レベルアップ3

「その言葉は本当なのか?」


(嘘なわけ無いだろ、協力関係であるお前に、嘘ついて何の得がある)


 確かにその通りなのだが、何故この世界の魔王が嘘をつかないとハッキリと言い切れたのだろうか?


「あの……シュヴァリエ様は何と言っていたんですか? やはり、ダンジョンマスターを倒したところで、事態は何も変わらないんでしょうか?」


 俺が魔王と会話をしていると、ネウロちゃんは、不安そうな表情で俺の顔を覗き込む。 急に話を中断して魔王と話したのだから当然か。


「いや、まお……シュヴァリエが言うには、倒したら問題なく、その地域は解放されるらしい」


「本当ですか!? 良かった、少しは希望が持てます」


 俺の発した言葉にホッと胸をなでおろし、安心しきった表情を浮かべる。


(まあ、今のお前らではダンジョンマスターを倒すことなんて不可能に近いから、死にたくなければ、出会う前に早く強くなれよ)


 ネウロちゃんの笑顔に水を差すように、魔王は、ボソリと言葉を漏らした。 いくら聞こえないからとはいえ、少しだけ魔王は言葉を選んで発言してほしい。


「今は無理でも、俺も、この子も成長速度が速いんだから可能性はあるだろ? あとどれぐらい強くなればいいのかは分からないが、焦っても仕方がない。 コツコツやっていくさ」


(確かに、今のペースで強くなっていけば、そのうちダンジョンマスターを倒すことも可能だろう。 だが、この世界は、ゲームと違ってボスエリアがあるわけじゃない、今の状態で出会ってしまったら、それで終わりだ)


 脳内に響く魔王の言葉のトーンが、いつになく真面目である。 本当に、今の俺たちでは手も足も出ないのだろう。 


「……ゲームには詳しくないが。 流石に、言葉のニュアンスで、それが何なのかは何となく理解できる」


(おおッ!? お前も成長したな。 いつもなら、ジェネレーションギャップ的な何かを感じるのに、今回は理解ができたか)


 何故か嬉しそうな声が脳内に響く。 そんなに、話を合わせられなったのが嫌だったのだろうか。


「……シュヴァリエ、話は変わるが、ダンジョンマスターと普通の魔物の違いって何なんだ? 見た目で分かるものなのか?」


(いや、ダンジョンマスターは、戦ってみないと分からん。 だが、普通の魔物より次元が違う強さの魔物だから戦ってみればスグにわかるはずだ)


 魔王の言葉が本当ならば、厄介な存在だな。 外見が違えば、現れた時点で逃走も考えていたのだが、どうやら、その手段は使えないらしい。


「シュヴァリエ、もっと効率的な強くなる方法は無いか、短期間でダンジョンマスターと互角に戦えるくらい強くなる方法とか」


(お前今コツコツと強くなるって自分で言ったばかりだろうが。 残念だが、今、以上に効率的な強くなる方法なんてねぇよ。 大体、戦って倒すだけで強くなれる方法がすでに反則みたいなもんなのに、それ以上を求めるとか、お前もなかなか強欲になったな)


「じゃあ、ダンジョンマスターの強さの指標的な物でも良いんだが、あと、どれくらい強くなればいいんだ?」


(そうだな、確かに指標は必要か。 よし、喜べ龍之介。 ゲームと同じでお前の強さを視覚化できるようにしてやろう)


「はぁ? 魔王何を言って――」


 言葉の途中で凄まじい立ち眩みに襲われる。 恐らく、何かしらの魔術を使ったのだろう。 意識が遠くなり、俺は久しぶりに、気を失った。

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