洞窟3
「え…? 倒せたのか? 一撃で?」
あまりにも、あっけなく倒せたため驚く。
(まあアイツは子供みたいだし、こんなもんだろ? むしろあの程度に、てこずっていたら魔王なんて絶対に倒せないぞ。 それよりチュートリアルはまだ終わってねぇ、蜘蛛の死骸に手を当ててみろ)
「何故だ? 死んだとはいえ、あんな不気味な化物に近づきたくはないんだが」
(いいからやれって、このままだと説明が進まないだろうが)
魔王に催促されたために渋々魔物に近づいて右手を当てる。 すると先ほどまで目の前にあった巨大な蜘蛛の死骸が一瞬で消えた。
「えっ!? 何かしたのか? 急に蜘蛛が消えたんだが?」
(空間転位で魔物の死骸を転送させたんだよ。 素材の剥ぎ取りや解体などは素人のお前に任せても時間の無駄だからな。 便利な能力だぞ、手ぶらでどこでも引き出し取り出しし放題。 しかも貯蔵量は魔王である私の魔力と比例するから、ほぼ無限というオマケつきだ)
「手品師になれるな。 俺が悪い奴なら犯罪なんかにも使えそうだ。 コレは一般的な魔法なのか?」
(そんな訳ねぇだろ。 私オリジナルの魔法だ。 加えて言うと、私がこの世界で干渉できる数少ない魔法であって、お前の血液を媒介にしなくていい)
代償が無いのはありがたい。 物を出し入れするたびに血液を抜かれては本当にすぐに貧血になり倒れてしまうだろうからな。
(そんな訳だ、魔物を狩ったらどんどん転送しろ。 魔物の死骸は武器に加工したり薬になったり魔素を抜けば非常食にもなる。 貯蔵しておいて損は無いぞ)
非常食…? もしかしてあの蜘蛛を食うのだろうか? ゲテモノってレベルじゃない気がするのだが、もしかして、この世界では一般的なのか?
「一応確認するが、食糧って本気なのか? 今仕留めた魔物は、どう見ても食べれるような外見はしていなかったんだけど」
(加工してしまえば食えないことは無い、お前は外見にとらわれすぎだ。 今の魔物だって結構旨いんだぞ)
旨いというのは絶対に嘘だと思うが、よくよく考えてみればこの世界は魔王が支配して食糧も不足しているハズだ、飢えがしのげれば助かる人たちもきっといるはずと考えを改める。
「見た目には抵抗があるが、食べれるなら手始めに、この辺の魔物を狩りつくしてしまうか」
(おお? 意外だな俺はお前は争いごとは嫌いだと思っていたぞ)
独り言のつもりだったのだが、魔王が反応する。 そんなに俺が魔物を進んで退治することが意外だったのだろうか?
「この世界では人々は魔物に苦しめられているんだろ、なら仕方のないことだ。 それに食糧難の地域もあるはずだから非常食としてある程度は蓄えておきたいっていうのもあるな」
(なるほど、意外とちゃんと考えているんだな。 じゃあ丁度良かった)
「どういう意味だ?」
魔王の発した言葉の意味が理解できなくて思わず首をひねるが、すぐにその意味を理解する。 気配というのだろうか、感覚的に先ほど仕留めた蜘蛛と同じ魔物が大量にこちらに向かってきているのを感じ取った。
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