第四章
警察署にはまるで開店したばかりの店に乗り込む大勢の客のようにゾンビの軍団がホールのなだれ込み、俺たち5人は休む間もなく女神像から出現した隠し通路へと進むしかなかった。
それから俺たちは真っ暗な通路を進み、扉を開けた先に待ち受けていたのはなんと巨大なダンジョンゲームだった。
ダンジョンゲームに入ると、中央には大きな広間があり、おの奥にはゴールらしき扉があり、左右には二つ入り口があった。
俺たち五人はその奥へと進むと扉には四つの南京錠があるのだが、その南京錠を調べると、なんと鍵穴が無いのだ。
「鍵穴が見当たりませんね」
俺はなんとなく南京錠を調べていると、ノイズが走る音が聞こえた。
振り向くと、俺たちが入ってきた扉激しい歪んだ後、消滅していた。どうやら後戻りは出来ないらしい。
「あの・・・これからどうしましょう・・・」
ユキは可愛げなしぐさで言った。
「そうですね、とりあえずここの謎を解くしかないみたいですね」
するとアキが口をはさみ。
「それなら手分けして謎解きしましょう。そのほうが手っ取り早いし」
「そうだな、そのほうが早そうだ」
アキの提案にスターベアーは賛成した。
ギンザンも俺たちを黙って見ていた。
「ギンザンは?」
「賛成だ」
即答だった。
「なら4つのグループで行きましょう」
この言葉におれは嫌な予感がした。
警察署を探索する時、くじ引きで決めた挙句、とんでもない怪物と遭遇したので、もしまたくじ引きと言ったら反論せざるを得ないと思っていた。
だが、アキも流石に学んだのか、こう言いだした。
「とりあえず一人行動でいいという人はいる?いたら手を上げて」
アキが言うと、スターベアーとギンザンは即座に手を上げた。
「スターベアーとギンザンは一人でいいのね」
「ああ、二人で行くほどのゲームでもないだろう?」
「二人は足手まといになるから却下だ」
ギンザンは分かる。だが、スターベアー、その発言はフラグが立つからやめた方がいいぞ。
「じゃあユキあんたは?」
「私は・・・兄と共に行動がいいです・・・」
まるでハムスターのように両手をスリスリとしながら言うユキに対し、ギンザンは
「却下だ」
即答だった。兄貴なのに冷たすぎだろ、おい。
「わかりました・・・なら一人でいいです・・・」
なんというかこう、初めて会ったときは素っ気ない態度だったが、一緒に行動するにつれ照れ屋でぶりっ子気質なのか?このユキと言う女は・・・。
そう考えながら俺は紳士的に手を上げ、
「いや、ここは私が・・・」
と言うと、アキがこう言いだした。
「あんたは私と行動した方がいいわ」
「ええ?でも大丈夫なのですか?」
「大丈夫でしょ?」
「でも・・・」
アキは真顔で返答したが、ユキが兄貴と一緒じゃないとロクに行動できないのは知っているのか?
それが災いして、俺は警察署で偉い目にあったのだが。
「まあ、それはおいおい話すわ。レイは私と行動よ、いいね?」
「イエス、マイマスター」
俺はまるでSF映画に登場する悪役のような機械音のような声で返事した。
「それなら行くわよ」
アキの合図と共に、4つのグループは迷路に続くと思われる4つの入り口の前に立った。
そして、広間の入り口から見て俺とアキ奥の右側、ギンザンは手目側で、スターベアーが左側の手前、ユキが震えながら左奥の入り口に入った。
俺はユキの事がどうも心配で、迷路を進みながらアキに尋ねた。
「なあ、ユキを一人にしていいのか?」
するとアキは、
「ああ、実は警察署を探索中、ギンザンから色々聞いたのよ。妹のユキは兄がいないと何もできない子だからってね」
なるほど、ギンザンから聞いていたのか。
「だから、この状況だし、この際兄に甘えるのを卒業させようと思ってね」
「ギンザンはオッケーしたのか?流石に了解なしにやるのはマズいと思うが」
「了解なら得ているわよ」
意外な返事に俺は少し黙ってしまった。
「ギンザンも頭を抱えていたらしいわよ、甘え癖があるせいで仕事すら出来ないらしいから」
なるほど、ギンザンも色々悩みはあるんだな。
どうやらその事情を知っているアキはあえて突き放したのだろう。
アキはこう見えてと言ったら失礼なのだが、意外としっかりしているところがあるのだなと思った。
「ところで、世間話するのはいいけど、油断は禁物よ。いい?」
「ええ、まあ」
と俺は何も考えずに歩いていると、片足の感触が奪われたような感覚に陥ったと同時にアキが俺の片手を引っ張った。
「だから油断は禁物って言ったのに!!!」
下をよく見ると、真っ暗な落とし穴となっていた。
いや、それはただの落とし穴ではなく、底にはなんと無数の針があり、辺りにゴブリン達の着ていた服やカバン、それに槍などが落ちていた。
「危な!!!」
俺はあと一歩で串刺しの落としに落ちていた所だったが、アキはなんとか俺を引っ張り上げてくれた。
「私と行動していなければ死んでいたわよ」
「ですね・・・」
俺は心底アキと行動してよかったと感じた。
ユキなら落とし穴にビビって、俺が串刺しになっても悲鳴を上げていても放置して逃げていただろう。
「この迷路には数々の罠があるから注意しないと」
「そうね。でも、あまり心配しなくてもいいかもしれませんよ?」
「え?なんで?」
「落とし穴を良く見てください」
俺とアキは落とし穴の底を見ると、そこにはボブ軍団のゴブリン達の服などがある。
「ああ、なるほど」
「ボブ軍団のゴブリン達が一度ここを探索して全滅しているのです。ですので、ゴブリンの装備品があれば近くに罠があるという事ですね」
「なるほど。あんた、意外とやるわね」
「おかげさまで」
アキは少し笑っていた。
「さて、先に進むわよ」
アキは落とし穴を避け、スタスタと迷路の中を歩きだした。
迷路は意外と単純な構造なのか簡単に宝箱の前に着いた。
「意外と簡単ね」
だが、俺は少し違和感を覚えた。
これがノーマンの作ったダンジョンゲームなら必ず裏がありそうだ。
それに、鍵のない南京錠。これも怪しい。鍵がないならなぜ宝箱がある?
そう考えていると俺はある結論に至った。
そう、これは罠だ。
そして、俺はこう言った。
「その宝箱には近寄るな、罠だ!!!」
「え?」
その時、宝箱が勝手に開き中から巨大な手が出てきた。
「うわ!!!」
アキが振り向くと、巨大な手は既に目の前まで迫っていて、アキはなすすべもなく捕まれた。
「痛い!!!」
「い、今助けます!!!」
俺は背中にかけていたショットガンを手に持ち構え、アキの身体を鷲掴みする巨大な手に標準を合わせた。
だが、手はフラフラと動き、なかなかうまく標準をあわせられない。
「レイ、無理に狙わないで!!!」
「でも・・・」
巨大な手はアキを宝箱の中へ連れ去ろうとフラフラ動くのを止め、手を少し上に向けた。
「今だ!!!」
俺は巨大な手の手首標準を合わせ、引き金を引いた。
すりと、緑の血液を流しながら、アキを離し、痙攣しながら宝箱へと戻って行った。
「危ないところでしたね」
「ええ、助かったわ」
俺はすぐさまVRウォッチを起動し、他の3人に連絡を取った。
「ああ、ええっと。スターベアー、ギンザン、ユキ、聞こえますか?」
ウォッチから三人の声が聞こえた
「なんだ?」
「宝箱は罠だったので、近寄らないほうがいいです」
「はいよー」
三人はまだ宝箱に近づいていないのか、普通に返事した。
ボブのメモを読んだ時、誰一人として戻って来なかった。なるほど、確かに、迷路に宝箱が目の前にあったら疑いもなく近寄って開けたくもなるわな。全滅して当然だな、こりゃ。
まあ、無事で何よりだと考えていると、ギンザンからこう連絡が来た。
「おーい、一つ言いたい事があるのだがいいか?」
「はい、なんでしょう?」
ギンザンは何か見つけたのか、こんなことを言ってきた。
「迷路のどこかに隠し文字があるから、赤外線ライトで壁や床を照らして矢印の通りに進んでみろ。アルファベットが出現するはずだ」
「わかりました」
俺は通信を切ると、アキが俺に近寄り。
「なんだったの?」
「ギンザンから通信がありまして、どうやら赤外線ライトで壁や床を照らすと矢印が出るとか」
「矢印?」
アキは首を傾げていた。
「どうやら矢印通りに進むとアルファベットが出現するみたいですよ」
「わかったわ、探してみましょう」
すると、アキはVRウォッチに搭載されている赤外線ライトを起動させ、青紫のライトが現れた。
「ええっとこうですか?」
俺も真似して赤外線ライトを起動した。
「そうよ、さて、隠し文字を探すわよ」
「そうですね」
俺とアキは赤外線ライトを壁や床に照らしながら進んでいた。
すると、白い矢印が現れた。
「多分これね」
俺とアキはその通りに進むと、“A”という文字が浮かんでいた。
「これかな?」
「そのようね、ええっと。Aか」
隠し文字のAは一体なんなのか・・・。
おそらく他の迷路には違う文字が現れるのだろう。そう考えた。
「とりあえず戻りましょう」
「そうね」
俺とアキは戻ろうと文字の書かれた壁に背を向けた時、壁からノイズが走りだした。
「ねえ、まさかとは思うけど・・・」
「そのまさかのようね・・・」
俺とアキは嫌な予感がした。
そして、その予感が的中した。
壁はノイズと共に巨大な蛇に頭に変化し、俺たちの方へと迫って来た。
「やはり無事に返してはくれないようだな」
「そのようね」
俺とアキは一目散に走り出した。
矢印とは逆方向へ走り、迷路の入り口へと目指した。
蛇は迷路を破壊しながら俺とアキを追い回してくる。
そして、俺とアキはなんとか蛇を振り切り、迷路から脱出した。
迷路から脱出し、大広間に戻った俺とアキの前にギンザンが突っ立っていた。
「無事だったか?」
「ええ、なんとか」
ギンザンは両手を伸ばし、息切れしながら尻餅ついている俺とアキの手を引っ張り、立ち上がった。
「隠し文字は見つけたか?」
「ええ、隠し文字はAでした」
俺は隠し文字を教えると、
「そうか、俺は“H”という文字だった」
「“H”ですか・・・?」
俺とアキは少し頭を悩ませた。
俺とアキが見つけた文字が“A”で、ギンザンが“H”・・・。訳が分からん。
まあ、二つだけではまだ何とも言えないよな。
しばらく待っていると、広間の入り口から見て左手前の入り口から息を荒くしたスターベアーが戻って来た。
「おう、お帰り」
ギンザンがニヤつきながら手を振ると、
「お帰りじゃないわよ・・・」
「随分息切れが激しいな」
「誰のせいだ、誰の・・・」
おそらくスターベアーも隠し文字を見つけた後、例の蛇に追いかけ回されたのだろう。
「あの、隠し文字は何でしたか?」
俺は恐る恐る尋ねると、
「ちょっと・・・待って・・・」
息を落ち着かせたあと、
「ええっと、確か“D”だ」
「“D“ですか?」
「うん・・・」
スターベアーは体を伸ばし、深呼吸をしていた。
「アキさん、HとA,そしてDで何か思いつきますかね?」
俺はアキになにか思いつくか聞くと、
「う~ん、多分英語の単語なのは変わるけど、4つの内3つ変わっているから幾つかありそうだけど」
「なら手当たり次第南京錠に入力してみましょうよ」
「してもいいけど、違った場合のリスクが高そうなのよね」
確かに、アキの言う通りだ。
ノーマンの奴がそんな事を許すはずがない。というか許さんだろうな、しかも俺たちの様子をどこかで見ていても可笑しくないだろうし。そう考えた俺はこう答えた。
「ならユキさんが戻るまで待ちましょう・・・」
俺は妥当な返答を行ったとき、左奥の迷路から大きな悲鳴と共にユキが戻って来た。
「ああ、お帰りなさい」
「怖かったよ~」
ユキは顔をぐちゃぐちゃにしていて、目から涙を流し、鼻水をたらしていた。
「よくやったな妹よ」
ギンザンはユキを抱きしめた。
「兄さん・・・」
「あ~、感動の再会という奴かな?」
スターベアーは呆れていた。
「あの~、感動の再会中申し訳ございませんが、隠し文字はなんでしたか?」
俺はユキに尋ねると、
「ああ、ええっと。確か“R”です」
「“R”ということは」
俺はアキの方を見ると、
「多分南京錠の文字は“HARD”ね」
「やっとここから出られるのか」
「そのようね」
俺とアキ、スターベアーとギンザンは奥の扉にある四つの南京錠に文字を入力した。
そう、答えは“HARD”だ。
入力し終えると、南京錠は外れ、扉が開いた。
扉が開くと、俺たち5人はまるでブラックホールに吸い込まれるかのように扉の先に広がる空間へと吸い込まれた。
気が付くと俺は校舎の門前に居た。
「なんだ?ここは・・・」
俺は辺りを見回すと、青白い空間、目の前には校舎がそびえたち、まるで閉鎖空間のような静けさで、ゾンビの徘徊する世界と比べると、また違った意味で不気味だった。
しかも、俺の周りには誰も居なくなっていて、他の4人はどこへ飛ばされたのか分からない。
同じ世界ならいいが、最悪別の世界にいる可能性もある。
そう考えた俺は立ち上がり、単独で校舎へ入る事にした。
俺は校舎の門に近寄ると、勝手に開き、まるで入ってこいと言っているかのようだった。
俺は不気味さに圧倒されながらも校舎の生徒玄関と思わしき大きな入り口に入ると、VRウォッチからノイズが走り、小さな画面の先にはノーマンが映し出された。
「お前は!!!」
「やあ、ここまで来るとはやるね~」
「そうかい、それはどうも・・・」
「君、女の子の癖に冷たいねー、そんなんじゃモテないよ」
知るか、というか中身男だけどな。
「あっそーですか。それで、仲間はどうした?」
俺は適当に答えた後、他の4人について聞くと。
「ああ、君のお仲間かい?大丈夫、同じ世界にいるから会えると思うよ。まあ、生きていればの話だけどね」
「それはどういう意味だ?」
俺はノーマンの挑戦的な発言にイラついていると、
「さあね、その内わかるよ。あ、そろそろ僕が用意したゲームの説明をしたいのだけどいいかな~?」
「ゲーム?なんだ?」
早く説明しろ、このマスク野郎と思っていると。
「この校舎のどこかに僕のいる空間につながる扉があるのだけど、その前にまず僕が校舎にスターチップを隠したからまずそれを見つけてもらうよ。そうだな、三つ以上集めたら星たちが僕のいる空間を導くから。無事辿り着いたらこの仮想空間から出してあげるから」
なるほど、用はこの校舎のどこかにスターチップとやらが隠されていて、最低三つ集めればマスク野郎のところへ行けるのだな。いいだろう。その挑戦、受けようじゃないか。
「あ、後。ここまでたどり着いた土産に良いこと教えてあげるよ」
「良い事とは一体なんだ?」
俺は今に出もこのマスク野郎をぶちのめしたい気分で声耐えると。
「この校舎にいる生徒には気を付けな。それと、星については光を当ててみれば分かるさ」
そう言い残すと、一方的に通信を切りやがった。
「校舎の生徒には気を付けろ、と光を当ててみる・・・か」
俺はこの言葉の意味が良く分かっていなかった。
まあ、こんな深夜の学校に生徒なんていないだろうと考えていたからな。
光を当ててみれば分かるか、なるほど言いヒントだ。
俺は暗く、青白くなった校舎の中を探索した。
校舎はかなり広く、スターチップを見つけるにはかなり骨が折れそうだ。
それに、ノーマンの言っていた生徒に遭遇しないよう祈りながら進むしかないな。
そう考えながら俺は左手に懐中電灯を持ち、右手にハンドガンを構えながら校舎を探索していると、かすかにノイズが走る音が聞こえた。
「ん?なんだ?」
丁度理科室のドアにライトを当てた時、ノイズの音が聞こえた。
試しに入ってみると、実験テーブルが何台かあり、棚には試験管やビーカーが並んでいた。
「なんだ・・・気のせいか・・・」
気のせいだと思い理科室を出ようと振り向くと目の前に人体模型があった。
「うわ、ビックリした・・・」
俺は心底驚いたが、まあ、学校の怪談でよくある手口だと考えるとそこまで怖くなかったが、なんとなく懐中電灯の光を人体模型に当てていると、内臓むき出しの丁度胸のところにノイズが走り、歪んでいた。
「ん?まさか・・・な・・・」
光を当て続けていると、心臓があるであろう人体模型の胸に赤い星のマークが現れた。
「ああ、そういう事か・・・」
俺はなんとなく察してしまい、人体模型の胸のパーツを外し、心臓を取り出すと、中には金色に輝く星のバッチが隠されていた。 おお、くわばらくわばら・・・。
スターチップを取り出すと、ちょっとしたら人体模型が動き出すのではと心配になり、ゆっくりと心臓を戻し、胸のパーツを元に戻した。
まあ、心臓返せー!!!と叫びながら追いかけられても困る、いや。むしろこっちには銃があるから追いかけてきてもショットガンで粉々にするだけだ。
まあ、そんな物騒な事をしなくてもいいよう、パーツを戻し、俺は理科室を後にすると、二階へ続く奥の階段から足音が聞こえた。
「誰ですか?もしやアキさんですか?」
おそらく俺は怖かったのだろう、足音のする方へと声を掛けてしまった。
すると、階段から降りてきたのはテニス部に居たらおそらく男子に人気ものになりそうな青髪のポニーテールの女子生徒がこちらを見つめながら降りてきた。
「あの・・・誰ですか?」
「・・・・・」
「え?」
その女子生徒は口を開き何かを離しているようだが、早口過ぎてしかも声も小さいので、何を言っているのか分からなかった。
だが、この時俺はノーマンの言葉を思い出した。
校舎の生徒には気を付けろ・・・。
まさかと思い見ていると、一瞬にして俺の目の前に現れた。
「あの・・・」
その時、その女子生徒の手には軍隊で使われるようなサバイバルナイフがあり、俺の身体を突き刺そうとしていた。
俺は女子生徒の攻撃を間一髪で回避し、居たい思いせずに済んだ。だが、女子生徒はすかさずナイフの刃を振り回し、切りつけようとしたが、俺もアホではない。
手に持っているハンドガンでナイフを打ち、ナイフは放射線を描きながら飛んで行った。
この女子生徒はただの生徒ではなく、どうやら俺を殺す為に現れた何かなのだろう。
俺の顔を無表情で見ながら、
「私はヒューマノイドB(ベータ)、侵入者は即刻排除する」
ヒューマノイドBは手からナイフを出現させ、俺に切りつけてきた。
「危ないな、コイツ!!!」
可愛い顔して中々怖い。
そんな悠長な事を思っていると、後ろから銃声が聞こえた。
「アキか!!!」
振り向くと、そこには緑色ロングヘアーの女子生徒が機関銃を構えて俺を狙っていた。
「今度は別のヒューマノイドかよ!!!」
「私の名はヒューマノイドG(グリーン)」
名前などどうでもいい!!!
気が付くと、目の前はナイフを持ったヒューマノイドがいて、後ろには機関銃を持ったヒューマノイドがいるとかなりヤバい状況になった。
「これは詰んだのでは・・・」
心底あきらめかけたその時、俺の後ろから銃声が聞こえた。
俺はついに死ぬのかと思っていると、
「こっちよ!!!早く!!!」
後ろを振り向くと、ヒューマノイドGはアキに頭部を撃たれ床に倒れた。
「アキ!!!」
「早く」
アキはナイフを持っているヒューマノイドBに発砲したが、銃弾を食らいながらも俺に迫ってきた。
「クソッ!!!」
俺は動かなくなったヒューマノイドGをまたぎアキの方へ行くと、二人で二階へと逃げた。
俺とアキは2年1組の教室に逃げ込んだ。
「なあ、あいつらはなんだ?」
「あれはヒューマノイドよ」
「それは分かっている」
「おそらく奴らはノーマンの差し金かもね」
俺はアキの顔を見て、
「もしやノーマンのこの校舎の生徒って・・・」
「あのヒューマノイドのようね」
どうやらアキも俺と同じ通信が入ったようだ。
「なあ、この学校って元はなんのゲームだったんだ?」
「多分だけどギャルゲーの世界かもね」
ああ、なるほど。
つまり、あの女子生徒は元々恋愛シュミレーション用のモデルだが、ノーマンのせいでサイコパスガールに変貌したようだ。全く趣味の悪い奴だ。
胸くそ悪い気分で教室にいると、偶然アキのライトが中央の机に照らされると、ノイズが走り、歪みだした。
「ん?まさか・・・」
俺はその机に懐中電灯を照らし続けると、赤い星のマークが現れた。
「まさかここがスターチップの隠し場所だったとはね」
「知っているのか?」
「ええ、もう二つ見つけたわ」
「早いな・・・」
俺はアキに感心していると、
「早く取りなよ、今回は譲るわ」
「ありがとう」
アキに言われるがままにスターチップを手にすると、廊下から笑い声が聞こえた。
「みーつけた」
教室に現れたのは先ほどのヒューマノイドBが笑いながら突っ立っていた。
ヒューマノイドBの身体にはアキに撃たれた弾痕が複数あり、普通の人間だったら立っていられないくらいだった。
「逃げるわよ!!!」
俺とアキは一目散に教室から出て、廊下を走った。
入っていると、廊下は別れ道になっているのを見たアキは、
「二手に分かれるわよ!!!いい?」
「わかった!!!」
俺は左側、アキは右側と二手に分かれた。
俺はアキと別れひたすら前へと走っていると、光輝く木の扉が見えた。
「とりあえずあそこに!!!」
俺はその光る扉のドアノブに手をかけ、勢いよく開けると、そこは学校ではない別の部屋があった。
「え?ここは・・・」
部屋はどこかの家のリビングのようになっていて中央にテーブルがありゲーム機が散乱していて、壁側にはソファがあり、外は南の島のようなヤシの木、地平線の向うには水色の海が見え、まるでリゾート地のような場所だった。
「ここは一体・・・」
俺はリビングに居ると、二階から丸渕眼鏡にパーマをかけたもしゃもしゃの白髪で小太り、胸のところに流星マークのバッチを付けたおじいさんが訳のわからない機械を手に降りてきた。
「ああ、ええっと」
おじいさんは俺を見ると子供のようなきょとんとした表情で俺を見ていて、しばらく時間を置いた後、口を開いた。
「ええっと、君は誰かな?ここは特殊なアクセス権がないと入れない世界なのだが」
「ああ、ええっと、どこから説明すればいいのか僕も分からないのですが」
「ほう、時間ならたっぷりある、言いたまえ」
おじいさんは壁にあるソファに座り込み、俺は事の経緯を話すしかなかった。
「で、訳の分からない学校でヒューマノイドという奴から逃げていたらここへ出たのです・・・」
「ふむふむ。なるほど、なるほど」
本当に分かっているのかこの爺さん・・・。
と半信半疑で説明し終えると、おじいさんはこう言いだした。
「どうやらそのノーマンという輩が仮想空間に存在するふゲーム世界をハッキングした影響でわしの“オアシス“にも影響が及んだようだな」
なるほど、さっぱりだ。
まず、オアシスってなんだ?
そう思いおじいさんに尋ねた。
「あの、オアシスってなんですか?」
「ああ、この空間というよりこの世界の事だよ、本来はわしが特別に用意したアクセス権を持つ者しか入れないように同化している人工知能にも命令しているのだが、今回ハッキングの影響で偶然にも君が迷い混んだと言う事だ」
人工知能と同化しているだって?
よくわからんが、俺はこう言った。
「つまり、俺・・・私は迷子になったという事ですか?」
「そのようだね。後、さっき俺と言いかけたが・・・君、本当に女性かな?」
どうやらさっき俺と言いかけたのを聞き逃さなかったのかおじいさんは現実世界の俺について聞いてきた。
まあ、アキもいないし、隠しても仕方ないと思った俺は。
「すみません、外見女性なのですが、現実世界では男です」
「やはりな、そういうのは趣味なのか?」
おじいさんは少しいやらしそうな目で見てきたので、
「いえ、アバター設定している時に不具合が起きて、気が付いたら女性になっていたのです」
「それは災難だったね、ああ、そうそう、コーヒーでも飲みたまえ」
テーブルにはコーヒーがあり、香りが香ばしく、良い匂いだ。
「いただきます・・・」
俺はコーヒーカップを持ち、一口飲んだ。
香ばしい香りに濃厚な味は何とも言えない旨さだ。
「美味しいです」
「だろ?最高級ブランドであるブルーマウンテンのデータを収集して作ったのだよ」
おじいさんは無邪気な子供の様に自慢し、笑い出した。
俺もその姿を見て笑い出し、まるで意気投合した友達のようになっていた。
俺はおじいさんと笑っていると、体にノイズが走った。
「え?これって・・・」
「あー、時間切れのようだね」
「時間切れ?」
まるで訳が分からなかった。
「そうだ、わしに同化しているAIがどうやらアクセス権の復旧を終えたのだろう」
「それなら俺は・・・?」
俺が言うと、おじいさんは悲しそうな面持ちで。
「ここに留まっていれば君は消えてしまうだろう、だが、先ほど君が来たドアから出られるよ」
「でも、ノーマンと言う奴がハッキングしているのですが・・・」
「その件は安心したまえ、後でモロボシ君に連絡するから」
「モロボシ君?」
誰だ、それ?親友か?
「早く出た方が良いぞ、大丈夫だ、後はモロボシ君が何とかしてくれるから安心しなさい」
「わ、わかりました」
俺は訳も分からないまま身体が消える前に来たドアを開き、おじいさんのいる部屋を出ようとした時、俺は思わず。
「あの、お名前だけ聞いてもいいですか?」
「ああ、すまないな。わしはジョン・ハワードだ」
「ハワードさん、ありがとうございます」
名前を聞き、部屋を出た。
その時、ジョンは微笑み、手を振っていた。
俺は部屋を出て、またあの校舎の廊下へと戻っていた。
またあの空間へ行けるなら今度はゆっくりとジョンと世間話を聞きたいものだ。そう考えていると、横から俺の袖を引っ張る者がいた。
「どこへ行っていたのよ!!!」
袖を引っ張っていたのはアキだった。
「ええっと、そのドアに入ると、別の部屋につながっていたんだ」
「は?何言っているの?そこは資料室よ?」
アキに怒鳴られ、俺は上を見上げプレート確認すると確かに資料室と書いてあった。
しかも後ろを振り向くと、木のドアではなく、教室にあるような金属性のドアだった。
「あれ?さっきは木製のドアだったのに・・・」
「あんた、大丈夫?寝てたんじゃないの?」
いや、確かに木のドアがあり、そこを開けるとジョン・ハワードさんのいるオアシスという世界につながっていたのだ。
俺は何が起きたか分からず、キョロキョロしていると、今度は地鳴りが聞こえた。
「今度はなんだ?」
「今は説明をしている暇はないわ、行きましょう!!」
俺はアキに手を引っ張られながら走った。
地鳴りのなる校舎でアキに連れられ状況を理解出来ずにいると、
「あんた、本当にどこへ行っていたのよ!!!」
「ええっと、リゾート地のような所に居たけど・・・」
俺は手を引っ張られ、アキのペースに合わせて走っていると、
「リゾート地?何よそれ?」
「説明すると長いのだけど、資料室のドアが光っていて、しかも木製だったの」
「あんた、やはり寝ぼけているのね?」
アキは俺を目の前にし、そしていきなりビンタした。
「グハぁ!!!」
「目さました?」
覚ましたも何も痛すぎで泣きそうです。
「いい?逃げるわよ!!!」
俺は腕をアキに引っ張られながら廊下を走っていると、後ろからあのヒューマノイドBの笑い声が聞こえた。
俺は必死に目を閉じ、アキと共に走っていると急にアキが急ブレーキをし、俺は反動で壁に投げ飛ばされた。
「痛いな、おい!!!」
俺は思わず怒鳴ると、
「ごめん、行き止まりだった・・・」
「ええ!!!」
俺は後ろをみると、校舎の白いタイルが目に入った。
「どうするんだよ!!!これじゃああいつに追いつかれ・・・」
俺は立ち止まっているアキの顔を見ていると、
「みーつけた」
等々ヒューマノイドBが俺とアキの前に現れた。しかも、かなり近距離で、動けば容赦なく刺されるだろう。
「くっ・・・」
アキは残りわずかしかないマシンガンを構えていた。
「やめとけ、殺されるぞ」
「でも、どうするのよ?」
アキに言われると、俺は周りを見た。
だが、ヒューマノイドBは血の匂いのするナイフを右手に持ち、笑いながら迫っている。
しかも、この最悪な事態に追い打ちをかけるようにヒューマノイドBの後ろから紫色の髪の女子生徒がやってきた。
「あら、ヒューマノイドB。ここにいたのね?」
「あら?ヒューマノイドP、今この二人を血祭りにあげるところよ」
ヒューマノイドBは右隣に移動したヒューマノイドPに言った。
「もうやるしかないわ」
アキはマシンガンの引き金を引き、銃口から激しい銃声が聞こえた。
銃弾はヒューマノイドBの頭に当たり膝をつくも、痙攣しながら起き上がろうとしていた。
「もう起き上がらないで!!!」
アキは今用いるマガジンを全て使い、ヒューマノイドBを狙い発砲し、床に倒れ動かなくなるのを確認したヒューマノイドPは手をかざし、アメーバのように液体になったヒューマノイドBを体に吸収した。
そして、ヒューマノイドPは手から紫色の光の球体を放って来た。
「目障りね、あなた」
そう言いながら手に浮いている光の球体を勢いよくアキの方に投げた。
俺はアキの身体を掴み、球体を回避した。
「もう、邪魔しないでよ」
ヒューマノイドPは退屈そうな表情で、攻撃を回避した俺とアキを見ていた。
すると、ヒューマノイドPは一息つき、深呼吸した後、俺とアキを見て。
「もうこの姿飽きちゃったな~、よし」
勢いよく鼻息を吐くと、ヒューマノイドPは女性の姿から青白い人型の姿になり、気が付くと体長40メートルの巨人になり、行き止まりの通路は崩れ落ち、校舎の外にいた。
「なあ、あれは何だよ!!!」
「驚いている暇はないわよ!!!潰されるわよ」
その巨人は手を大きく地面にぶつけ、校舎に入った俺とアキは外から地鳴りと共に崩れる音が聞こえてきた。
「なあ、一体何が起きたの?」
「ああもう!!!あのヒューマノイドの正体じゃないの?」
「あれがか?」
アキは立ち止まり俺に言った。
「多分ヒューマノイドを倒したりすると現れるのね、早く行くわよ!!!」
「え?どこへ?」
するとアキは俺の手を引っ張り走り出した。もう一つの手には三つのスターチップはあり、スターチップは光の線を発光していて、まるで俺とアキを導くかの様だった。
「三つ手に入れたのか?」
「うん、あなたがどこかへ行っている間に手に入れたのよ、レイの分もあるわ」
「あ、ありがとう・・・」
走りながら感謝した。
「感謝するなら生き延びてからよ!!!」
「そうね・・・」
俺はアキと共に走っていた。
しばらく走っていると、校長室というプレートの前に立ち止まった。
「ここ?」
「そのようね」
光の線は校長室の扉の先まで伸びていた。
「行こう」
アキは校長室のドアを開けると、辺り一面に包み込まれた。
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