2019.05.19 希望

 ここ最近、自由な時間が有り余っていたので、普段読まない海外の有名な小説を読んだり、それに飽きて寂しい夜などは、碌に書いたこともない小説を、ドーナツを食べながらコーヒーを飲むような気持ちで書いてみたりした。それは、同じカクヨムに載せている「絶望ギター」というタイトルの小説で、一応ジャンルとしては、ライトノベルで青春バンド、というものを意識して書いている。

 書いてカクヨムに上げるたび、面白い物が出来たと興奮しながら、その後も閲覧数を逐一調べ、暇があれば何度も読み直して悦に浸るという生活を2週間ぐらい送っていたのだが、今日突然、自分の作品が糞に見えてきた。きっかけをあげるとしたら、今読んでいるGガルシア・マルケスの「百年の孤独」の影響だろう。

 色々な作家が影響を受けたと公言する作品で、その存在はずっと知っていたが、小難しい本なのだろう?と思い、ずっと避けていた。けれど5日前に読んだウィリアム・バロウズの「裸のランチ」を読んで、これまでに経験したことのない小説のおもしろさを知った私は、さらなる文学の深みに分け入りたいと思い、その時まっさきに頭に浮かんだ「百年の孤独」を読もうと決めた。そして、いざ読み始めてみれば、自分が持っていたのは偏見であると気づかされた。これが、めちゃくちゃ面白いのだ。身構えていたので、拍子抜けするように、私はわくわくしながら今これを読み進めている。

 ある一族のお話で、3人称による語りで進むこの小説は、時系列にそって一族の者たちが歩む人生にそれぞれフォーカスを当て、一族が歩む苦難を描いている。一人の男が仲間たちと村を興すとこから歴史が始まり、子供が産まれ、その子供がまた子供を産んで、と物語は続いていく。男や妻、子供たちは村で流行る奇病や、戦争、恋、文化、受け継がれる血に悩まされながらも、その村で生を受け、人生を終える。この一族の人間は、ラテンアメリカの人間らしい陽気さや、大胆さを持ちながらも、戦争や恋愛、最愛の者の死、家族間の軋轢などで深い孤独を背負わねばならない宿命にあった。それをテンポ良く、想像できないようなアイディアで彩られたこの小説は、読んでいてずっと面白い。退屈なところがないのだ。

 まだ、読み切ってはいないが、私の中にあった小説のハードルは、これを読む前と比べて、ものすごく上がったように思える。それほどまでに魅力的で、小説ってこんなに面白いんだと思い直した。こうして小説の見方が変わった今、自分の書いている小説を読みなおしてみると、必然的に色あせてしまう。こんなもの書いたって、無駄じゃないかと思えてくる。だから今は、ものすごい発見が出来たと喜ぶのも束の間、落ち込んでいる。小説を書きたい、というモチベーションがかなり下がってしまった。また書けるといいのだが。



 話は変わる。今日は久しぶりのアルバイトで、したくもない労働をしてきたが、帰り道、ふと自分のこれからの人生を思った。このまま、アルバイトして人生に悲観しながら生きるのかな、と。これはいつものことで、精神的にも肉体的にも疲弊した時、私が思うことだ。予定調和と言ってよい。

 けれど、今回は違った。人生は自分の手で、望むように変えられるのではないか、と。プラスでそう思った。

 今の私の生活は、状況に流されるまま、希望を持たずに生きている。生きいても楽しくない、けれど、死にたくはない。こんなスタンスで日々を送っているにすぎない。そのためにしたくもない労働をして、休日は何も考えたくないから、ネットをしたり本を読む。これの繰り返しだ。でもこれは、世間や固定観念に縛られ、それらの言いなりになっているからではないだろうか?まわりの意見なんぞに振り回されず、自分を見つめ直し、自分のことだけを考えて、納得の行く道を見つけてつき進めば、充実した生活を送れるはずだ。まわりに言われてそれに従っているから、しんどいし、嫌になるのだと思う。少し勇気を出せば、変われる力が僕にはあるはずなんだ。小説の主人公達を見ていると、そう思えてくる。彼らは、どんなに孤独でも、自分の信じるものを見つけ、困難を打破し、満足がいく結果を手に入れるじゃないか。あんなのフィクションだからと笑うんじゃないぞ、私。嫌な事をがんばることが大切じゃないんだ。それが、自分で選んだことであるかどうか。それが大切なんだ。こうポジティブに思えたのも、小説を読んできたおかげかな、と少し報われた気分。

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