少女2
初めてこの世界の人間と出会って数日は経ったが、未だ少女は目覚めない。
「なあ、この子は大丈夫だろうか」
一向に目覚める気配がないため、不安になりながら魔王に尋ねる。
(私の作った回復薬を飲んだから大丈夫に決まってんだろ)
魔王は自信満々に言葉を返してきたが、これが逆に不安の要素でもある。
なんといっても、この薬は、魔王がその辺に生えている、よくわからない草やキノコで作ったものだ。
自分が、いきなり薬だからと言われて渡されても躊躇するだろうし、ましてや人に飲ませるなど普通の状況ならば絶対にしないだろう。
言葉には出さないがそのような事を思っていると、魔王が言葉を続けた。
(体の傷は塞がったし、血色も良くなってきてる、兆候としては良いだろ? むしろ何が不満なんだ)
「もう、目を覚まさないまま、もう数日だぞ? 不安にもなるさ」
(目覚めないのはいわゆる回復疲れからだ、ガキなんだから、その辺は仕方がないだろう?)
「何だそれ?」
(瞬時に、体を正常な状態に戻す薬だぞ、負担が結構かかるんだよ。 だから慣れないと、このガキみたいにしばらく寝たきりになる)
それは結局、薬なのだろうか? しかし、魔王が言うように確かに傷も塞がり、血色も出会った当初と比べると良くなっているため、確かに薬の効果は本物なのだろう。
「確かにそうだな、疑って悪かった。 目覚める気配がないから少し過敏になっていたみたいだ」
(疑ってたのかよ)
「だって、その辺に生えている草とかテキトーなもので作ったんだろ? そんなものを出されて薬ですと言われても信じられないだろ」
(ゲームだって拾った物をそのまま再利用しているだろ? お前の感性がおかしいんだよ)
「ゲームと現実をごっちゃにするなよ。 これに関しては断言するが、おかしいのは魔王の方だぞ?」
(そんなことないと思うんだがな、まあ。 私基準と人間基準では常識のズレがあるのが普通なのかもしれん)
その言葉については、すんなりと同意ができた。 同じ人間でさえ国が違えば考え方や認識にズレがあるのだ。 魔王と人間ならばなおさらなのだろう。 そんな話をしていると、少女の体が一瞬動いた気がした。
「……魔王、今この子動かなかったか?」
(もう数日も寝てるんだぞ? いつ目覚めてもおかしくは無いだろ)
「えっ、ちょっと待ってくれ、なんて話せばいいんだ? 人と面と向かって話すのは久しぶりだからテンパってきたんだけど」
(まだ、目覚めると決まったわけじゃないだろ? とりあえず落ち着くためにガキを視界に入れないで、素数を数えながら深呼吸でもしてろ)
少女から背を向けて、魔王の言う通り素数を数えながら深呼吸をする。
「……ん」
未だに落ち着きを取り戻してはいなかったが、声が聞こえたために振り替える。 すると、上半身を起こした少女が目覚めてこちらを見ていたため、俺は更にテンパった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます