第28話

一瞬、みちさんの顔色が変わった。


「マリコの話、していいの?」


「うん。俺マリコさん好きだよ」


そう言うと今まで見たことの無い様な

嬉しそうな顔をみちさんはした。


「いつもはね、マリコの話を男の人から聞かれるの嫌だったの。だってマリコの顔目当てで寄ってくるのが見え見えだったから。でも、響太くんは違ったよね。初めてマリコと会った時も普通だった」


「勿論、キレイな人だけど。それより何より心がキレイで…」

…そして、とてもみちさんの事を愛してる人

と言いかけてやめた。


「そうなの!!マリコは本当に心が天使みたいにキレイなの!!髪も今は短いけれど、前は長くて

本当にお人形さんみたいだった」


みちさんは本当に嬉しそうにマリコさんの

話を沢山してくれた。


どれだけの人から告白されていたか、

どれだけみちさんに優しいか、

それだけじゃなく、

分け隔てなく誰にでも優しいことも。


止まらなかった。


そんなみちさんを見ていると、

僕はやはりここに戻ってきて

良かったと確信した。


「マリコね、響太くんの事も話してたよ。

嘘はつかないタイプだって 笑」


「なーんだ、それ」


「信用出来る人だって褒めてた」


「俺、褒められる様な話したかな」


「分かるんだよ、きっと」


そう言った後、

みちさんは、あくびをした。


「明日も仕事でしょ?そろそろ寝よう」


みちさんの肩まで布団をかけた。


すると、みちさんは安心したみたく

僕にくっついてコテンと寝てしまった。


みちさんからマリコさんへの思いが溢れていた。


僕達は一緒に眠り、

セックスもする。


でも、恋人ではないのだ。


これから大切なものを

ちゃんと掴むため。

ちゃんと知るため。

失わない様に。


その為に僕達は抱き合って眠っている。


みちさんの無防備な寝顔を見ながら

僕は毎日覚悟し続けることになるだろう。


でも、今この瞬間だけは何も考えずに

温かさを感じながら一緒にいたい。


そう思いながら、僕もまた眠りにおちた。




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