第五章

 自称:妖怪、酒吞童子。

 自称:万事屋。

 自称:お兄ちゃん子の宇宙人

 自称:シューティングゲーム大好き女の子。

 そして、自称:なぜか女になったオッサン。

 そんな破天荒な5人だが、ついにその冒険を終えようとしていた。

 いま振り返ればゾンビの徘徊する街。トラップ満載のダンジョンゲーム。ヒューマノイドが徘徊する学校と、色んな困難と助けがあったおかげで俺は今、この世界を滅茶苦茶にした張本人。ノーマンとご対面することになる。

 俺とアキは校長室から放たれる光に包まれると、白と黒が混じり合う、歪んだ空間にいた。

「ここは?」

「わかならいわ」

 俺とアキは辺りを見回した。

 歪んだ空間に入ると、扉が消滅し、視線の先には黒スーツに映像で見ていた歪んだ目のマスクの男。そう、ノーマンが居た。

「やあ、僕の元へ来るとはすごいね」

「おい、マスク野郎。今すぐここから出せ!!!」

 俺は怒鳴ると、ノーマンは不気味な笑い声を発し、

「いいけど、君の仲間を見捨てるのかな?」

「何?」

 ノーマンが指パッチンすると、後ろにギンザンとユキ、スターベアーが透明カプセルの中に閉じ込められていた。

「ユキ、ギンザン!!!スターベアー!!!」

「フフフ、この三人が死にたくなければ私の指示にしたがいなさい」

「あんた、どこまで卑怯なのよ!!!」

 アキも激怒し、銃と構えていた。

「おっと、今すぐ三人を殺すよ」

「ぐっ・・・」

 アキは銃を下すと、ノーマンは一瞬にしてアキの後ろへ移動し、背中から蹴り飛ばした。

「アキ!!!」

「イタタ・・・」

「このゲス野郎!!!」

 俺はアキに対する仕打ちを見て激怒せずにはいられなかった。

「なあ、なぜあの三人をカプセルなんかに閉じ込めた」

「ああ、ごめんよ。あの校舎に5人もうろつかれたら困るのでね。定員オーバーというやつだ」

 相変わらずゲス野郎だ。

「それに、君のような戦闘力が弱い奴を生き残らせた方が都合いいのでねー」

「そんな理由で三人を・・・」

 俺の怒りがピークに達した。

「フフフ、いいね~その表情。好きよ~」

「あんた、変態ね・・・」

 アキは呆れてものも言えない状態だった。

「そうそう、この三人を解放してもいいのだけど・・・」

「ならさっさと解放しろ!!!このクソ野郎」

「まあまあ、落ち着いて。解放してほしければ僕とゲームをしよう」

「ゲームだと・・・」

 よほどゲーム好きなのかノーマンは俺にゲームをしようと提案してきた。

「そうだ、僕の用意したゲームに勝てばこの三人。いや、僕がハッキングしたゲーム世界の人々を解放してあげる。それに、今回は僕も参加しよう」

 どうやらノーマンも参加するようだ。

「で?どんなゲームだ・・・」

 俺がゲームの内容を聞くと、ノーマンは指をパチンと鳴らし、それと同時に歪んだ空間から赤と金の壁に囲まれた豪華な一室に変化した。

「スターチップは三つ持っているかな?」

「ああ、持っているとも」

 俺はポケットからアキと共に集めたスターチップを三つ出した。

「なら条件は整った。ルールを説明するから座りなさーい」

 ノーマンは再び指を鳴らすと、今度は黒と金のテーブルと、座り心地がよさそうな黒い椅子が現れた。

「テーブルにカード?」

「なんだ?何をする気だ?」

 俺とアキはテーブルに置かれたカードを見て言った。

「レイとか言ったかな?君は僕とKカードで勝負してもらいマース」

「Kカード?」

 俺は言うと、

「キングカードです。ルールは簡単。お互いにK(キング)とA(エース)を選び、それ以外のカードを3枚選び、シャッフルしまーす」

 ノーマンは説明を続けた。

「シャッフルが終わればゲーム開始です。五枚の手札からどれかを選び、テーブルに置いた後、“セット”といい、その後“オープン”という合図で同時にカードをめくります」

「で?勝敗はどうやって決めるんだ?」

「勝敗は、もし相手がA、あなたが5のカードであれば君の勝ち。僕はKで君が5であれば僕の勝ち、僕がKで、君がAであれば君の勝ちという訳だ」

「なるほど、つまりKとAのカード以外は引き分けという事か?」

「その通りデース」

 ムカつく返事だが、なんとなくルールがわかった。

「勝てばスターチップを貰い、負ければスターチップを失いマース。ゼロになった場合。あるいは時間切れになれば君の負け。そのアバターは消え、永遠に仮想空間を彷徨う事でしょう」

 なるほど、校舎で集めたスターチップはいわばノーマンに会うためのカギで、彼の元へたどり着くと対決出来るという訳か。だが、さっき意味深な事を言っていなかったか?時間切れ?なんだ?

「忘れていると思うけど、あと3時間で7日が過ぎマース。つまり、三時間経過したら強制的に僕の勝ちデース」

「なんだと!!!」

 これじゃあ圧倒的にノーマンが有利じゃないか。

 なぜなら時間経過まで勝負に出ないという方法もあるし、カプセルに閉じ込められている三人のアバターを破壊し、俺の動揺を誘い勝負を決めてくるという手もある。

 しかも、俺は三人、いや、俺が負ければアキの身に何が起こるか分からないし、この勝負、いわばノーマンにハッキングされたゲーム世界の住人の命もかかっているという事だ。

 背負うものが違う。

 いずれにしてもノーマンが圧倒的に有利なのは変わりない。

 だが、ここで勝負しない訳にもいかない。

 そう思った俺は。

「仕方ない、覚悟を決めよう」

「レイ!!!」

 アキはかなり心配そうな面持ちだった。

「ここで勝負に出ない訳にもいかない。それに、後三時間もしないうちに俺たちも消される。それなら勝負するしかないだろ」

「そうね、なら。悔いの無いよう勝負しなさい」

 アキの表情は惚れてしまいそうなくらい、いままで見た事ないような優しい笑顔だった。

「いいねぇ~いいねぇ~。男らしい女性。嫌いじゃないわ~!!!ひょっとして君男?ってくらい凛々しいねぇ~」

 ノーマンは手を叩きながら笑い焦げていた。

 正直、もうアキに俺が現実世界では男だと言うと事がバレてもいいと思っていた。

「さて、御託はその辺にして始めましょうか」

 ノーマンは一瞬で笑いを止め、俺の顔を見た。

「いいだろう、始めよう」

 すると、ノーマンは52枚あるカードの内、AとKのカードのみ抜き、それ以外はすべてシャッフルし、テーブルの中央に置いた。

 俺はスペードのKとAを選び、ノーマンはダイヤのKとAを選んだ。

 そして、シャッフルしたカードを3枚引き、ノーマンも3枚引き終えると、

「では始めよう」

 すると、ノーマンは手札から一枚選択し、俺も一枚選択し得ると、お互いテーブルにカードを一枚セットした。

「セット」

 カードに手を置き、

「オープン!!!」

 お互いカードをめくると、俺のカードはハートの10。ノーマンはクローバーの5だった。

「引き分けですね」

「最初から勝負に出るかよ」

「フフフ、思い通りになるかね?」

 ノーマンは不気味な笑い声をあげた音、二枚目のカードを選択した。

「さあ、早く選びたまえ」

「分かっているさ」

 俺は直感的にカードを選択し、テーブルに置いた。

「セット」

 お互いカードに手を置き、

「オープン」

 カードを開いた。

 結果は引き分けだった。

 俺がダイヤの3、ノーマンはハートの6。

「フフフ、流石ここまで来ただけあるね」

 ここまでは引き分けと順調だった。

 だが、次の勝負で異変が起きた。

「さて、続けよう。セット」

 ノーマンは残り三枚の手札の内、一番奥のカードを選びテーブルに置いた。

 なんだ?なぜ選ぶのが早い?

 俺は違和感を覚えた。

 なぜならさっきまでの二回は選ぶのに少し時間をかけていたが、今回は始まって早々に選んだ。

 この時、俺はある結論に至った。

 そう、ノーマンは勝負に出たのだ。

 おそらく二回戦が終えた後、事前に何のカードを出すか決めていた。となると、恐らく奴はKか?

 そう考えた俺は残り三枚の手札にあるAのカードに手をかけようとした時だった。

 待てよ・・・奴はあえて俺がKのカードを選んだと思わせてAか?それともKとA以外のカードか?

 考えれば考えるほど、泥沼にハマっている気分だった。

「随分時間掛かっているな・・・」

 ノーマンは少しイラついた口調だった。

「す、すまない」

 俺は慌ててカードを選び、テーブルに置いた。

「セット、オープン」

 この時、俺は目を疑った。

 俺が選んだカードはクローバーの8、ノーマンはダイヤのKだった。

「フフフ、僕のかーち」

 ノーマンは念動力を使い、俺のスターチップを一つ持ち去った。

「クソッ」

 俺は心底悔しかったのかテーブルを拳で叩いた。

「ほらほら、あんまり頭に血が上ったらダメでーす」

 この勝負で流れがノーマンに向いていた。

 おそらくノーマンは二戦目まで俺を泳がし、三戦目で俺の理をついてきたのだ。

「レイ、慎重にね」

「ああ、まだ二つある」

 俺はこの時、少し甘い考えに陥っていた。

「フフフ、そう安心していられるのも今の内ですよ」

 俺とノーマンはKとA以外のカードを山札に戻し、シャッフルした。

 そして、手札を5枚に戻し、勝負再会。

「さて、ではこれにするか・・・」

 ノーマンは早速カードを置いた。

 今度はKとA以外か?

 そう考えた俺はあえてAのカードをセットした。

「セット、オープン」

 俺はA、だが、ノーマンのカードは・・・。

「残念だ、ハートの6、僕の勝ちですね」

「クソッ!!!」

 もう何も考えられなくなっていた。

 気が付けば俺のスターチップは後1つになっていた。

 どうする、このまま勝負に出るか?

 俺は目を閉じ考えていると、

「ちょっとレイ、いい?」

 アキが俺の肩を叩いた。

「ちょっと休憩してもいい?」

「ああ、構わんよ」

 ノーマンはあっさり了解し、俺はアキに部屋の片隅に連れてこられた。

「もう少し冷静になって、これは遊びじゃないのよ」

「分かっているさ、でも・・・」

「いい?あなた一人の問題じゃないのよ?わかる?」

 ああ、分かっているさ。

 だが、俺のスターチップは後一つ、しかもノーマンは意外にカードゲームが強いとなると、もうお手上げだ。

「もうお手上げって顔しているわね、いい、あなたは一人じゃないのよ」

 アキの言葉を聞いた俺に電流が走った。

 ん?まてよ・・・

 俺のスターチップは一つ、でも・・・ 

 アキもスターチップを三つ持っている。

 出なければここに居ない。

 そして、俺はノーマンの様子を思い出した。

 ノーマンのあの様子。

 まるで俺が何のカードを出すか知っていたかの様だった。

 なぜ俺が最初Kと疑い、その後、Aかもしれないと思わせたのだろう?

 答えは単純だった。

 だが、奴はどうやってカードを予測した?この一室には後ろにカメラなど無かったし・・・。

 カメラ・・・?そうだ、奴のマスクだ。

 マスクのどこかにカメラがあって、何か細工があるんだ。

 仮想空間なら特殊なマスクを作る事くらい簡単だろうし、ゲーム世界をハッキング出来るほどだ。間違いないな。

 そう考えたら勝てるわけない、なぜなら最初から真剣勝負など、する気なんて無かったのだから。

 それに、俺が背負っている者と、ノーマンの背負っている者も違うし、ましてや奴の方が有利だ。

 そして、ある奇策を思いつき、アキにこう言った。

「なあ、今から言う事を黙って聞いてくれないか?」

「え?」

「もしかしたら勝てるかもしれない」

「本当!!!」

 アキは俺の手を握った。

「だが、アキよ。負ければ君もこの空間に取り残されかもしれない、それでもいいか?」

 俺は真剣な眼差しで見ていると、アキは少し考えた後。

「わかった、いいよ」

 なんとアキは俺の事を信じてくれた。

「ありがとう」

「ここまで来たんだ、敗北は許さないわよ。いいね?」

「わかりました」

 ノーマンにバレぬよう説明した。

 俺とアキは壁ぎわに立ち、小声でノーマンに勝つ秘策をアキに説明した。

「いいか、説明する前に近くに変なものは無いか?確認してくれ」

 俺とアキは周りを見回し、盗聴器らしきものは見当たらなかった。ここで聞かれては元も子もないからな。

 盗聴器が無いことを確認すると、俺は説明を始めた。

「いいか、ノーマンの奴は最初から真剣勝負などする気もない、いやむしろ最初から勝たせる気などないんだ」

「なんですって・・・」

「つまり最初から出来勝負という事だ」

「でもなぜそんなことを?後ろから見ていた私も怪しい動きは確認出来なかったけど・・・」

 誰でもそう思うさ。

 なぜならさっきまで普通に勝負して引き分けだったのだから。おそらく、見抜けるとしたら“神域の男”くらいさ。

「多分マスクの中とかに特殊なカメラが仕掛けられていているのかもな」

「もうイカサマじゃん、それ」

 そうさ、だが、そのカメラが何なのかが分からん・・・。

 その時、アキが腕を組んで考えている姿を見て、ある事に気が付いた。

「もしかしたら俺たちの脳波を計測する機能が付いているとか?」

「脳波を計測する機能?」

「ああ、俺とノーマンの一回戦目を思いだして欲しい。二戦目までは彼は普通にカードを選んでいた。だが、三戦目から何故かすぐにカードを選択していた。まさにそこだよ」

「ええ?言っている事が分からないわ?」

 アキが首を傾げていると、

「つまり、二戦目までは普通にカードを選び、勝負していた。この時、俺も冷静にカードを選んでいた。それを見たノーマンは三戦目から俺の動揺を誘う為、恐らく前もってKのカードを出すことを決めていた。それこそがあのマスク野郎がイカサマしている証拠だよ」

 俺は長ったらしい説明を終えると、

「でも、ノーマンは意外とカードゲーム強いとか?その可能性は無いの?」

 アキは俺に聞くと、

「なあ、君がもしゲーム世界をハッキングするならどんな風にハッキングするかな?」

「え?どういうこと?」

「もし自分がハッキングするならゾンビの徘徊する世界に魔法使いやゴブリンなどを巻き込んだりしないし、ギャルゲーの世界を一緒にしない筈だ」

「確かに、それじゃあ彼は・・・」

 アキも察したようだ。

「彼はあなたと同じ・・・」

「そうだ、だからカードゲームが強い訳ないんだ」

「そうか、なるほど」

 ようやく納得した。

「そこでだ、作戦なんだが」

 俺はアキの耳に小声で作戦を伝えた。

「上手く行くかどうか分からないけど、やってみましょう」

「ありがとう」

 俺は作戦を遂行する事になった。

「おい、終わったぞ」

 俺がアキとの話合いを終え、席に戻ると。

「随分遅かったね、で?話合いが終わったのか?」

「ああ、なんとかな」

「では勝負を再開しよう。まあ、結果は知れているかもしれないけどな」

 ノーマンは嫌味を言いながらカードをシャッフルした時、俺は大声で、

「ちょっと待った。この勝負、俺からも条件を言いたいのだがいいか?」

「なんだ?早く言え」

 俺は唾を飲み、

「俺はスターチップを4つ賭ける」

「は?馬鹿か?お前、あと一つじゃなかったか?」

 すると後ろに居るアキが立ち上がり。

「私の分も賭けるのよ」

「なんだと!!!」

「おっと、ルール説明の時、お前はスターチップを賭けられる人数について触れていなかったよな?だったら俺がアキの分も賭けてもいいよな?」

 すると、ノーマンは首を震わせながらこう言った。

「い、いいだろう。認めよう。だが、そこの女。いいのか?この女の為にスターチップを賭けても」

「良いわよ」

 即答だった。

 これにはノーマンもビックリで、しばらく黙った後、カードをシャッフルし、ランダムで3枚配った。

「勝負再会だ・・・」

 (まさか、こいつ。僕のマスクに付いているカメラに気が付いたか?)

 ノーマンは内心動揺しながらカードをセットした。

「セット」

「オープン!!!」

 カードをめくると、俺はスペードの6、ノーマンはダイヤの6.

「引き分けか・・・」

 ノーマンの様子は最初俺と勝負した時とは明らかに違い、かなり落ち着きがなかった。

「さっきとは随分動揺しているね」

「黙っていろ」

 ノーマンはマスクの下で汗をかいているのか頭のところにシミが出来ていた。

 なるほど、やはりイカサマしていたか。

 ノーマンは手札からカードを選らび、カードを置いた。

「さあ、さっさとカードを選べ!!!」

 俺は何も言わずにカードを置いた。

「さあ、勝負の時間だ!!!」

「セット、オープン!!!」

 俺のカードはスペードの3、ノーマンはダイヤの2。

「フフフ、勝負はこれからだ・・・」

「そうか・・・」

 俺は残り三枚のカードをテーブルに置いた。

「なんだ?降参か?」

「はあ、こんな顔じゃあ負けてもしょうがないよな・・・ここでも、現実世界でもよ・・・」

「ん?」

 アキも俺を見ていた。

「なんだ?何をする気だ?」

 すると、俺は勢いよく頭をテーブルに打ち付けた。

「な、何をする気だ!!!」

 俺はテーブルに何度も頭を打ち付け、気が付けば額から血を流していた。

「気でも狂ったのか!!!」

「ああ、狂ってなければダメだ・・・常軌を逸してなければ、貴様を打ち取れない!!!そうだろう・・・」

 俺は額に流れる血を手で止めがならノーマンを睨んだ。

「さあ、勝負だ・・・」

「狂人め・・・」

 さあ、この狂った行動をみたノーマンはどう出るか?

 その答えは、おおよそ知っていた。

 実際にノーマンは焦っていて、落ち着きがない。

(クソッ、ダメだ。頭から出血しているせいか脳波を感知できない・・・!!!やはり気が付いたのか、僕の隠しカメラの存在に)

 焦るノーマンの様子を見ているアキは、

(やはり焦っている。レイの言っていたイカサマは本当だったようね。ノーマンにとってこれが正真正銘の真剣勝負。レイ、勝ちなさいよ・・・)

 どうやらアキもわっているようだ。

 さあ、どう出る?このイカサママスク野郎!!!

「さあ、カードを選んだぞ・・・」

 俺は三枚とも血まみれになったカードの一枚を選び、テーブルに置いた。

「さあ、オープン!!!」

 ノーマンのカードはK

「フフフ、僕はキングのカードだ!!!さあ、はやく開け!!!」

「フン、そう慌てるな。今この瞬間が面白いのに一瞬でおわったら面白くないだろう?」

「ククク、さてはお前負けるのが怖いのか?ええ?だったら僕が開いてやるぞ!!!」

 俺の置いたカードを触ろうとした時、俺はノーマンの手を掴み、

「勝った気でいるのか?」

「そのようなものだろう!!!」

 ノーマンは根拠がないが勝ち誇っていた。

「それはどうかな?」

 俺はカードをオープンした。

 カードはA(エース)だった。

「え?ええ?なんで?どうして!!!」

「これが答えだ!!!」

 俺はノーマンに勝った。

「うそ・・・勝ちやがったよ!!!」

 アキは俺の勝利を見て驚き、俺に後ろから抱き着いてきた。

「レイ、凄いじゃん!!!」

「な?勝っただろう?」

 勝利を喜ぶアキに感謝し、俺はノーマンの方に視線を向けた。

俺はスターチップを4個賭け。という事は、ノーマンは4つスターチップを渡さなければならない。

「さあ、俺の勝ちだ!!!チップは4つ、さあ渡せ!!!」

 俺はノーマンのむなぐなを掴み、怒鳴った。

 すると、俺の腕を振りほどき、椅子に座ると、不気味に笑い出し。

「ククク・・・」

「おい、はやくスターチップを渡せ」

 俺は手を出すと。

「調子に乗るなよ・・・」

「え?おい、約束を破る気か!!!」

「汚いわよ!!!」

 アキも後ろから怒鳴ると、ノーマンの身体は身震いし始めた。

「約束?なんだ?それ?ええ?」

 ノーマンは体を身震いし、徐々に巨大化してきた。

「おいおい、なんだ?これ」

「離れましょう」

 アキは俺に肩を貸し、その場から離れた。

 すると、40メートルくらいに巨大化したノーマンが大声で、

「逃げられると思うなよ!!!」

 巨大化したノーマンは俺の目の前にある地面を拳で打ち付け、アキと共に吹き飛ばされた。

 アキは体を地面に強く打ち付けたのか、弱々しく上半身を起こし、俺は頭をふらつき、視界がぼやけつつある中、アキの身体を支え、抱き着いた。

 上を見ると、先程の豪華な一室から校舎に戻っていて、巨大化したノーマンの他に、校舎を破壊する青い巨人が3体いた。

 そんな絶望的な光景を見て。

「俺たち、死んでしまうのかな・・・」

「俺たち・・・?」

 アキは聞き返した。

 そして、俺は本当の事を話した。

「アキ、ずっと隠していた事があるんだ」

「何?」

 俺はどうせ現実世界で会う事もないと思い、真実をぶちまけた。

「俺、実は男なんだ・・・」

「え?」

 そして俺は何故か目から涙がこぼれ落ちながら、

「7日前に会社をクビになり、もう人生どうでもいいと考えながら仮想空間へ来たんだ。そうしたら、女の子になっていて、君と出会った」

 アキは泣きながら真実を話す俺を優しいまなざしで見ていた。

「アキさん、短い間でしたが、一緒に冒険できてありがとう。スターベアーさんやギンザン、ユキにも感謝してもしきれない」

「ちょっと、泣き過ぎよ・・・」

「もう会えないと思うとつい・・・」

 俺はスターベアーやギンザン、ユキとの冒険を思い出すと、色んな思いがこみ上げ涙が止まらずにいた。

 しかもここで抱き上げているアキにはどれだけ危機を救ってもらっただろうか。

 あのゾンビが溢れるガソリンスタンドでアキと出会っていなければ俺はどうなっていただろう?

 おそらくあの魔女と共に食われ、意識は仮想空間に取り残されていただろう。そう考えると、感謝しきれない。

 そんな情けなく、どうしようもなく負け組人生を歩んできた俺の手をアキは優しく掴み。

「いいのよ、また会えるわ。スターベアーにギンザン、ユキにも。無理かもしれないけど、もし現実世界に生きて帰ってきても会えるわよ。信じているわ」

「アキ・・・」

 俺はアキを抱きつきながら目を閉じていると、巨大化したノーマンがついに俺とアキに拳を落とし始めた。

「さあ、これで終わりだー!!!」

 アキ、スターベアー、ギンザン、ユキ、さようなら。

 俺はアキを強く抱きながら、今まで出会った者達に感謝していると、真上から物凄く切れ味のいい音が聞こえた。

 なんだ・・・?

 俺は真横で何か巨大なものが落ちる音が聞こえ目を開けると、巨大化したノーマンの左手が切断されていて、泣きじゃくるような悲鳴をあげていた。

「うああ、クソ、深紅のファイターめ!!!」

 深紅のファイター?

 何が起きたのかと思い、視界がぼやけていながらも上空を見回すと、ノーマンの真っ正面に赤く光る巨人が立っていて、頭部に銀色のブーメランを装着していた。

 そして、その赤い巨人は額から緑色のレーザー光線を放ち、青い巨人の頭部に当て、爆発しながら青い巨人は倒れて消滅していた。

 その様子を見たノーマンは、

「邪魔するなー!!!」

 と怒鳴り散らしながら赤い巨人に接近すると、赤い巨人は両腕をL字に構え、白い光線がノーマンの丁度胸の部分に当たり、貫いた。

 光線を食らったノーマンはついに爆散しながら消滅し、それと同時にハッキングしたゲーム世界も消滅してしまい、俺は意識を失い、視界は真っ暗になったと思った。

 すると、俺はベッドの上で目を覚ました。

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