洞窟2
目を凝らすと物陰から不気味な赤色に光る眼玉がこちらの様子を窺っていた。 外見は蜘蛛そのものなのだが俺の知っている蜘蛛とはデカさが違う。 かなり距離が離れているので断定はできないが、恐らく軽自動車くらいのサイズはある。
「どうすればいい? もう第二の人生が終わった未来しか俺には見えないんだが」
(おいおい、仮にも魔王である私が作り出した体だぞ? あの程度の魔物にに負けるかよ。 チュートリアルの続きと行こうぜ)
「また血液がいるんだろ?」
(もちろんだ。 人型で作ったため、お前の体は人間の限界を超えていない。 そのまま戦ったら5秒でミンチだ。 そんな訳で、とりあえず献血だな。 身体能力を向上させるぞ)
魔王が言葉を言い終えると同時に、本日二度目の立ち眩みが俺を襲う。
(終わったぞ、コレで簡単には死ななくなったな)
「自分では実感が無いんだが」
(疑ってるんならとりあえず、あの蜘蛛の攻撃を無抵抗に受けてみろよ。 一撃では死なないから)
「一撃では死なない……楽に勝てる表現ではないな」
(当たり前だ、先ほども言ったように、お前の身体能力は未だ人間の域を出ていない。 魔法を使ってようやく戦いになるくらいに思ってろ)
「チュートリアルで苦戦するほどの敵が出てくるとは、つくづく自分の運の無さを嘆くよ」
(まあセコンドは私というある種のチートだから負けやしないって。 とりあえず走って間合いを詰めて殴ってみろよ)
「なんてアバウトなセコンドの助言。 涙が出そうだ」
(言ってろ…来るぞ!!)
蜘蛛は雄たけびを上げると、かなり距離がひらいていたにも関わらず一瞬で距離を詰め長い手を突き出してきた。 魔王が事前に注意を促してくれたためこの攻撃を後方へ跳んで回避するが、魔王の身体強化は予想以上に凄いようで軽く後ろに跳んだつもりだったのだが、数メートルも跳躍していた。
(良く回避できたな。 格闘技でもやってたのか?)
「回避できたのは学生だった頃イジメを受けていた下級生を不良グループから守ってた時期があったせいだろうな。 それ以外に格闘経験は無い。 ちなみに不良グループも更生させることが出来て教師には感謝されたよ」
(なに、その青春ドラマみたいな展開)
「悪いけど話はあとにしてくれ。 余裕をかましていたら本当に死んでしまう」
(あ、わりぃ)
とりあえずは、避けられたため回避できない速度ではない事は分かった。 では攻撃はどうだろうか? 鋭い攻撃を回避しつつ蜘蛛の懐に潜り込む。
「とりあえず思いっきり殴る!!」
蜘蛛の巨大な胴体をアッパーカット気味に殴りつける。 すると蜘蛛は、無抵抗に吹き飛び地面を3回ほど跳ねて転がり動かなくなった。
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