第12話

お粥を食べた後、

薬を飲んでみちさんはまた眠った。


僕は食器を洗い、

後片付けも終えたので

コーヒーでも飲もうかと

お湯を沸かした。


すると、お湯が沸き始めた頃に

コーヒーがない事に気付いた。


仕方なく、火を止めて

コーヒーを買いに行く事にした。


それにしても、

さっきの美人過ぎる人…

みちさんへの心配の度合いがスゴかったな。

女子同士ってあんなものなのだろうか。


そんな事を考えながら、

散歩がてら少し距離のある遠いコンビニに行きコーヒーとバニラアイスを買った。

ひょっとしたら、

みちさんが食べるんじゃないかと思って。



そして、家に着きドアを開くと


そこにはみちさんが座っていた。


「びっくりした!なに?どうしたの?

病院行くの!?」


「今…は、…行かないって…」


みちさんの声が小さくて聞き取れない。


「え?なに?」


「どこに行ってたの?今日はどこにも行かないって言ってたよね?」


みちさんは急に立ち上がって、

さっきとは違う大きな声で言った。


「…えーと、これ。」

コンビニの袋からコーヒーを見せ、

「コーヒー飲みたくなって、でも無くなってたから買ってきた」


みちさんは、へなへなとそこに崩れ落ちた。

そして、ぽろぽろと涙を流していた。


「ごめん。大きな声で変な事言ってごめん。」


僕は本当に驚いた。


「いや、出かけるって言って行けば良かった…かな?」


みちさんは首を横に振りながら、

何度もごめんと言った。


僕はこの時、初めてみちさんの事を

ちゃんと見た気がした。


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