レベルアップ

「ネクロちゃん、そっちに行ったぞ」


「はい、でやああ!!」


 ネクロちゃんを鍛えて早、数日が経過した。 数日とはいえ、流石勇者というべきか、初日にみせた、ぎこちない動きではなく、今では、きちんと魔物を撃退できている。


「しかし、数日でネクロちゃんが、こんなに強くなるとは思っていなかったなぁ」


 数週間かけて、魔物を複数体撃破できるようになれば良いと魔王が言っていたから、もっと成長速度が遅いものと思っていたが……。 予想に反して、彼女の成長は早く、今では一人で複数体の蜘蛛型の魔物を相手にしても傷1つ負わない程に強くなっていた。


(ガキが異常なだけだ。 普通はこんなに早く強くなれない。 おそらく勇者の福音の効果が上がっているんだろうな)


「まお……シュヴァリエ、どういうこと?」


(簡単に言うと、お前と同じで魔物を倒せば倒すだけ強くなるってことだ。 ゲームで言う経験値を稼いでレベルが上がる仕組みと似ているな)


「普通は違うのか?」


(当たり前だろ、いくら魔法が一般的な世界とはいえ、お前のいた世界と根本は変わらない。 強くなりたきゃ走りこんだり、筋トレするのが普通だ)


 そうだったのか、てっきり自分がそうだから、魔物を倒せば倒すほど強くなるものだと思っていたが、違うんだな。 ……などと、魔王の言う言葉に対して、考えている俺は、元の世界より、何でもアリの、この世界の常識に毒されてきたのかもしれない。


「師匠。 このあたり一帯の魔物は倒し終えたので回収をお願いします」


 考えの途中だったが、ネクロちゃんが呼ぶ声が聞こえたので、急いで、駆け寄り魔物を回収する。


「師匠の魔法は凄いですね。 一瞬で魔物の死骸を回収するんですから」


 回収する様子を見てネウロちゃんが尊敬のまなざしを向けてきた。 この子は、出会った当初から、何故か好感が高い。 そんなに尊敬されるような事をした覚えは無いので、少しだけ居心地の悪さを感じながら言葉を返す。


「いや、コレはシュヴァリエの能力だから。 というか、前にも言ったが、俺が強いのではなくシュヴァリエが強いだけだ」


「そのシュヴァリエ様と契約を結んだ師匠も凄いじゃないですか。 伝説の精霊ですよ」


 そういえば、そういう設定だったな。 騙しているようで心苦しいが、精霊ではなく、魔王だと知ったら彼女は、どんな反応を示すのだろうか。


(精霊なんて小物と一緒にされるのはイラつくが、尊敬されるのは気分が良いな)


 一方、魔王は、俺とは逆に、丁重に扱われることに心地よさを感じているようだった。 ……肝の据わった奴である。

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