レベルアップ2


「やぁぁ!!」


 更に数十日の月日が流れた。 この頃になると、もはや、日課となりつつある魔物討伐も慣れたもので、ネウロちゃんは一撃で魔物を撃破できるようになっていた。


「師匠、何かおかしくありませんか?」


「急にどうしたんだい?」


 魔物を仕留めて不思議そうに首を傾げるネウロちゃんは、何やら考え込んでいるようだ。


「だって、初めの頃は1体倒すだけで精一杯だったのに、今では楽に倒せるようになってるんです。 これと言ってトレーニングなんかしているわけではないのに、なんか私、異常に強くなってきてませんか?」


 ついにネクロちゃん、が自分の急成長に対して、疑問を持ったようだ。 だが、疑問を持つのが遅すぎるのではないだろうか。


「今更過ぎない?」


「いや、おかしいとは思っていたんですよ。 ですけど、師匠は何も言わないし、露骨に反応をするわけには、いかないじゃないですか。 もしかして、師匠が補助魔法でも使ってくれているのですか?」


「補助魔法なんて使ってないよ。 シュヴァリエが言うには、ネウロちゃんは魔物を倒せば強くなる特異体質らしい。 だから筋トレとか走り込みより魔物を相手にした方が早く強くなれるんだよ」


「そんな特異体質あります? 聞いたことないですよ?」


「俺だって初めて聞いたよ。 でも、シュヴァリエが言ってるんだから間違いではないだろうし、何より実際ネクロちゃんは、強くなっているじゃないか」


 俺の言葉に対して、ネウロちゃんは、どこか腑に落ちないといった表情を浮かべる。


「気持ちはわかるけど、手早く強くなれるのだから、どうでも良いじゃないか」


「……そうですね。 確かに、どうでもいい事でした。 簡単に力をつけることができるのに、私何を迷っていたんだろう」


 どうでも良いという言葉でネウロちゃんは、吹っ切れたようだ。


「ところで師匠、ついでに、もう1つ質問があるのですが、ダンジョンマスターとは、どのような姿をしているのでしょうか?」


「ダンジョンマスター?」


 なにそれ? と疑問に思ったが、ネウロちゃんが目覚めた日に説明を聞いたような気がする。


「たしか、ダンジョンマスターを倒したら、その周辺の地域からは魔王が手を引くんだっけ? 疑問なんだけど、その条件は本当に守られるのかい?」


 魔王が敵となりうる勇者を、より楽に倒すための方便な気がしてならない。


(お前、少しは疑うことを覚えたんだな。 少しだけ感心したが、今回に限りそれは無いと断言していいぞ)


 急に、魔王が話に割り込んできた。


「シュヴァリエ、どういうことだ?」


(お前ら人間に、理解できるとは思えないから説明は省くが、制約により間違いなくダンジョンマスターを倒したならば魔王は手を引くだろうな)

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