2019.05.10 連休後の憂鬱

 皆さんはGWをどう過ごしましたでしょうか?

 私は働いておりました。サービス業でしたので、お休みはありませんでした。

 けれど、世のGWが終わりを告げ、私の職場に平穏が戻った時、私はまとまった休みを頂きました。月の労働時間が決められており、それが短いせいか、GW期間がんばって出勤した私には、次のシフトが決まるまで、働ける時間は残されていなかったのです。不本意な連休と相成りましたが、GWはがんばったと胸を張れた私は、自分へのご褒美としてこれを享受しようと決めました。皆さんは連休前夜、あれをするぞ、これもしたい、と胸を膨らませながら床に就いたと思われます。私もそうでした。なんでもできるような全能感に包まれながら、その夜は目を閉じました。

 朝、鳥のさえずりや子供達が外で元気に遊ぶ声を聞き、朝日を浴びながら起床しました。ものすごく気持ちの良い朝で、アップテンポなアニソンを聞きながら、トーストを焼き、スクランブルエッグを作り、ウインナーをボイルしました。できあがった料理を皿に並べ、牛乳をコップに注ぎ、キツネ色のトーストにバターを塗りました。窓を開け、気持ちの良い風を浴びながらの朝食は、それだけで今日一日分の幸せを勝ち取れたかのように、充実したものでした。食器を洗い、洗濯物を干し、身支度を整えた私は、太陽が町を温めた頃会いに家を出ました。散歩をする婦人や、自転車でわいわい楽しそうに走り去る子供達、家族ずれで車に乗り込んでいるのを見ながら、私は近所の図書館に行きました。連休中はたくさん読書をするぞ、と決めていたのです。

 図書館は出来て4,5年ぐらいで、建物はかなり綺麗です。図書館を利用するみなさんは、図書館の独特な静寂を守ろうとしていますので、人ごみが苦手な私でもお家にいるようにリラックスして本に集中できました。この図書館の近くは大きな建物がなく、前には大きなグランドがあります。大きな窓が並ぶ読書スペースには、外の明かりが目一杯入りこみ、少し開けた窓からは、日に浴びてすこし熱を持ってしまう身体に、心地よく風が通り抜けます。

 私は、空いていたソファーに腰掛け本を開きました。ドストエーフスキイの虐げられた人々です。高校生の頃、罪と罰を途中で挫折してしまってから、ドストエーフスキイに苦手意識を持っていた私でしたが、ついこの間、なんとかそれを読み終えることが出来たのです。理解が追いつかず、眉をしかめる部分が多々ありましたが、分からないところは深く考えず、サスペンス物として読み進めました。どんなかたちであれ、読了出来た私は自信をつけ、ある日、古本屋で、上下2冊で100円の、恐ろしく日焼けしたぼろぼろの、ドストエーフスキイの本を購入しました。それが虐げられた人々でした。嗅ぐと古本独特の、安心できる匂いがします。

 身構えて読み始めた私でしたが、この作品はものすごく通俗的で、宗教だったり神様だったり、本当の悪とはなにか、みたいな難しい哲学など一つも出ません。登場人物たち全員に共感できるのです。なかでも、孤児ネリーの境遇に胸を締め付けられながら、この一大ロマンを読み進めました。主人公の家を飛び出し、物乞いをするネリーを見つけた主人公のシーンが印象的でした。

 ふと、読書を中断し、ペットボトルの紅茶に口をつけます。そのままソファーに身を沈め、窓の外を見れば、グランドで少年野球チームが練習をしています。少年達が張り上げる声と、バットが鳴らす打撃音が、遠くから空気を揺らして私の耳にはいってきます。それ以外は、図書館の職員が棚を整理する音や、近くでページをめくる音が聞こえるぐらいでした。読書によって揺さぶられ、高まった感情が沈められていくます。ふと、生きるのって素晴らしいなと思いました。たぶん、こういう感動があるから、私は生きていけるのだなあと重ねて思いました。その日は閉館時間まで、本を読めました。

 連休二日目は車をもつ友人と、海が見える町に行きました。車で50分ぐらいかかりました。着くと、見晴らしが良く、海とぽつんぽつんと浮かぶ島が一望できて、普段嗅ぎなれない磯の香りを胸いっぱいに吸い込みました。友人はヘビースモーカーです。タバコが好きで、車に寄りかかり一服しておりました。私もタバコを貰い、冷たく心地よい風に当たりながら吸いました。ひさしぶりに吸うタバコはうまかったです。温かいし、することもないから、面白半分で海に飛び込むか、と友人が提案しました。しかし、近付くと、綺麗だと思っていた海は、緑色の何かが一面浮かんで、濁り、暗くて汚かったのです。匂いもくさく感じて、飛び込む気が失せてしまいました。結局、ちかくの食堂で昼飯を食べて、そのまま帰りました。そこのカニクリームコロッケがすごくおいしかったのが収穫でした。帰りながら、私達はなにしに海にいったのだろうと、お互い、けらけらと笑い合いました。

 こういう日々を、連休中はずっと送りたかったのですが、そうはいかなかったのです。意思の弱い人間というのは、休みまでも無為にしてしまうのです。連休3日目からは読書に飽きて、つい夜中にパソコンを起動。夜中に動画サイトを巡回したり、マスをかいたりと9時間もディスプレイの前で過ごし、気付けば快活な朝も過ぎて、昼前となっている始末であります。そして半ば気絶するように寝れば、日も沈んだ夜更けとなっているのです。昼夜逆転の出来上がりでございます。こういう事態になった場合、私は無気力となり、なんにも手につかなくなるのです。あとは家に籠るだけの日々が過ぎて、現在連休6日目にして最終日の深夜を迎えたわけであります。明日は朝早くからバイトがあるというのに、全然、ちっともね、眠くね、ないのです。そうして、不甲斐無い連休を清算するがごとく、こうして日記に書き連ねておる次第です。連休後の憂鬱を乗り越えた皆さん、私に元気をわけてください。

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