少女6

「どう…ですか? こんなもので……よろしかったでしょうか」


「お疲れ様、あとは任せて、コレを飲んで休んでいなさい」


 体を引きずりながら、寄ってくる少女に回復薬を取り出して渡すと、少女は回復薬の入った瓶を不思議そうに眺める。


「この瓶は? それに任せるって、魔物は私が倒したはず――」


 言葉の途中で背後から襲い掛かってきた蜘蛛型の魔物に拳を叩き込む。 拳を叩き込まれた魔物は、遠く離れた壁に叩きつけられ動かなくなった。


「――ッ!? まだ、いたの!?」


「この魔物は、単独行動は滅多に取らないんだ、1体相手にしたら複数体潜んでいると考えた方がいい」


 俺が言葉を発すると同時に、こちらが気が付いたことを悟ったのか、魔物たちは次々と姿を現した。 その量の多さを見て、少女は、大きく目を見開き、後ずさりをする。


「こんなに……大量の魔物」


「安心しなさい、あとは俺が片付けます」 


「ですが、これほど大量の魔物を1人で相手にできるわけがありません。 ……私も戦います」


「ありがとう、その気持ちだけで十分だよ。 シュヴァリエ!!」


(もう少しガキの戦いが見たかったが、確かにあの量は無理だな。 仕方がない、それでは、献血と行きましょうかね)


 魔王が、血液を使って身体を強化する。 俺は、軽く息を吐き、目の前にいる大量の魔物たちを睨みつけた。


「さて、狩りの始まりだ」


 明確な敵意を感じ取ったのか、魔物が一斉に動き出す。


「はぁぁッッ!!」


 様々な方向から飛び掛かってくる魔物に拳を叩き込む。 吹き飛ばされた魔物は、そのまま空中で分解されてバラバラになったが、周囲にいた魔物は怯む様子も、速度を落とすこともなく雪崩のように押し寄せてくる。


(この速度じゃ対応できないな、更に血液をもらうぞ)


「了解」


 更に速度が上がり雪崩のごとく押し寄せる魔物をギリギリで捌くが、少女を背にした状態では、流石に継続して対応しきれる自信が無い。


「シュヴァリエ、少女を守る魔法はあるか? この量を守りながらでは流石にキツイ」


(第三者が対象だから私が魔法を発動することはできないな。 回路は繋いでやるから、守る対象を思い描き、シールドと叫べ。 だが、血液を一度、魔力に変えての発動だから血液の量が少し多いいぞ)


「構わない、やってくれ。 シールドッッ!!」


 叫んだ瞬間、少女を巨大なシャボン玉の様なものが彼女を覆った。


(シールドは、制限時間がある絶対守護の魔法だ。 時間はせいぜい30秒だから、さっさと片付けろ)


「絶対守護ということは、俺が魔法を使っても無傷なのか?」


(その通りだ、派手なの使っても良いぜ)


「了解だ。 ライトニング!!」


 周囲を光が包み込むと周りにいた魔物が消し飛ぶ。


「連発するぞ、ライトニング!! ライトニング!!」


 更に2回連続でライトニングを放つ。 すると、血液を大量に使ったせいか。ものすごい眩暈がした。 一瞬、焦ったが、今の魔法で周囲の魔物の気配は完全になくなった。


「短期間で、守りながら戦うのって、こんなに…しんどいんだな」


 大粒の汗を拭いながら、その場に座り込んで呼吸を整える。 するとシールドの魔法が丁度効果が切れたのか、少女はこちらへ駆け寄ってきた。

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