようには感じない。
「何も変化が無いように感じるんだが、不発か?」
(ちゃんと発動してるだろ。 ガキを見てみろよ)
魔王に言われ、ネクロちゃんの方を振り返る。 すると、ネクロちゃんの頭の上に10と青い数字が浮かび上がっていた。
「シュヴァリエ、この数字は?」
(魔力量だ、ゲームみたいに全体的な数値化は難しいが、魔力量だけならばなんとか形にできた。 どうだ? 便利だろう)
「数値だけ視覚化できても、多いのか少ないのか分からないんだが」
(ガキの数字は青いだろ? それは、お前が気絶するギリギリの血液を魔力へと変化させた時よりも少ないときに青く表示されるんだ。 赤色で表示されれば、魔力が多いいから、危険という訳だな)
魔王の説明を聞いて、思ったよりも分かりやすくて驚く。 確かにこれならば危険な魔物を避けつつ強くなることが可能だろう。
「赤い数字の魔物がでたら、注意すればいいんだな」
(その通りだ、というか今のお前が赤色で見えるのはダンジョンマスターだけだろうから見つけたら速攻で逃げろよ。 今のお前ではどうにかできるとは思えない)
「分かった。 注意はしておくよ」
魔王に言葉を返して、俺はネクロちゃんと再び魔物を刈るために、ダンジョンの奥へと歩を進めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます