第13話

翌日、みちさんは本人が言っていた通り

風邪は治り元気になっていた。


いつものみちさんの出勤の日は

僕はベッドでまだ眠っているのだけど、

今日は起きて一緒に朝食をとった。


みちさんは、

昨日の事は忘れたみたいに振る舞っていた。

だから、僕も無かった事にした。

不自然さは漂っていたけれど。


そして、僕の顔を見ることなく


「昨日ってひょっとして誰か来た?」


とみちさんが聞いてきた。


「そうだ!忘れてた。黒ずくめの背の高い女のひとが来た」


「なんか言ってた?」


「…みちさんの幼なじみで一緒に働いてるって言ってたけど」


「そう…それだけ?」


「あ!俺の事、猫を拾ったって話にしてたでしょ?」


「あー、ははは(笑)ごめん。彼女色々と心配性だから」


少し強ばっていた表情から安心したように、

みちさんは朝食を食べだした。


僕は何となく『恋人』かと聞かれた事だけは

言わなかった。


そして、みちさんは仕事へと出掛けた。


僕は無いことにしたはずの

昨日のみちさんを思い出していた。


みちさんは他の女の子とは違うと

思い込んでいたけれど、

やはり同じなのだろうか、と。


これは1度目のヒステリーだったのかと。


そして、あの黒ずくめの女性のこと。

何か聞かれたく無いことでもあったのだろうか。


「まぁ、色々あるよな!」


そうわざと何でも無い事の様に

口に出して

僕も出かける準備をし始めた。

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