第3話 泣いた青鬼 Part8
〈2122年 5月7日 10:11AM 第一次星片争奪戦終了まで残り約14時間〉
―グラウ―
ソノミに刀を振り下ろそうとしていた男――色は違うが既視感を覚えた。鬼の兜、握る刀……まさかとは思うが――
「大丈夫か、ソノミ?」
「グラウ………」
急ぎソノミの元へと駆け寄って……彼女の腹部から滔々と血が溢れだしている。状況から判断するに、あの男の刀で貫かれたに違いないな。
この傷を放置しておけば、下手すれば出血多量で死に至る。何か止血に役立ちそうなものは――仕方ないな。
――びりびりっっ!
「……なんのつもりだ?」
コートの裾を引き裂いて…華奢なソノミの腹部を一周するなら、このくらいの布面積があれば十分か。
「お腹を出してくれ。このくらいの処置しか出来ないが、しないよりはましだろう」
「……そうじゃ…ない」
男にお腹を見せるのが恥ずかしい――というわけではなさそうだな。
いつもは凜としているソノミが、今にも泣き出しそうな表情をしている……俺はなんて声をかければ良いのだろうか。残念ながらその答えに辿り着けるほど、俺は優しい男ではない。
「言いたいことがあるなら後にしてくれ。ほら、早く見せろ」
ようやくソノミも観念したのか、黒の上衣をたくし上げて――細いくびれ…覗かせた脇腹には、生々しい傷がくっきりと見えた。
どくどくどく。まるで泉のようにそこから鮮血が湧き出す。これほどまでの傷を負ってもなお意識を保っていられるなんて、流石俺たちのソノミだ。
「少し痛くなるが、我慢しろよ」
「あぁ……ぐぅっ…!」
ソノミの痛々しい声に、布を巻き付ける腕の力が弱まってしまうが、ぎっちりと締めなければ止血もされない……よし。このくらいで良いだろうか。
「よく堪えたな。偉いぞ、ソノミ」
「…………っ!」
急にソノミに胸ぐらを掴まれて――少し子供扱いしすぎたか?
「グラウ……どうしてこんなところまで来たんだよっ!私はお前たちに、許されないことをした。憎まれ、嫌われ、呪われるならわかる。それなのに……どうして私を助けたっ?!!」
“どうして”、か……。むしろこちらの方が、“どうして”そんな疑問を投げかけられているのかわからない。
当然のことだろうに。
「ソノミは、俺たちにとって…俺にとって大切な仲間だから……家族も同然の存在だから。ただそれだけだ」
ソノミの青い瞳が丸くなって……俺、変なことを言っただろうか?
「お前は……なんだ、この私に惚れているのか?」
妙にしおらしく、らしくもないことを言い出したなこの少女。いったいどうしたんだ?
「もちろんソノミを可愛いとは思う。きりっとした瞳、艶やかな濡れ羽色の髪。おしとやかさまで兼ね備えていたら完璧だったかもしれない。俺がソノミに惚れているか、ねぇ……どうだろうな。ただ、もしそうだったとして……それを照れもせず言えるほどの度胸は、俺にはない」
「はぐらかしやがって…結局どっちなんだよ……」
何かソノミがぼそりと呟いたが、気にはしない。今はそんなことよりも――あの男を最優先でどうにかしなければならない。
「ソノミ……あの男は知り合いなのか?」
「……知り合いなんてものじゃない。私の…兄様だ」
なるほど――豁然としたかもしれない。ソノミがここまで来た理由は、きっとあの兄に会うためだったのだろう。それがどうしてこんな状況になっているのかは、依然として不明なままなのだが。
乱れた息遣い、狂ったように身動きを続け、手当たり次第に物を破壊する。あれは破壊者……いや、それこそ鬼というべきか。
鬼。日本の妖怪の一つで、人畜に危害を与えると恐れられてきた存在。鬼に金棒なんて言葉が日本にはあるが、この男の場合――まぁ、ソノミもそうなのだが――刀を握っていることで、その危険度は桁違いに上がっているように思われる。
「
俺が見てきた限り、ソノミは
「いいや、あれは
ソノミが背後の街灯をちらと見て叫んだ。なるほど、そのピオンという女がつい先ほどまではいたというわけか。うむ…事態はなかなか複雑なようだ。
さて……どうしたものかな。あれではもはや人間とは呼べない。今のソノミの兄には理性が存在していないように見える。何らかの外的要因……薬物などの投与がなければ、人があそこまで暴走することはないだろう。
俺がするべきことは……そうだな。心が痛むが――仕方あるまい。
「ソノミ、これから残酷なことを言う。覚悟はいいか?」
「なんだ、改まって」
「あの男を放置することは出来ない。あの状態でソノミ兄を放置――」
「流魂兄様だ」
「…ルコンを放置すれば、彼は甚大な被害をもたらす災厄になるだろう。言っていることはわかるな?この近くに毘沙門の本陣がある。もしもこの状態のルコンがそこに乗り込めば――」
「無駄に多くの命が失われるな」
「そうだ。まぁ、俺たちの敵である連中の数が減る分には歓迎だが、しかし流石の俺もそこまでの外道にはなれない」
ベンチを一撃で粉砕し、振り下ろした一刀で地面に大穴を開け、薙ぎ払いで木々をへし折る。狂戦士という言葉も今の彼にはぴったりだ。
あれは多分……非異能力者の手には負えない。異能力者であったとしても――上手くやらねば、束でかかっても蹴散らされるだろうな。
「それでグラウ……お前、いったいどうするつもりなんだ?」
あんなにもイカレてしまった原因がわかれば、そこから遡って解決策を導き出せるかもしれなかったが……しかし現実として原因究明には至っていない。
あの暴走した人間を落ち着かせる確実な方法。俺はそれを――一つしか思い浮かばない。
けれどそれをソノミに告げることは抵抗がある。あの人はいくら暴走しているとはいえ――ソノミの兄であることには変わりないのだから。
「……眠りについてもらう。それが確実だ」
「っ………!?」
何重もオブラートに包んで発言したつもりだが、ソノミには核心が伝わってしまうよな。
要は――自分の兄を殺すと言われているのだから。
思い詰めた表情をするソノミ。それから少しして彼女は――自分の頬をパシッと叩き、何やら覚悟を決めたような表情で腹部を押さえながら立ち上がった。
「…グラウ、それならば――」
「なんだ?」
「私がやる。私が――兄様を討つ!兄様の妹としてっ!!」
とても堅い決意がそのサファイアの瞳には宿っているのが見て取れる。それは今までソノミが見せたことない程の、強い覚悟の結晶。
しかし同時に気が付いてしまった――彼女の肩が微かに震えていることに。それは痛みから?いや、それだけじゃないだろうな。その理由は……俺だって痛いほどよくわかる。
「その傷でまともにやりあえるとでも?手負いの仲間を戦わせるほど、俺は鬼畜野郎じゃない。それにな――」
「この程度の傷、問題ないっ!これくらい屁でも――うっ!」
まったくいわんこっちゃない。ついやれやれと首を横に振ってしまう。
それは軽い怪我ではない。致命傷とまでは至ってないが、もう少し傷が広がればそうも言ってはいられない。本当に無理をする……頑張り屋のソノミらしいと言えば、そうなのだが。
それにも関わらず今にも飛び出していきそうなソノミを半ば強引に落ち着かせ、俺はルコンの方へと歩み出た。今は俺たちへと“破壊”という名の衝動が向けられていないようだが、いつ対象が切り替わるかわかったものではない。
「ソノミ――自分の家族を殺すのは辛いだろ?だから今は、俺に任せろ」
「グラウ………あぁ、辛い、とても………」
初めて聞くソノミの潤んだ声に、こんな状況だというのにドキりとしてしまう。まだ事務所で出発する前に、“帰郷すればソノミの意外な一面が見られるかもしれない”などと思っていたが……まさかこんな形で的中するなんて。
家族を殺す。そのようなこと、大抵の人間には出来やしない。肉親には情を抱いてしまう。血の繋がっている者には、どうか幸せになって欲しい。そう思うのがごくごく自然なことだ。
けれど、例えそうであったとしても――“望まず”ということも、実際起こってしまうわけだが。
「というわけだ、ルコン。今のあんたにソノミは似つかわしくない。だから――あんたの妹、俺がもらいうけるぜ……お兄さん?」
*
近接武器を持つ者と中遠距離武器を持つ者が戦うとしたら、果たしてどちらが有利だろうか?刀を持つ者と拳銃を持つものが戦えば、どちらが有利に戦えるかという風にも言い換えられるかもしれない。
それを決めるのは――“間合い”である。近接武器は、遠距離、すなわちそのリーチの届かない所に敵がいた場合、攻撃手段として何の役にも立たなくなる。しかし“間合い”が詰まると立場が逆転する。もちろん中遠距離武器であっても近距離戦は行えるが、その“間合い”なら近接武器の方が圧倒的に優位となることは明白であるだろう。
「ちいッ、速いッ!!」
三歩近づいたらこれだ。先ほどはまるで空気を読んでいるかのように俺たちに危害を加えては来なかったというのに、ルコンは短兵急に俺目掛けて突撃を開始してきた。
「止まれよッ!!」
――
合計8発の連射。
ルコンの勢いは神速――このまま間合いを詰められては、俺が劣勢になることは確実。そうなっては困ると、胴体目がけて撃ちこんだわけだが――
「グガアッッ!」
先ほどは後退してくれたというのに、今度は無反応。まるで「攻撃したのか?」と言わんばかりに、その勢いが削がれることはない。
「くっ!」
肉薄。横一閃――思いっきり身体を後ろに反らし、なんとかこれを回避。
恐ろしいものだ。空気を引き裂く音が鼓膜を震わせるなんて。
「ウガアッッッ!!」
今度は縦に、銀閃煌めく脅威の一刀――即座に身体を起こし、身を捻ることでなんとかやりすごす。やはり近接戦は俺に分はない。ならば――
――
顔面目がけて乱れ撃ち――効いている。そうか。顔を狙われるのは嫌いなのか。
ルコンが後ずさりした隙をついて、連続で後方へと跳躍して距離を取る。
さて、どうしたものかな。ルコンは回避という動作をしてこない。いや、取る必要がないようだ。それはソノミを見ていてもわかっていたことだが、
間合い取りについてもなかなか厳しい。あの突撃を防ぐ効果的な手段は、顔面目がけて撃つぐらいか……もしくは逃げ回って
いずれにせよ、決定打は全く思い浮かばないわけで――
「ガアッッッ!」
考える隙は与えないという意思表明か、再び俺へと向かってくるルコン。このまま接近をされてはまずいな。顔面を狙いつつ、俺も後退を――何っ!?見失っ――!?
「グガアッッ!」
「――っ!!?」
――どガンっッッ!
「ぐうっっッッッ!」
気が付けば――俺は近くのビルの壁へと、鈍い音をたてながら激突していた。頭部だけは守れたが、そこから下は壁へとめり込んでいる。
「ガバッ!がはっ、はっ……」
逆流してきた血を外へと吐き出す。
臓器が、まるで激しく
これは………参ったな。
「グラウっっ!」
「ん…ソノミ……?って、おいっ!」
腹部を押さえて走ってきたかと思えば、急に蹈鞴を踏んだまま倒れて――なんとか彼女を受け止めようとした結果、彼女を抱きしめるような形になってしまった。
慌てて手を離し……って、抱きしめ返されている…だとっ!?
こんな近くにソノミを感じたことは初めてだ。だから今まで知らなかった――ソノミの匂い、このサンダルウッドに似た香りを。
ソノミが俺の胸の中で震えている。微かに嗚咽が聞こえる。えっと……こういう時は、抱きしめ返した方が良いのだろうか?
「グラウ……お前まで、お前までいなくなられたら、私……いったいどうすればいいんだよ……。嫌だ、お前までいなくなるなんて……」
「ソノミ………」
確かに今のルコンの刺突は、少しでも反応が遅れていたら俺は串刺しにされていたかもしれない。こうして生きているのはほぼほぼ奇跡、偶然というものに感謝しなければなるまい。
けれど……ソノミは、俺があのまま死んでしまったのではないかと心配してくれたんだな。いや、それだけじゃない。ソノミは――ルコンの死も恐れている。
俺はソノミではないから、彼女が今どれほど苦しいのか、その不安を全て理解してやることは出来ない。
だから、俺が出来るのは――そっと、震えるソノミを抱きしめた。
「安心しろ。俺は生きている。ソノミを連れて帰るって、二人にも約束したしな。それに、結構頑丈なんだぜ、俺」
「口から血を流している男に言われても、何の説得力もないだろ、ばか……」
「ははっ、確かにそうかもな。それでも、俺はまだまだやれるぜ。とりあえず今は、なんともならないようなこの状況をなんとかする策を、どうにか考えなければならないな」
色々と策を思案したが、ルコンはそれを圧倒的な暴力で無下にしてくる。残念ながら、この場所には利用出来そうなものはないし……正攻法、それに近いやり方で、どうにかする他ないかもしれない。
ただ――一つだけ気になっていることがある。
「なぁ、ソノミ。
「ああ……あの甲冑はあらゆる攻撃を無効化する。例え猛牛のように突進したって、それを最悪の攻撃に変えてしまうぐらいにはな」
そうか。それならばよかった。そうだというなら――俺に勝機はある。
「ソノミ」
彼女を抱く手をそっと離して、ソノミの肩を掴んで彼女の目を見た。
泣き腫らしていて、そしてほんのり頬が赤い。ソノミは、直ぐにそっぽを向かれてしまった。
「なんだよ、グラウ。今の私をそうじろじろと見るな……斬るぞ?」
「やめてくれ。刀を持った鬼を二人も相手にするなんて勘弁だ」
咳払いをして、それからソノミに告げる。
「後一発だ。後一発で決める」
「……なっ!?お前、正気か?」
「もちろんだ。だからその前に、一つだけ確かめさせてくれ――俺は、ソノミの兄を殺す。その覚悟は出来ているか?」
ソノミは目を大きく見開いて、どこか遠くの方を見た。
残酷なことを口にしているのはわかる。だけれど、確認をしておきたいのだ。後で恨まれるのが怖いからではない。ソノミが望まないことを、俺はしたくないからだ。
そして数十秒後。心が決まったのか、彼女は確かな覚悟を湛えた瞳を向けてきた。
「本当は私が妹として始末をつけるべきなんだがな……兄様を前にすると、どうもうまくいかないんだ。お前にも迷惑をかけるし、自分のことを情けなく思うが――頼む。そうすするしかなくなった以上――終わらせてくれ、兄様を」
覚悟は、十分に受け取った。
「ああ、任せておけ。だが、一つだけ約束してくれないか?」
「……なんだ?他でもないお前の頼みなら……なんでも叶えてやる」
俺がソノミに頼もうとしていることは、そんな大仰なことではないのだがな。
「また俺に、美味しいおにぎりでも作ってくれ」
「……そんなことで良いのか?てっきり、もっと激しいことを………」
なんだかソノミの頬がより紅潮していっているように見えるが…気のせいだろうか?
「激しいことって、いったい何を言っているんだ?」
「いや、だから、ほら……ネルケがお前にしたようなことを、私にも……とか………」
そこまで言われれば、いくら俺でも、ソノミがどのような方面の頼みを想定していたのか検討がついた。
「おいおいソノミ、俺をいったいどんな人間だと思っているんだ?俺は、年端もいかないような少女に、いかがわしいことを強要する趣味はない。だいたい、ネルケにやられて困っているというのに、ソノミにまでそのようなことをされたら……御しきれないぞ」
「っ!!お前、それは本当か?やはり、お前は私のことが――!」
「知らない。はあっ……」
大きく溜息を吐いた。どうやら、ソノミはネルケに悪い意味で影響されてしまったようだ。まったく……少し人当たりが良くなってきたかと思えば、変な方向に成長しつつあるなんてな。
「そこで見ていてくれ。そう長くはかからない」
「グラウ――頼んだ」
俺は身体を起こして、再びルコンの方へと歩き始めた。
俺は、頼られる、期待されるということがあまり好きではない。俺はそれを精神的な重さとして感じてしまう。どうしても頭を過ぎってしまうのだ。「もし失敗してしまったら」と。そう、俺は信頼を裏切ったことで失望されてしまうことを恐れている。
けれど、今は違う。頼られていることを光栄に思う。何よりその相手が――ミト・ソノミという少女だから。
彼女は大切な仲間、後輩、そして家族。そんな彼女の頼みなら、何としてでも叶えてやりたい。またもう一度――ソノミと並んで歩くためにも!
「ルコン。あんたに聞こえているかはわからないが、ケリをつけよう――いくぜッッ!」
駆けだした――今度は俺から。
握りしめるのは右手の
拳銃を持っている相手が敢えて距離を詰めにかかるなんて、傍から見れば血迷っていると思われるかもしれない。だが、これで良い。
「グアッッッ!!」
俺に応えるように、ルコンも向かってくる。
ほんの数メートルまで接近。そして、
それを見切って俺は――ありったけの力で、地面を蹴り飛ばした。
宙を舞い、ルコンの頭上へと。
そして狙いをつけ――放つ。がらあきの首の付け根を目掛けて!
「終わりだッ!」
――
「ガアッ………」
ルコンの首元から鮮血が舞い上がる。
そしてルコンはばたりと音を立てて、地面へと倒れ込んだ。
「よっ、と。ふうっ……」
着地。危ない賭けだった。勝てるも負けるも、五分五分といったところ。
もしも飛ぶタイミングが少しでもずれていたら、俺はこうして二本足で立っていなかっただろう。当然高さが低すぎては意味がないし、高すぎても撃てずじまいで着地を狩られる可能性もあった。
「自分の異能力なのだから理解しているだろうが……日本の甲冑は、西洋のものと比べて機動性に優れている。それに、身体への密着が緩いぶん、衝撃を逃すという利点もある。けれど日本の甲冑は、案外鎧の間に隙間が存在している。それを
ソノミに
「うっ、うぅ……」
うめき声――ホルスターにしまった拳銃を、二丁とも引き抜いて
ルコン……生きているのか。だが、先ほどと違って殺気はない。それでも無害だとは断定出来ないが――上手いこと外せたようだ。
「兄様っ!」
ソノミが駆け寄ってきて、ルコンの頭を自らの膝の上に乗せて、彼に涙ぐむ瞳を向ける。
この場所に俺は不要だな。立ち去ろう。
「グラウ……お前、まさか狙ってやったのか?」
「そんなことはどうでも良いだろ。今は、兄妹水入らず話をしたら――」
「いいや……君もここに残ってくれないか、グラウ…君」
「ん?俺も?」
※※※※※
小話 わんわんわん
ソノミ:グラウ、お前……いったいどうやってここまで来たんだ?
グラウ:うん?まぁ最短ルートは辿らなかったが、それでもあまり遠回りにならないようと努めたつもりだ
ソノミ:こんな所まで追ってきて……道中、何もなかったわけではないだろ?
グラウ:そうだな。やはり一番ヤバかった出来事は…マフィアのボスの息子と出会ったことか
ソノミ:テウフェルのか?
グラウ:ああ。いやっ……やはり、一番ではないか?
ソノミ:もっと大変な目に遭ったのか?
グラウ:そう心配しないでくれ。オフィスビル群に着いてからのことなんだが……途中でみかんの段ボール箱を見つけてな。素通りしようと思ったんだが――中からくぅ~~ん、くぅ~~と甘い声が聞こえてきてな
ソノミ:まさか――
グラウ:
ソノミ:それじゃあ、段ボールの中に戻したのか?
グラウ:いや、近くに発見した毘沙門の兵士に託してきた。毘沙門の兵士が優しくて助かったよ。こんな見ず知らずの男から子犬を引き取ってくれて、ソノミが向かった先まで教えてくれたんだからな
ソノミ:お前――やっぱり優しいんだな。そんなところが……なんでもない
グラウ:(てっきり優先順位を考えろと怒られるかと思ったが……あの判断は間違ってなかったか)あの子犬も、新しい主人が見つかるといいな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます