第35話

それからはまた僕達は日常に戻った。


みちさんは仕事へ行き、

僕は曲を作り、

簡単に家事をする。


みちさんが帰ってきたら、

一緒に夕飯を作り

それを沢山の会話の中で食べる。


僕達はよく喋ってよく笑った。


そして、後片付けが終わると

手を繋いで買い物がてら

夜の散歩に出かける。


その中で、マリコさんの話も

避けることなくしていた。


「いつもマリコと一緒にいるのに、

最近は響太くんとの約束のせいでそわそわしちゃって落ち着かないよ」


何だか初恋の話を友達同士で話しているみたいだ。

みちさんがとても幼く可愛く見える。


「マリコさんはみちさんの様子に気づいてない?」


「絶対に気づいてる!だってマリコはいつも全部お見通しだから」


「あはは(笑)じゃあ、カウントダウンみたいで

マリコさんの方がドキドキしてるかもよ」


「そっか!マリコもそうだって思ったら、少し楽になったかも(笑)」


みちさんが繋いだ手をブンブンと揺らす。

僕達は夜の散歩を毎日楽しむようになった。


その次の日もそのまた次の日も、

僕達はそんな風に過ごした。


そして、みちさんの休みの日になると、

2人で買い物に出かけた。


洋服から雑貨から食料品まで、

ありとあらゆるものを、

2人で見て回った。


まるで思い出作りの1日の様に。


次のみちさんの休みにも

あちこち出歩いて

帰ってくる頃には2人ともクタクタだった。


それでも僕達は、

どんな時間も濃いものにしようと

無理矢理な位に楽しんだ。





そして、カレンダーのバツ印はどんどん増えて、

残すところはあと1週間となっていた。



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