第7話

春が来た。桜が屋敷に来て一年が経った。

智子や薫の知人たちを通して依子たちには多くの友人も出来た。


屋敷は変わった。いつも桜と友人たち、そして依子の笑い声で満たされていた。


ある日、依子と桜、智子と薫。その友人たちは花見に出掛けていた。依子と桜はこの日の為にお揃いのワンピースを仕立てていた。桜はその名の通り『桜色 』。依子は『 紅唐色』という林檎のような赤のワンピースを身に纏っていた。

まるで双子人形みたいな二人を見て通行人は振り返る。智子は自慢気な顔をしている。その顔の勇ましさに薫は笑う。

「見て。桜がとっても可愛いから、みんなが振り返る。」

依子は、ケラケラ笑いながら桜並木の中歩いて行く。

桜は、

「ちがうわ。依子が季節外れの牡丹のように綺麗だからよ。」

と、真っ赤になり弱々しく言い返す。

友人たちは、そんな桜の小さな抵抗を聞いて依子と一緒になってケラケラ笑った。桜も一緒になって笑っていた。


こんな日々がいつまでも続けばいい。誰もがそう思っていた。

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