第2話 沈黙の空、響くは銃声。あるいは…… Part8
〈2122年 5月7日 4:07AM 第一次星片争奪戦終了まで残り約20時間〉
―グラウ―
「やはり石段がきつい……俺だけか、しんどいのは?」
階段の上り下り大変になるような歳ではないはずなのだが、なんせ急な石段だ。息が上がって仕方がない。それに、脚に乳酸が溜まってきているようだ。
「いいえ…グラウ、わたしもきついわ……」
ネルケへ流し目すると……そのクリーム色の前髪が、汗ばむ額へぴたっとくっついていた。それに、彼女の体温が上がっているせいか、あの撫子のほの甘い匂いがより一層濃く感じてきて――どこか扇情的な思いを高めてくる。まったく困ったものだ。
「ぜぇぜぇ……お二方と同意見ですよ……エスカレーターを作れってんですよ」
ゼンも呼吸が荒く、目をひん剥いて……俺より相当きつそうに見える。
しかし……エスカレーター、か。それに関して、日本に来てから一つ疑問に思っていることがある。
「ソノミ、一つ質問していいか?」
「なんだ?答えられるものなら答えてやる」
「それじゃあ――どうして日本の地下鉄は上りエスカレーターはあって、しかし下りエスカレーターが設置されていないところが多いんだ?」
飛行場から彩奥市へと至るまで、かなり地下鉄を乗り換えてきた。その道すがら、片側しかエスカレーターがない駅が多いように感じた。それはただの俺の気のせいなのだろうか?
「確かに、そういう駅は多い。理由は……下りの方が歩きやすいから、だろうな」
「なるほど。確かに、俺たちはそうだな。しかし――」
全員が全員下りが楽だとは思わない。何故なら――
「むしろ年配の方は、次の階段が見えなくて下りの方が大変だと感じることが多いと聞く」
「お前の言うことも一理ある。だが、お前はたぶん通勤ラッシュの時間に地下鉄を利用していたんだろ?」
どうしてそんなことがわかるんだ?
「その通りだが?」
「日本の地下鉄会社は、時間帯によってエスカレーターの方向を変えるということを行っている所もある。だが、日本の超高齢社会を考えれば、両側にエスカレーターを設置することが望まれるだろうな」
なるほどな。賢い配慮がされているわけか。そうすることによりエスカレーターをもう一台設置するコストを省ける、と。しかし、利便性の観点からも、ソノミの言う通り両側設置の方がより良いのだろうな。
「そんなことよりも、今はここをなんとかして欲しいっすけどねぇ!」
「そうよ!エスカレーターを設置すれば、この壬生神社の参拝客も増えるんじゃないかしらっ!!」
ネルケとゼン、俺が数時間前に考えていたようなことを口にしだしたな。当然、俺もその意見には賛成なわけだが――
「お前ら自分たちが石段を上るのがきついからって、好き放題言っているだろ。はぁ……この程度で息が上がってどうする?軟弱が過ぎるだろ」
俺たち3人とは違って、ソノミは疲れの色が一切見えない。汗一つなく、その表情は未だ凜々しさに満ちている。
「いったいどうすればこの苦行がきつくなくなるって言うんすか、ソノミ先輩?」
「そうだな……日々の鍛錬が肝要だろうな。素振り1000回、腕立て伏せ100回、腹筋100回。日本にいた時は、よく階段ダッシュもしていたな」
「階段ダッシュ……ああっ!陸上の選手がやっているトレーニング方法ね!!」
「その通りだ。マスクを付けてやると効果的だが……ふん、この程度で音を上げるお前らに言っても、仕方がない話だな」
昨日の朝、ここではない別の神社の階段を駆け上がっている人を見たが……なるほど、そういうことだったのか。てっきり神社ファンが、神社を見たいという衝動に駆られて奇行に走っているのだと思っていた。
さて、ようやく参道へと辿り着いた。見渡す限り……敵影なし。落ち葉が踏み荒らされた形跡もなく、俺たちが留守にしていた間も、特に誰かがここに来たということはなさそうか。ミレイナさんの「こんな所を集合地点にする他の組織はいない」という予想は的中したようだ。
「ふう、やっと上り終えたわね!」
「そんな“してやった”というような顔をして……上っただけだろ、ネルケ?」
「疲れたんですぅ~~!ソノミと違って疲れたんですぅ~~~!!」
うむ。たった数時間の付き合いとは言え……ネルケとソノミも仲が良くなったものだ。ソノミが初対面の人間とこうも親しくしているなんて、ネルケの人懐っこさの賜と言うべきなのだろうか。
2人は髪の色も瞳の色も、性格もしゃべり方も全く違う。しかしこうやってじゃれ合っている姿を見ると――どうしてか、ソノミが姉でネルケが妹で、二人が姉妹のように見える。実際年齢は……ネルケは俺と同い年ぐらいだから、ネルケよりソノミの方が年下ではあるが。
「あぁ………」
なんだか身体があれを欲している――そうだな。ここいらでギブミエナジーを一本、開けるというのも悪くないかもしれない。
ボディバックから取り出して、プルタブと……っと!少し噴き出してしまった。それも仕方ないことか。急な石段を上ってきたのだから、その間にかなりシェイクてしまったようだ。衝撃によって液体の中の炭酸が気体となって、開封と同事に飛び出す。炭酸飲料である以上、避けられない現象だな。
「あっ、ゲロマズ飲料じゃないですか、それっ!!」
「あん?なんて言った、今?」
ゼンもか……どうして俺の仲間にはこうもギブミエナジーを愚弄する奴しかいないんだ?いや、でも、思い返してみたら……俺以外にギブミエナジーを飲んでいる人って、ユスしか見たことがないような――しかしだ!
「飲めばわかるぞ?」
「いやっすよ!さっき聞こえてましたよ?『あなたのことは好きだけど、この飲み物は無理』って。いやぁ、愛すら超えるまずさって相当なもんっすよねぇ!!」
流石に腹が立つ……一発殴っても良いだろうか?そうだ、俺には先輩としてこいつをたしなめる義務があるしな。
「じょ、冗談っすよ!グラウ先輩、ソノミ先輩じゃないんだからそんな鬼の形相しないでくださいよ!!いや、ソノミ先輩は女とは思えない顔をするから、グラウ先輩はそこまで怖くはないっすけど――――うぐぅっ!!?」
好き放題言ったゼンに鉄拳制裁を下したのは――俺ではなく、ソノミであった。
みぞおちに強烈な一撃を食らい悶絶をするゼン。その正面に立ち、ソノミは冷酷な眼差しをゼンへと向ける。
「女とは思えないような顔をしていて悪かったな。だがお前、次にくだらないことを宣ったら……次はその綺麗な顔を歪ませる。いいな?」
「へっ、へい……」
うむ。ゼンの言う通りなのかもしれない。いくら俺だってソノミよりは怖い顔は出来ないな。なんなら今のソノミの表情、彼女が腰に括り付けたその青鬼の面なんかよりよっぽど――
「グラウ。お前は余計なことを……考えていないよな?」
「あっ、ああ……」
ゾクリと恐怖に身体が凍る。
ソノミの前で、下手なことを考えるのはよした方が良さそうだ。ここまで女性に恐れを抱いたこと……人生初だ。
と、こうして立ち止まっていると俺もソノミに何をされるかわからない。早く縁側に向かうとしよう。
「……逃げたか」
ぼそりと声が聞こえた気もするが……聞かなかったことにしよう。その方が幸せでいられそうだ。
「コホンっ!えっとそれじゃあこれから先のことを話そう」
そしてネルケとソノミも縁側へと、ゼンは少し遅れてやって来た。では、団地で話したとおり作戦会議第二回目を始めるとしよう。
「これからって……本当にあの作戦計画書の通りなんすか?」
「異議があるのか?」
「まっ、別にオレ的にはいいっすけどねぇ~」
ゼン的にはそうだろうな。何故ならその内容は――
「一応確認だ。俺たちがこれからすることは――睡眠、だ」
こんな作戦があって良いものなのかと、ミレイナさんに一応進言はした。しかし「みんなを思ってよ」と押し切られ……結局そのまま実行することになるのだろうな。
「ほんの数時間前に確認した通りだが、俺たちは最後の最後で漁夫の利を得ようとしている。そのような作戦であるから、星片の在処がわかった以上、直前になって
「うまいこと言ったつもりか、お前?」
あれ、そうでもないのか?結構決まったと思ったのだがな。
「そうね、確かにもう夜の4時だもんね。うぅっ~~はぁっ!!夜更かしは美容の敵!ねっ、ソノミ?」
ネルケが両手の指を絡ませて、背筋を伸ばして――たったそれだけの動作で、俺は目のやり場に困ってしまう。その豊かな胸のラインが猛烈に自己主張をするかのように突き出されている。
「知るか。ったく……」
いやそうな表情をするソノミだが……ああ、やはり。あの屋上で見せた剣呑な雰囲気も大分和らいだな。あの時のソノミは、まるでハリネズミのように人を寄せ付けないトゲトゲしさがあった。しかし今は、かなり柔らかな雰囲気をしている。
この調子なら、またいつものソノミに戻ってくれるだろうか?もちろん彼女があの屋上であれほどまでに激しい感情を見せた理由がわからない以上、そう楽観的にしているわけにもいかないが――
「――グラウ、いらないのか?」
「ん、これは……?」
考え込んでいて、ソノミが
透明なラップに巻かれており、サイズは拳一個分ほど。ああ、もう見るからに――美味しそうではないか!
「“腹が減っては戦はできぬ”と言うだろ?24時間も食事抜きなんてしんどいと思ってな。お前らの分を用意しておいた」
なるほど、俺たちのためにわざわざ準備しておいたということか――ああ、なんと優しい後輩を持ったことか!
確かにお腹も空いてきていたし、眠る前に食事と洒落混むのも悪くない。
一応ボディバックの中に、コンビニのおにぎりを一つ忍ばせてはあるが……そんなものより、ソノミのおにぎりの方が断然食欲をそそられる。
「では、いだだくとしよう」
ソノミからおにぎりを受け取り、ラップという名の上衣を脱がしていく。流石に時間の経過からか、海苔は多少しっとりとしているが、それでも磯の香りがふんわりと漂ってきた。
果たして彼女の料理の腕前はいかに?それでは早速一口――
「はむ……これは――!」
掴んでもその形は崩れなかったというのに――口に入れた瞬間にお米がほろっと崩れていく。お米本来の甘みに、ほどよい塩加減。もっちりとした米が、存分に口の中を満たしていく。
そして中心部へとお米を攻め立てていくと、そこにいたのは――塩味がよく利いた鮭。しかしそれはしょっぱすぎることなんてない。白米と合わさることでまた新たな境地を開き、そして幸せという味が喉を通っていく。
「ソノミ……正直舐めていたぜ。まさかここまで美味しいものをこしらえるなんてな」
おにぎりなんて、人が作ったものだろうがコンビニの大量生産品だろうが大差ないと思っていた。しかしそれは、どうやら大きな間違いであったようだ。
ソノミのおにぎりは、郷愁を覚えさせる。優しくて、愛情に満ちた――ああ、そうだ。ユスも時々おにぎりを作ってくれていたな。まぁ、あいつのは色物の具材ばかりで、ソノミのと比較するなんて申し訳ないような気がするが……このおにぎりは、戦場であるのに関わらず、安堵感を与えてくれる。そんな味だ。
「気に入ってくれたならなによりだ。それで……ネルケ、お前の分だ」
「グラウをここまで言わせるなんて、いったいどんなものなのかしらね!」
ネルケがソノミから差し出されたおにぎりを受け取って――ぱくり。
「はむはむ……ん!おっ、美味しいわ!男をものにしたいなら胃袋を掴めというけれど……やるわね、ソノミ……!」
「別にそんなつもりはないんだがな。さて――ゼン。鬼の作ったおにぎりなんて……いらないよな?」
根に持っていたのか、さっきの。ソノミが大分悪い顔をゼンへと向けている。先ほどの意趣返しが、完全に決まったようだ。
「いっ、いります!ソノミ先輩は優しい……そう、まさに天使みたいな人だ!!」
「逆に腹が立つが……ほれ」
ゼンはおにぎりを獲得することすら必死。可愛そうではあるが、当然の報いといえば当然の報いだな。
しかし――おにぎりと言えば、女性が握る方が美味しいなんて眉唾な話を聞いたことがある。女性の手の分泌成分がどうとかいう理由によって、その説は成り立っているようだが……結局、おにぎりを食べるのが男の場合、野郎に握られたものより女性に握ってもらいたいなどという、邪な価値観がそこにはあるのかもしれない。
なんにせよ、“握り方”というのはおにぎりを作る上で重大な要素であることは確か。おにぎりなんて、実際調理過程は具を詰めて握るだけと言えばその通りだ。しかしそういうシンプルな料理だからこそ、その
畢竟、ソノミの料理の腕は、なかなかなものだと言って過言ではなさそうだ。
「お代わりはいるか?」
「いただこう」
今度ソノミから受け取ったおにぎりは……不思議な色をしているな。茶色くテカテカしたお米に、黄色の欠片は天かすだろうか?それにこの緑色は青のりに見える。
とまぁ、見ていても仕方がない。お味の方を確かさせていただこう――
「ん!?こっ、これは……なんだかやばいな!」
最初に口に広がったのは、濃い出汁の風味。今まさに食べているというのに、食欲が増幅されていくかのようだ。続けて天かすがサクッと響き、青のりがアクセントとして働いていて――口の動きが止まってはくれない。
あっという間に、一つを食べきってしまった。
「気に入ったようだな。流石は“悪魔”と名の付くだけはある」
「悪魔?」
んっ?何か良からぬものでも入っていて――それであれほどまでに美味しかったとでも言うのか!?
「巷でそう言われているんだ。何、お前も食べてわかっただろうが具材はめんつゆ、天かす、青のり。それらを混ぜただけだというのに、やけに美味しい。そして繰り返し食べたくなる中毒性があることから、悪魔なんて名前が付けられている」
確かに、この味はやみつきになりそうだ。うむ、実際一個じゃ満足出来ないな。
「すまないソノミ。もう一個同じものはあるか?」
「あぁっ!グラウばっかりずるいわ!!そんなに美味しいというのならわたしにもちょうだい、ソノミっ!」
「オレも食いたいっすよ、ソノミ先輩!!」
「そう一斉にかかってくるな。まったく……しょうがない連中だな」
俺たち3人に同事にせがまれ、呆れたような表情を浮かべるソノミ。でもその表情はどこか――面倒見の良い母親のような、温かな母性に満ち満ちているように見える。
きっとソノミは良妻となるのだろう。その旦那となる人が羨ましい……なんてな。
*
「ふうっ……たらふく食べたなぁ。一回の食事で合計15個以上おにぎりを食べたなんて、俺も結構な大食漢だったんだな」
お腹がパンパン。ソノミも、よくあれだけの個数をこしらえておいたものだ。
「本当ね。もうお腹いっぱい……それに、眠くなってきたな、ふあぁっ」
無警戒に欠伸をするネルケを見て、俺もついついつられて欠伸をしそうになる。
「じゃあ、オレは先に寝ますね。おやすみなさい――グウッ……」
こっ、こいつ――縁側に横になって、ものの数秒で寝やがった!いくらなんでも寝付くまで早すぎるだろ!!
「まったく、気が抜け過ぎだろゼンは……ところでグラウ。男女が同じ場所で寝るのは問題だろ?裏に一つ小屋があるのを確認した。私とネルケはそこで寝ることにする」
確かに。ここが結界の中であったとしても、そういうジェンダー的問題は気にした方が良いな。俺とゼンの男チームは風にさらされた拝殿の縁側で寝ても特に問題ないが、ネルケとソノミの女性チームは屋根のある場所で寝た方が良いだろう。
「ソノミ、万一そっちで何かあったら大声で呼べ。直ぐに駆けつける」
「お前もな」
そうしてネルケとソノミは小屋の方へと……ん?ネルケが縁側へと戻ってきた。何か忘れ物でもしたのだろうか?
「グラウなら……来てもいいのよ?」
またそんな冗談を……俺が本気にしたら、一体どうするつもりなのだろうか?
「あんたもさっさと寝てくれ。夜更かしは肌に悪いんだろ?」
そう切り返すと、ネルケはむっとした顔を浮かべ、「グラウの意気地なし!」などと叫んで、小屋の方へと消えていった。
「誰が意気地なしだ」とあげた俺の声は、誰の耳のも届かず、虚空へと消えていく。先ほどまであんなに神社は嬉々とした声で騒がしかったというのに、今は森閑としている。それじゃあ、俺も横になるとするか。
星片が彩奥市に落ちてから、既に4時間余りが経過した。その時間は、ネルケと出会ってからの時間に等しくもある。
結局、どうしてネルケが俺に好意を寄せてくるのかは依然として不明なまま。彼女が俺を誰か別な人物と勘違いしている説が、未だ最有力だと思うのだが……それにしてもだ。こうも俺の心の平穏を乱してきた女性は、ネルケ以外いない。彼女は警戒すべき対象だというのに……俺も甘くなったものだな。あの立てた誓い、堅く守らなければならないというのに。
ソノミのこともよくわからなくなってきてしまった。先ほどまで見せていた彼女の表情は、不安という名の曇りが一点もなく、快晴そのもの。無愛想はおろか、むしろ友好的。
あれほどまでにソノミのことを心配していたというのに、もしかして取り越し苦労だったというのだろうか?もちろん、全て杞憂で終わってくれれば一番それが良いのではあるが。
大分眠くなってきたな。いつもはこれほどまでに激しい睡眠欲に襲われたりなどしないのだが。ここは柔らかいベッドではなく、堅い木の上。安全な部屋の中ではなく、危険に満ちた戦場の端っこ。それなのにこうも眠くなるなんて。もしかして食べ過ぎたのか?それとも……な――
※※※※※
小話 用語解説Part3 “ギブミエナジー”ってどんな炭酸飲料?
グラウ:今回フォーカスを当てるのは、本編に既に何度も登場している俺の愛する炭酸飲料――ギブミエナジーについてだな!
ネルケ:いつにもなくテンションが高いわね、グラウ……
グラウ:そういうあんたは、どうしてそんなにテンションが低い?何か悪いことでもあったのか?
ソノミ:悪いことが始まりそうだからこんなにテンションが低いんだろうが
グラウ:はぁ?なんだよ、悪いことって?
ネルケ:はっきり言うわっ!ギブミエナジーなんか解説しなくていいわよっっ!!
ソノミ:ネルケの言う通りだ。そんなことより優先すべき小話のネタならいくらでもあるだろうに
グラウ:二人揃って勝手を言いやがって――って、いかんいかん。このような無駄話に文字数を割いている暇なんてないのであった。というか……もしかして、それが狙いか?
ネルケ&ソノミ:ちっ!
グラウ:あんたら、覚えておけよ……コホン!では、気を取り直してギブミエナジーの話をしていこう。まずは基本情報を。ギブミエナジー、英語表記だと“GivemeEnergy”は、ギブエナの名で親しまれている。お値段は税込み69円
ソノミ:まぁまぁお手頃だな
グラウ:ギブミエナジーが発売されたのは2085年。まだ発売から40年も経っていない若い炭酸飲料であるというわけだ。発売元はダラス郊外のテキサス州ソプラノに本社を置くギブミエナジー・パイナップル・グループだ
ネルケ:ごめん、もう終わってで良いかしら?
グラウ:まだだ。ギブミエナジーのCMは「ぷはあっ!やっぱり私はこの一本!ギブミエナジー!!」というもの。有名女優のこの台詞は、ギブミエナジーを飲むときはついつい真似をしたくなる。そしてキャッチコピーは“The queen of beverages. free from food additives”、“食品添加物を含まない炭酸飲料の女王”だ
ソノミ:あれほどまでに不味いのに食品添加物を含まない、だと……?いや、もしかして含まないからこそあんなに不味いのか?
グラウ:……不味いかどうかはともかく、味について、俺は「ほろ苦く、そしてほのかな甘酸っぱさ」と評価している。しかし、世間では「独特な味」だと言われているそうなんだが……いったいどうしてなんだろうな?
ネルケ:グラウ――独特な風味とか、やっぱり婉曲に酷評されているじゃない!
ソノミ:そうだぞ!それに、お前だって大好きだという割に、味について深く語れていないじゃないか!
グラウ:……仕方がないだろ。これを書いている人、炭酸飲料飲を飲めない口の人間なんだから。飲めないものを想像して表現しろなんて、無理な話だろ?
ネルケ:うわっ、急にさじを投げた!
グラウ:それに作者、ここのところは水と豆乳しか飲まなくなってしまったそうでな。で、裏話なんだが――実は俺、当初の設定だと(〇ヤ〇ァームの黒ごま)豆乳が大好きという設定にされかけていたそうだ。まったく、自分の趣味を俺に投影するなって話だよな
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