第11話

僕はどっと疲れた。


はぁー。

溜息ばかりついてるな、今日は。


そういえば、朝から何も食べていないことにも気付いた。


もう昼になろうとしている。


みちさんも何も食べてない…


とりあえずお粥でも作っておくか。


こういう時に、

今まで多少なりとも母親にやってきた事を

良かったと思う。


母親は、あまり身体が丈夫ではなかったからたまに父親と順番で家事をしたりしていた。


お粥もその時に覚えた1つだった。


その母親は今は割と元気に暮らしているけれど、たまに僕が帰ると必ずお粥を作る羽目になる。


好きな人が作ってくれると

いつもより元気なるからと言っていたけれど、ただのごくごく普通のお粥なのだ。


そんな事を考えながら、

煮立ってきた米をゆっくり

かき混ぜた。


料理をすると、

毎度こんな風に家族のことを思い出してしまう。


いいんだか悪いんだか。


「響太くん」


その声に振り返ると、みちさんが立っていた。


「あれ?起きてきて大丈夫?」


「なーんかいい匂いがして、目が覚めちゃった(笑)」


「何も食べてないと思って、お粥作ってたことろ。食欲あるなら良かった」


みちさんは嬉しそうな顔でお粥の鍋を覗き込んで、にこにことしていた。


「ほら!出来たら持っていくから寝てなよ」


そう言って僕はみちさんの背中を押しながら、寝室の方へと促した。


「いいの?ありがとう。じゃあお言葉に甘えて」


みちさんの随分顔色は良くなっていて、

とても楽しそうに見えた。


しばらくして、お粥も出来上がり

みちさんの元へと持って行った。


「わぁー待ってました!」


お盆ごと布団の上に乗せて、

ふぅふぅしながらお粥を食べ始めた。


「美味しーい。染み渡るなぁ。

響太くんありがとう」


「お粥を作れる猫はなかなかいませんからね?」


「え?」


「いや、何でもないよ。食べたらまた寝なよね」


さっき来た人の事は

また後で伝えればいいか。


そう思いながら、

みちさんがにこにこしながら

お粥を食べているのを見ていた。








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