残された輝き
あるフレンズがいた。
賢く、優しく、パークのフレンズから愛された。
あるフレンズがいた。
生まれたフレンズの傍におり、その者を支えた。
あるフレンズがいた。
あるフレンズがいた。
あるフレンズがいた。
・・・今はもういない。
火山の頂に、彼女がいた。
フレンズの体をしたセルリアン。
かつて分かり合えた、フレンズ。
輝きを失った山頂で風を受ける。
・・・声は聞こえない。
誰も、いなかった。
彼女は歩き始めた。
旅を振り返るように。
彼女は遊園地に来た。
喜びはなく、少しの悲しみがあった。
遊具は迎える者を無くし、時を失っていた。
耳を澄ませる。
「______」「______」「________」
かつての輝きが、僅かな囁きになった。
彼女は涙を流した。
彼女はロッジに来た。
カウンターには誰もいない。
森の一部となっても、役割を果たし続けている。
木漏れ日が中を照らした。
あるドアを開けた。
重なった輝きが、笑い声と怒りの声を届けた。
彼女は涙を流した。
彼女は雪山に来た。
旅人を迎え入れる場所は、とうに崩れていた。
壊れた機械、湯が無くなった浴場。
綺麗に直されていた布団。
目を閉じる。
残された輝きが、温かさを感じさせた。
彼女は涙を流した。
彼女は舞台に来た。
すでに柱は錆び付き、光を灯さない。
観客席は、いないファン達を支えていた。
アイドル達は消え、静寂が辺りを支配している。
想いを馳せる。
多くの微かな輝きが、歌声と歓声で舞台を満たした。
彼女は涙を流した。
彼女は図書館に来た。
大樹は未だ枯れず、その場所を守っていた。
整然と並べられた本は、その役割を終えている。
机の上に、本が開かれていた。
風が頬を撫でる。
込められた輝きが、長たちの声を語った。
彼女は涙を流した。
彼女は平原に来た。
城は緑に侵食されてなお、威厳を伝えた。
多くの者たちの足跡は、時が洗い流した。
争いが起こることはない。
かつての合戦場を見つめた。
風化した輝きが、一瞬かつての光景を見せた。
彼女は涙を流した。
彼女は湖畔に来た。
家は崩れかけてなお、主人たちを待っていた。
切られた木からは、新たな緑が育っている。
湖は変わらず、美しく澄んでいる。
祈りを捧げた。
僅かに残った輝きが、喜びを伝えた。
彼女は涙を流した。
彼女は砂漠に来た。
遺跡は崩れ、沈黙している。
鼻歌はもう聞こえない。
消失はすぐそこに迫っている。
足元の金属を拾い上げた。
散りばめられた輝きが、喧騒を奏でた。
彼女は涙を流した。
彼女はカフェに来た。
温かな小屋は寂れ、朽ちている。
甘い匂いが微かに香る。
それでもなお、客を受け入れてくれた。
空いた窓から外を見つめた。
風に乗った輝きが、優しく歌を運んだ。
彼女は涙を流した。
彼女はジャングルに来た。
川を渡すものはすでにいない。
喜びの声も響かない。
ここにいた者たちが、静かに失われてゆく。
水と森の音に耳を傾けた。
消えかけた輝きが、いない者たちの声を渡した。
彼女は涙を流した。
彼女はサバンナに来た。
ゲートは意味をなさない。
描かれた地図は消え、パークを失った。
ただ広がるサバンナは、虚無を映した。
「輝きはまだ 残っている」
声と同時に、輝きが虚無を塗り替えた。
彼女は涙を流した。
彼女は火山の頂にいた。
たどった足跡。
失われた者たちの輝き。
すべてを拾い集め、保存した。
サンドスターの光は失われた。
彼女は消えるだろう。
輝きは消えるだろう。
変わらない世界を残して。
「でも」
「またいつか」
「光が戻ったとき・・・」
「私たちはまた」
「出会えるよね?」
あるフレンズがいた。
・・・
・・・
・・・
今はもう、いない。
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