少女3
「や……やあ、こんにちは」
もっと気の利いた言葉があっただろうに、少女に向けて発した一言目があいさつとは、人と話すってこんなに難しかったか?
「お兄さんは、誰?」
「ああ、俺? 俺は……ちょっと待ってお兄さん? ひょっとしてお兄さんって俺の事?」
自分に向けて指をさすと、少女はコクリと頷いた。
「魔王、ひょっとしてなんだが、今の俺の姿って、若返ってるのか?」
(何を今更、腕にシワが無い時点で気が付けよ、結構な時間が経ってるんだぞ?)
「いや、まあ確かに気が付かない俺も悪いけどさ」
(今のお前は20代前半ぐらいだ。 人間なら一番身体能力が高い年齢に設定しておいた。 感謝しろよ)
「いや、蘇らせてくれたことで既に感謝はしてるけどさ」
「さっきから、何を独り言を言っているんですか?」
その声で思わずハッとなる。 俺は今まで1人だったため、普通に魔王と話していたが、傍から見たら今の俺は、独り言をブツブツと言っている危険人物に見えるのではないだろうか? ……そうにしか見えない気がしてきた。
なんと少女に言い訳しようと考えていると、何か納得したのか、少女は表情を輝かせる。
「ひょっとして、お兄さん精霊使い何ですか?」
言葉の意味は分からないが、どうやら、精霊使いとやらと勘違いをされてしまったようだ。 しかし精霊使いとは何だろうか? 独り言をブツブツと言っているヤバい奴でも許容できるくらいの職種なのか?
「魔王、精霊使いって何?」
(精霊使いっていうのは、魔力ではなく精霊を通して魔術を使う術者の事だ。 精霊は普通の人には見えないから、お前が私に話しかけていた姿が、精霊に話しかけているようにガキには見えたんだろ)
なるほど、そういったものなのか。 魔王と話すのはこの先も必要な事だし、せっかく勘違いをしてくれているんだ、ここは精霊使いということにしておこう。
「よく俺が精霊使いって分かったね」
そう俺が答えたら、少女はキャーと黄色い歓声を上げながらテンションが振り切れた。
「やっぱりですか? うわぁ。 私、初めて精霊使いに会いました。 握手してもらってもいいですか」
「構わないけど、何でそんなにテンション高いの?」
「だって精霊使いって女子なら一度は憧れるじゃないですか。 それが目の前にいるんですよ。 興奮しない方がおかしいですって」
そ、そうなのか? 意外と女子力が高い職種なのか? 日本で言うパティシエみたいなものだろうか?
「精霊のお名前は何ですか?」
「名前? 名前ね……」
(シュヴァリエだ)
「精霊の名前はシュヴァリエ」
「えぇッ!? シュヴァリエって騎士物語にも出てくる伝説級の大精霊ですか!?」
魔王ーーー!! 何言わせてくれてんだッ!? なんかメチャメチャ凄そうな精霊なんですけど!? 少女の俺を見る目も、なんか尊敬とかそういう類の目になってるんだけど!? これ大丈夫なのか?
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