洞窟8

「…都合がよすぎないか? 話をしたばかりだぞ」


 あまりにも複線の回収が早いため、レア物の会話の下り自体が嘘なんじゃないだろうかと魔王を疑う。


(都合がいいならそれで良いじゃねぇか。 今から武器を作ってやるよ、ちょっと待ってろ)


 そう言われて待つこと数分、魔王から転送で送られてきた武器は細かい装飾が施されていて素人目に見ても業物と分かる代物であった。 こんな短期間で完成するのかと驚くと同時にその武器を見て思った事を魔王に伝える。


「なんかこの武器グローブ型なんだけど」


「手に装着して直接ぶん殴るタイプの武器だな。 使い方は今、説明した通りだ」


「ちょっと待ってくれ、魔物の体液とか浴びるのが嫌で、武器の話になっただろ。 何で殴るタイプの武器なんだ? めちゃめちゃ今と変わらないんだが」


(全然違うぞ、とりあえず装着してみろ。 使い方を教えてやる)


 使い方も何も、装着して殴るだけなのだから、教わる事は何もないと思うのだが、とりあえず魔王に言われるがままグローブを装着する。 すると途端に力が湧き出てくるような錯覚を覚える。


「不思議だな、グローブをはめただけなのに、何か、力が湧いてくる気がする」


(気がするではなく実際に身体能力は向上している。 魔力の通った武器とは、そういうものだ。 そのうち慣れるさ、それより血液を魔力に変えてやるから、魔力を流して思いっきり右ストレートを打ってみろよ)


 そう言って魔王は俺の血液を魔力に変えた。 久しぶりに強烈な立ち眩みを覚えたが、いったい、どれほどの血液を魔力に変えたんだろうか。 明らかに魔物と戦うよりも魔力量が多い。


 倒れたい衝動を抑えながら、魔王に言われるままに、空中に向かってパンチを繰り出す。 瞬間、装着したグローブが光ったと認識したら遠くにあった岩が砕けた。


「えっと、コレは?」


(空間を捻じ曲げたんだよ、遠い場所からもコレで攻撃ができる、返り血を浴びないで済むだろ……ってどうした? 顔色が悪いぞ)


「血液が足らないんだよ、遠距離の攻撃ができるのは便利だが、一回の戦闘に使う血液の量をはるかに超えてるだろ。 明らかに実践向きじゃないぞ」


(そうか? 結構便利なんだがな。 まあ、機会があればそのうち改良してやるよ)


「ああ、たのむ。 それと、ちょっとぶっ倒れるから、周囲の警戒を頼んでいいか」


(仕方ねぇな。 ちょっとだけだぞ)


 魔王の言葉を聞くと同時に、その場に倒れ込み俺は久しぶりに意識を失った。

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