第27話

みちさんが仕事に行ってからは、

少しの家事をして

僕は洸介との約束を守る為

曲を作ることにした。


ある意味、

この状況で何も浮かばなければ

僕は終わりだなと、思って少し自嘲気味に笑った。


ギターを弾きながら

次々と溢れる様にとまでは行かないものの、

いくつかのフレーズは出来てきて

その欠片たちのどれにもみちさんがいた。


嬉しい様な嬉しくない様な複雑な気分。


けれど、こうして作っておくと

あとでまとめられる。


まだ10曲分には足らないけれど、

このペースで行けば約束は絶対に守れる。


はぁー。


溜息の様な一息ついただけの様なものが

出た。


ギターを置くと、

僕はソファーに寝転んだ。


目を閉じると、

昨晩の事がありありと蘇ってきた。


あれは…本当に僕だったんだよな。


自分でも知らない自分に驚いたけれど

きっといつか出会う自分。

出会わなきゃいけない自分だった気がする。


逆に今までどんな風にしてたんだ、僕は。

もう思い出せない。


そんな事を思っていたら、

僕は眠ってしまっていたらしく

目を覚ますとみちさんの顔が近くにあった。


「おーい。もう夕方ですよー。」


「アレ?俺いつの間に寝てたんだろう」


「何時から寝てたの?夜眠れなくなっちゃうよ 笑」


「4時過ぎまでの記憶はあるんだけど」


「えー。2時間も寝てるよ…って昨日あんま寝てないもんね 笑」


「…みちさんもね」


お互い思い浮かべた事は同じだった様で

下を向いてクスクスと笑った。


「今夜はどうする?」

目を擦りながら僕が言うと、


「えっ!?」

みちさんは異様に驚いていた。


「あー、いや、違う違う。ご飯のこと!!」


みちさんは急に恥ずかしくなったのか

逃げるようにキッチンへと行った。


その様子が面白いので

「俺が作るよ」と言って僕もキッチンへ追いかけた。


「いや、いいよいいよ、私がするから。あっち行ってて」


みちさんは、恥ずかしがるとすぐ目線を合わせないように逃げる。


僕は顔をわざと覗き込んで

目を強引に合わせた。


そうすると、みちさんは目をぎゅっと瞑ったので

僕は一瞬で心が奪われて、思わず口づけた。


すると、ぎゅっと瞑っていた目が少し緩んだ。


それがとてつもなく可愛くて

また口づけてそのまま深いキスとなった。


でも、途中でみちさんに胸を両手で押されて


「とりあえずご飯にしなきゃ、ね?」


「とりあえずってことはそれからなら…?」


「ご、ご飯ご飯!!」


みちさんを困らせるのが楽しくて

僕はいつまでもそんな事ばかり言っていた。


結局、その日の夕飯は2人で作ることにして、

冷蔵庫にある野菜で和風パスタを僕が。

ポトフ風スープをみちさんが。


そして、食後にはみちさんが

りんごを剥いて出してくれた。


その後は、シャワーを浴びて

早めに2人でベッドに入った。


今日も飽きる程キスもしたし、

どちらともなく求めあった。


その後も裸のままで2人で色んな話をした。



「マリコさんの話が聞きたいな」


不意に僕はそう言った。











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