アルセン事件(とは言えない)簿



第一話 消えたお菓子



私の名前はオオアルマジロ!

パークで探偵をやっているんだよ


今日も何やら事件を持ってきた人がいるみたい


「・・・なるほど、大切にとっておいたおやつが無くなっていた、と」


すごくまじめに聞き取りをしているのは

私のパートナーのセンちゃんだよ!


まじめすぎて空回りすることがあるんだよ!

かわいいよね!


「そうでーす! パフィンちゃんのおやつでーす!」


今回の依頼主はパフィンちゃん!

"食べるのが大好きな"パフィンちゃん!


・・・もう解決してないかな?


「口の周りに何かついてるよ?」


「た、食べてないでーす! なくなったんでーす!」


「アルマーさん、もう少し聞いてみましょう」


ええ、がっつり付いているのに・・・

お仕事だからってそんなに張り切らなくても


ほら、パフィンちゃん目が泳いでるよ

あっ、こら、口をさりげなく拭かないで


「事件の様子をお願いします」


「パフィンちゃんがジャパリチップスを持っていたらー・・・」


「いつの間にか中身が無くなっていたんでーす!」


「あんなにおいしかったのに・・・ ひどいでーす!」


うおお、これはさすがに怪しすぎる

"おいしかった"って、もう認めてるようなものでは?


でもここまで露骨だったら、センちゃんも・・・


「ふむ・・・ これは難事件ですね・・・」


「えっ」


あれれれれ、センちゃん?

なんでそんなに悩んでるのかな?

証拠と証言あるようなものじゃない?


パフィンちゃんも深刻そうな顔しないで!

あっ、おやつ取り出した


おいしそう・・・ じゃなくて!


「パフィンちゃん、君は持ってるおやつを無意識に食べる癖があるんじゃない?」


「うう、それは・・・」


「・・・・・・」


考え込むセンちゃんは置いて、手早く丸め込もう!

このままじゃ日が暮れちゃう!


「ね? 正直に話してごらん?」


「そ、そうでーす・・・ パフィンちゃんは」


「わかりました!!!!!!!!」


「「!?」」


いい感じに終わりそうだったのに!

どうしたのセンちゃん!?


「おそらくパフィンさんは、袋を開けたジャパリチップスを知らないうちに落としてしまったのでしょう!」


「え・・・ え・・・??」


「せ、センちゃん?」


「大切にしていたおやつをすべて落としてしまったのはとてもつらかったでしょう」


「でも大丈夫です!」


「私たちと一緒に、ロバさんのところまでもらいに行きましょう!」


元気よく言ってパフィンちゃんの手を取るセンちゃん


あっけにとられた私を置いて、そのまま事務所を出ていった




これでいいのかな????

















「まさか、私の推理が間違っていたなんて」


「まあまあ、パフィンちゃんも謝っていたし・・・」


パフィンちゃんから本当のことを聞いてがっかりしているセンちゃん

とりあえず今回の事件は解決(?)かな


ちょっと強引だったけど、まああの子も嬉しそうだったし・・・

よかったということでいいよね


探偵としてはちょっとよくなかったけども・・・









第二話 見つけたいもの



私の名前はオオアルマジロ!

アルマーでいいよ!


今日は・・・

お仕事がないの! やったね!


依頼する人がいないとも言うね!


「あ”あ”~、暇だなー・・・」


センちゃんはどこかに行ったし、一人はつまらない

センちゃん・・・ センちゃん・・・


「センちゃ~~~~~~ん!」


「どうしましたか?」


「」



おおおおおおおおおお~~~~~~~っ!!!


いたのッッッッッッ!?!?


センちゃんちょっと顔赤くない?

病気してるのかな・・・



「どうもしてないよ」


「そうですか」


そっけないような、そうでないような返事・・・

よかった、いつものセンちゃんだ


「どこに行ってたの?」


「・・・」


だんまりを決め込むか、センザンコウ!

気になるなぁ


「・・・今日は、アルマーさんに、おね・・・依頼があります」


「え!? なになに? 誰から?」


おおお、ついに暇から解放される!

誰かな? どんな依頼かな?


「私から、です」


「え」


きりっとした態度のセンちゃん

口をへの字に曲げてかわいい


理解が追い付かず、変な感想を述べちゃった

どういったことなの????


「私が、見つけたいものが、あります」


「それを見つける手伝いをしてください」


「え、え、え、どうしたのセンちゃん」


「さあ、はやくしてください」


ぐいぐいくるセンちゃん

どうしたの? 性格変わってない?


半ば強引に手を引かれ、外に出る

いい天気だ 雲一つない


手早く事務所の扉に外出中の看板を掛け、センちゃんは私に向き直った


「行きましょうか」


「う、うん」


うおお、なんかどきどきする

どうしたアルマジロ! しっかりしろ!


「ど、どこ探すのかな?」


「そうですね・・・ じゃあ、まずは海に行きましょう」


お、おう?

海に見つけたいもの・・・?

一体何なんだ? 貝? 魚?


食べ物ばかりじゃん、これは自分のことだなぁ






海に到着

いろんな話ができて楽しかった

いつも依頼ばかりだからね


「よーし、どこ探そうか?」


「じゃあ、砂浜を探しましょう」


砂浜を?

むむ・・・ よし! 探そう!


「センちゃーん! 砂のお城一緒に作ろ!」


「いいですよ」


「センちゃん! ヤドカリだよ!」


「かわいいですね」


「ねえねえ! こんなところに大きな水たまり!」


「いろんな生き物がいますね」


「ほらほら~、水かけちゃうぞー!」


「うふふ、じゃあ私も・・・」



・・・はッ!

何をしているんだ私は!?


遊んでばっかじゃん!!!!!!


探してないじゃん!!!!!!!


「センちゃんごめん! 遊んでばかりで・・・」


「ふふ、いいんですよ」


「じゃあ次のところに行きましょう」


え? 次のところ?

ここではもう見つかったってことなのかな?


何もできてなかったけど、いいのかな

申し訳なくなってきた・・・






それから何日かかけて、センちゃんといろいろなところに行った

いろんなお話をして、遊んで

目的も忘れてしまうくらい



・・・・・・・・・


一体何だったんだ!? 見つけたいものって!?

気になる! 気になる!! 気になる!!!


「ねえ、センちゃん」


「見つかったの?」


思い切って聞いてみる

薄暗い事務所の中、センちゃんが振り向いた


「ええ、見つかりました」


「見つけたいものって何だったの?」


「・・・アルマーさんとの、思い出です」


えっ


「・・・この仕事を始めて、ずっと依頼の解決ばかり」


「二人きりで遊ぶことが、できませんでした」


「だから、依頼したんです」


「探偵ではなく、一人のフレンズとして」


私は


「・・・ごめんなさい」


黙り込む私に、消え入るような声が届く


"依頼"中、センちゃんはとても楽しそうだった

にこにこ笑って、積極的に遊ぼうとして・・・

いつものまじめさが嘘のようだった


「・・・まじめだなあ、センちゃんは」


「?」


「そんなこと、気にしてたの?」


「そ、そうですよね・・・ 私」


迷惑していると勘違いしたのか、センちゃんが謝りかける


そうじゃないんだよ?


「私はセンちゃんといるだけで満足しちゃってた」


「でも、センちゃんが満足できてなかった・・・」


「そのことに、気付けなかった」


「だ! か! ら!」


ビッ、とセンちゃんに指を向ける


「これからは依頼とかじゃなく・・・」


「いっぱい一緒に遊んで、いっぱい思い出を見つけよう!」


・・・?

ここまで言って気付いたけど


二人きりでいろいろ回る・・・

これって、デートなのでは?


「アルマーさん・・・ ありがとうございます!」


キラキラとした目で私を見つめるセンちゃん

おおお、これは・・・ 理解していない様子


うわああああああぁぁぁぁ!

意識したらすごく恥ずかしくなってきた!!!


いつもかわいいセンちゃんが、十割増しでかわいく見える!

これは、これは・・・!


「じゃ、じゃあ、また明日とか、だめですか?」


あわわわわわわわわわわ

上目遣いやめて!

破壊力! 破壊力ゥ!


ぐぐぐ、このままではペースに乗せられる!


「ちょっと待った! その前に・・・」


「? なんですか?」


まじめさにつけこむようで悪いけど

この手を使わせてもらうよ!


「"依頼"の報酬をもらおう!」


「!!」


私の言葉を聞いて慌てるセンちゃん


・・・後のことを考えないなんて

相当浮ついていたのかな


罪悪感が強い

これはダメだな・・・


「なーんて、冗談・・・」


「~~~~ッ!」


私が言葉を言い終わる前に

センちゃんが腕をバッと広げた


顔がとても赤い


「わ、私を、いっぱいぎゅーってしていいですよ・・・」




こんなの、耐えられるわけないでしょ?

















「センちゃん」


「なんですか」


「私、元の動物はお腹が弱点なんだって」


「そうですか」


「でも、こうやってしていたら、安心できるね」


「・・・」


「あはは、そんなにぎゅってしないでよ」









最終話 パンダチーズ



タイトルオチの時間だコラァ!!!!!


アルマーちゃんだよ!!!


こっちは恋人のセンちゃん!!!!!!!


あ”あ”あ”あ”あ”!!!!


未来が見える! テンションがおかしくなる!!


「アルマーさん、つきましたよ」


「ここが戦場か」


「?」


今回の依頼主はレッサーパンダちゃん!

ちくりんに来てほしいって言われたから来ました!


「どのような依頼なのか、気になりますね」


「あ、探偵さーん!」


声のするほうを見ると、レッサーちゃんがぽてぽて走ってきた

かわいいのに、恐ろしい


「早速で申し訳ないですが、依頼の内容をお願いします」


「あ、はい」


「実は、ジャイアントパンダちゃんに寝るところを作ってあげたくて・・・」


あれ? え?


それは探偵関係ない気がする

よっしゃ帰ろう


「なるほど、わかりました」


「それでは現場に行きましょう」


「現場・・・? ああ、こっちです!」


受けちゃった

まじめなんだな

センちゃんは


   アルマー 心の一句




「ここにつくりたいんです」


「竹を使いますか」


「こんな感じで・・・」


開けた場所に到着

早速二人が話し合っている


私? 魂が抜けているので・・・


「アルマーさん、こっちに来てください」


「」


「アルマーさん!」


「」はい


魂が抜けているのでまともな返事ができません

どうすれば・・・

どうすれば、未来を変えることができるのかな?


「これで作ってみましょう」


「あ、ここ私がやります!」


「」私も頑張ります




結果はっぴょーーーう!!!


まともなものができませんでした


そりゃそうでしょう!

寝床とか竹で作ったことないですよ!

なんですこれ?


イ カ ダ じ ゃ な い で す か ! ?


竹を使う時点で寝心地ごりごり

素晴らしい健康グッズですよ!


「うう、竹じゃあの岩とあまり変わらない・・・」


これでまた一つ、レッサーちゃんは賢くなりました

それではまたいつか

平和なときに会いましょう


「まだですよ!」


「「!?」」


強い口調のセンちゃんに、思わず魂が体に戻る


「依頼は最後までこなす・・・」


「それが信条です!」


「・・・!」


センちゃんの熱い想い・・・

確かに伝わった!


よっしゃ、こうなったら頑張ろう!


「よーし! アルマーさん頑張る・・・」


「なにしてるのー?」


ぞくりと背筋が凍る

圧倒的な威圧が背中にかかる


「あ・・・ ジャイアントパンダちゃん・・・」


「みんな楽しそうだねー」


「・・・」


にこにことしている

かわいいのに、恐ろしい


「えーっと、実は・・・」


説明の間、どうすれば危機回避できるか考えた

無理だった


「・・・ふーん」


一通り説明を聞いたパンダさんは

レッサーちゃんを唐突にひょいと抱え上げた


「あ、あ、あ」


「うりうりうりー、かわいいなあ」


そのままぐりぐりと頬ずりする

まるで子供と大人みたいだ・・・


「心配してくれてありがとう」


「あのままでも、私は十分なんだけど・・・」


「・・・最近冷えるから、一緒に寝てくれると嬉しいな」


「! わかった!」


嬉しそうにしているレッサーちゃん

よかったよかった


ではこれにて私たちは失礼して


「あなたたちが手伝ってくれたんだよね」


「いえ、依頼の達成はできませんでした」


「」なのでそのまま帰りたいな


「お礼にこれを・・・」


懐から取り出したのは

あのパッケージ


もらわなければ終了

食べなくても終了

どこからともなくパンダちゃんが現れる


フレンズの8割がなぜか苦手なあの食品・・・


「じゃあ、もらっとこうか・・・」


「いえ、依頼をこなせなかったので結構です」


うわああああああ!!!!

断っちまった~~~~~!!!


一瞬でレッサーちゃんを優しくおろし

一瞬で距離を詰める


あの音楽が流れ始める・・・!


「Just you know why・・・」


「」逃げて! センちゃん!


「ぐッ・・・」


強烈な圧に、センちゃんが押されている

私は動けない!


「でも・・・ それでも!」


「もらうわけには・・・ いきまセンザンコウ!!!!」


唐突に放たれたギャグに頭が真っ白になる


パンダさんはそのままセンちゃんの腰をつかみ・・・



ドラゴンスープレックス!!!!!



センちゃんが埋まった~~~~~~!!!!!


起き上がったパンダさんがこちらを見つめる

目が合った

吸い込まれそうなほど真っ黒だ・・・


「Just you know why・・・」


歌いながらこちらに迫る


逃げたい・・・ 


でも!!


センちゃんのために!!!


立ち向かってやる!!!!


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


「アルマー、行きまーーーーす!!!!!」

















その後、彼女の行方を知る者は、誰もいなかった

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