第37話
普通に普通にと思えば思うほど、
何か特別なことをしてしまいそうになる。
とりあえず外に出よう。
そんな時、電話が鳴った。
洸介からだ。
「もしもーし、響太?調子どう?」
何だか洸介の声を聞いたら、
途端に日常が入り込んできた。
「ノルマは終わった。データ送ったの聴いた?」
「聴いた聴いた!さすがだね〜」
「で?何?」
「おい冷たいな。いやお前どうしてんのかなと思って。もう少しで1か月だし」
「どうもこうもないよ。7日後にはそっちに戻る」
「彼女とはどーすんの?」
洸介はこういう所に鋭くて、
多分何となく何かを察知しているのだろう。
「7日後には別れて、そっちに戻る」
「ふうん。じゃあ、6日後に黙って戻って来い」
「は?」
何を言っているのか全く分からない。
「別れるなら約束なんかするな。約束破って予告無しに戻るんだよ。そうしないと、お前のことだからお互い後を引く別れ方になるぞ」
「俺がいつ後を引く別れ方をしたんだよ」
「じゃあ、聞くけどお前から別れた事なんかあるのかよ?いつも相手が手を離してくれただけだろ?
言っとくけど誰も傷つかない別れとかありえないから」
……。
悔しいけれど何も言えなかった。
「ってことで、6日後待ってるから。じゃあな」
電話は切れた。
僕は通話が切れた電話を持ったまま、
ぼう然としてしまった。
いや、洸介に言われるがまま動く必要は無い。
でも、言われた事はその通りだった。
7日後に、静かに出ていって
何も無かった様に日常に戻る。
それが僕の望みだった。
何も無かったように?
そんなキレイ事が本当に?
普通に何事もなく過ぎるはずの日々。
平和に終わるのは間違っているのか。
人の言葉で揺らぐ自分が情けない。
けれど、6日後に黙って出ていくことを
僕はすでに考えはじめている。
約束を破ることについても。
そして、その前にマリコさんに会っておかなければ
と思った。
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