第4話

依子と桜はよく似ている。

異母姉妹になるのだから当たり前だと思うかもしれないが双子のようによく似ていた。

違う点といえば色素である。

二人とも色白であるが依子の艶のある黒髪に対し桜の髪は淡く茶色である。


屋敷では依子が監督となり桜の荷物が広げられていた。桜が持参した着物を見るや否や、依子は父を睨みつけた。

「お父様は桜のお母様に何を援助してきましたの?みすぼらしい。一つも桜に似合う物がない。この布切れは全部棄てて頂戴。明日は取り急ぎで呉服屋に行きます。すぐ報せを出しておきなさい」

使用人に冷たく言い放つ。

「桜。疲れたでしょ?明日も忙しいわ。今日はもう下がりなさい。」

依子はにっこり笑って桜に話し掛けた。

使用人たちも、父も、母でさえも依子が人に対して微笑むのを見たことがなかった。依子の温もりある笑顔とは裏腹にゾッとした冷たい空気が張りつめた。


依子が見立てた着物たちは直ぐに屋敷に届けられた。どの生地の物も桜に良く似合っていた。依子は「私が選んだのだから当然。」と得意気であった。


とりわけ裏葉色うらはいろの着物は桜の持つ儚い雰囲気に良く合っていて依子は大層きにいった。

「可愛らしい。可愛らしい。」

と、何度も桜に生地を当ててみては花のような笑顔で桜を褒めた。


「お義姉様、私のようなものにこんなにも良くして下さりありがとうごさいます。」

桜は深々と頭をさげた。

依子はいったい理由がわからないと言う顔をした。

「何を言ってるの桜?貴女は家の子よ、当たり前じゃない。それにお義姉様は辞めて頂戴。私たち同い年よ。依子って呼びなさい。」

「えっ...。でも、」

桜が何か言い掛けた時、依子は

「何か問題でも?」

と、一瞬鋭い顔した。獅子が燃えているかのようだった。

だか、すぐに桜に対して元の優しい顔になり桜をからかった。

「ほら、呼んでみて」

「...。依子。」

か細い声。桜は真っ赤になって俯いた。





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