第三章
さて、ボブ軍団のボスを俺のお色気作戦で倒した訳だが、彼が消えた場所にあったメモの切れ端を拾い、また新たな謎に直面した。
ボブ軍団はこの署内にただふんぞり返っていた訳ではなく、予め署内調査と、脱出経路を探していたのだ。
そのメモの内容を簡単に説明するとこうだ。
1つ、署内にホールにある女神像をから脱出できる。
2つ、女神像を動かすには三つのメダルが必要。
3つ、その先はダンジョンゲームとなっている。だが、誰一人帰ってくることはなかった。
との事だ。
それに、俺に関して言えばまだまともな武器すら手に入っていない状況で、流石に拳銃一丁と護身用銃だけじゃあ経験豊富なゲーマーたちが4人いようと心細い。
そんな事で俺たち5人は署内を探索する事になった。
「ええっと。それで、どこから探索しますか?」
俺たち5人はホールで円になって集まって会議していた。
「う~ん、五人一斉はかえって危険かもね二手に分かれましょう」
「二手にですか?」
俺はアキに聞いた。
「この署内には沢山のクリーチャーが潜んでいる上、狭いから、5人同じ部屋を探索するとかえって危険という事よ」
「ああ、なるほど」
俺はアキの説明に納得した。
アキの言う通りだ。周りを見回した限り、この警察署は五人一斉に探索するにはちょっと狭いかもしれない。
「五人一斉の方がクリアするには楽だと思うのだが」
そこへギンザンが割り込んできた。
「そう思うでしょ?でもそこが落とし穴よ。狭い通路に五人も居たらいざ逃げるという時に逃げられないし、クリーチャーに倒される率が高いわ」
「なぜそう言い切れる?」
ギンザンは少々イライラしていた。
「それで一度パーティーが全滅しそうになったからよ」
ギンザンも今の状況を理解しているのか、アキの説得を聞き入れ、結局二手に分かれて探索することになった。
「ところでどうやって分ける?」
「え?くじ引きよ」
アキの返答をきいて俺は困惑した。
「いや、そこはきちんと会議してだな・・・」
「してもいいけど、もう仮想空間に来て3日経っているのよ」
「え?」
それを聞いた俺は慌てて、左手首に着いているVRウォッチを確認した。
すると、確かに、ログインしてからはや三日経っていた。
「そうよ、7日以内にこの世界から出ないと私達死ぬようなものなのよ」
そうだ、確かノーマンという変なマスク野郎は、期限は7日と言っていたな。
という事はもう3日、いや、厳密に言うと、3日と半日経っているという事か。全く、仮想空間に居ると時間感覚が完全に狂いそうだ。
「だから、長々と会議している暇は無いわ、それにこの署内をクリアした先は未知のダンジョンゲームらしいし、ここで時間を取られている場合じゃないわ」
アキはホールに散らばっている木片を集め、3つ色を塗り、それを上手い事混ぜ俺を含む4人に差し出した。
ギンザンもユキ、スターベアーもしぶしぶくじ引き、探索するメンバーが決まった。
第一メンバーは俺とユキ。
第二メンバーがアキとギンザン、スターベアーの三人となった。
てか、大丈夫か?このメンバーで・・・。
俺とユキは東側を探索する事になり、アキとギンザン、スターベアーの三人は西側を探索する事になった。
俺とユキはまず、二階へあがり、東側のドアを確認した。
すると、ドアの先は個室になっていて、空き缶が散らばっていた。
個室の奥にはまたドアがあり、奥へ行けるようだが、どうやら鍵掛かっているのか取っ手を握ってもドアをピクリとも動かなった。
「ここはダメですね、別の場所から探索しましょう」
俺はユキを見ると、ユキは何も言わずにホールへと戻ってしまった。
「ああ、ちょっと!!!」
俺は急いでホールへ戻ると、ユキはこちらを振り向き、黙って見ていた。なんだ?こいつは。
「あの、待ってくださいよ~」
俺は息を切らしながら追うと、
「遅いですよ、もう少し早く歩いてください」
「ええ~・・・」
いや、あんたが早すぎるだけですって。
まるでスケートをしている様にユキは床を滑るように歩き、俺はすこし小走りしないと追いつかないほど速い。
そんな不満を胸にホールの一階に降り、正面玄関のすぐそばにある東側の通路につながるシャッターの前に着いた。
「どうやらここから開けるしかないみたいですね」
俺はシャッターを持ち上げようとするもビクともしない。
その様子をみたユキは辺りをキョロキョロさせ、俺の左隣へと移動し、何かのレバーを下した。
すると、シャッターは鈍い音を立てながら上にあがり、やっとかがんで通れるくらいだった。
「ここから通るしかないですね」
「そうですね」
なんというか扱い辛い。
人見知りなのかギンザンと行動している時とは明らかに態度が違った。
「あの、ユキさん」
「な、なんでしょう?」
ユキはまるでほっといてくれと言わんばかりの無表情で俺を見た。
「いや、なんでもないです・・・」
俺は黙って身をかがませ、シャッターの隙間から東側の通路へと入った。
通路に入ると真っ暗で、床には血がこびり付いていて、正直嫌な予感がプンプンした。
俺は事前にアキから貰っていたライトを付け、辺りを照らした。
すると、嫌な予感が的中した。
入った先は廊下になっていて、辺りには血しぶきの跡や、なにか引っ掻いた跡があり、その辺に先ほど逃げていた武装ゴブリンの死体が山ほどあった。
中には天井からぶら下がっている武装ゴブリンの死体があり、俺が少し歩きだすと、天井裏に何かいるのか雄叫びを上げながらどこかへ移動した。
「ユキさん、い、行きましょう・・・」
俺はシャッターの方を振り向くと、既に後ろにユキが居て、俺の腕を強く握っていた。
「ユキさん?」
「あ、あの。私苦手なんです・・・」
「え?」
俺はユキの言葉を聞いて驚いた。
「苦手なんです、こういう怖いというかホラーな世界・・・」
マジか・・・。
しかも今に出も泣き出しそうなこの表情がめちゃくちゃ可愛い。
そんな事を考えていると、ユキが涙目で。
「は、早く進んでください!!!」
「わ、わかりました・・・」
俺はしぶしぶライトで暗闇を照らしながら進んだ。
所持している銃は残り5発しかなく、まず弾を探さない事には不利だ。
しかもユキは人見知りでこういうホラーが苦手なのでおそらく戦力外だろう。
そう考えた俺は仕方なく銃を構え、ゾンビ一体くらいならなんとか対処できるようにした。
不幸中の幸いというのか廊下には俺の持っているハンドガンに対応した9mm弾が幾つか落ちていて、見つけるや迷わず拾い、廊下の奥に進んだところにあるオフィスらしき場所に着いた時には既に所持弾数30発となった。
決して多くは無いが、これならゾンビ程度ならやり合える。
そう考えながら武装ゴブリンを食べるのに必死になっているゾンビ共に気が付かれないよう、ゆっくり歩き、辺りを探索した。
オフィスには5体くらいゾンビが居て、音を立ててバレたら一目散に逃げるしかないだろうと考えていた。
オフィスの奥の部屋へと行くと、赤いメダルが机の上に無造作に置かれていた。
「ひょっとしてこれが例のメダルなのでは?」
「う、うん。早く取って行きましょう」
俺は赤いメダルを手に取り、早くホールへ戻ろうとした時、二階から大男がいるのか太鼓を叩くような大きな足音と、金属の様なものを引きずる音が聞こえた。
「ん?なんだ?」
俺は上を見ていると、ユキが俺の腕を指で突いていた。
「な、なんです?ユキさん・・・」
俺はユキが指さす方向を見ると、先ほどの足音のせいでゾンビたちは俺たちの存在に気が付いてしまったのだ。
「ここは戦いますか?」
ユキの返事は無い。
一応宇宙人である訳だし、レーザー光線の出る銃や光線剣などを持っているはず。と思っていたのだが・・・。
「ユキさん?」
振り向くとユキは耳を押さえながら震えていた。ダメだ・・・こりゃ。
そう思った俺は、
「これは、逃げましょう・・・」
俺はユキの手を引っ張り、一目散にオフィスを出て、廊下を走った。
すると、走る音に反応するかのように二階の足音が徐々に俺たちの方へと向かってきていた。
そんなことを気にせず、シャッターのところまで戻り、隙間からホールへと戻ると、アキとスターベアー、ギンザンが目の前に居て、アキは俺たちに銃口を向けていた。
「おい!!!」
「二人とも避けて!!!」
アキの言われた通り俺とユキはそれぞれ左右へ避けると、二階から壁を破壊する音が聞こえた。
なんだ?何が起きた?とおもい呆然としていると、二階から3メートルほどの巨漢で、頭に布がかぶされていて、しかも釘が何本も打ち付けられた化物が俺やユキの目の前に落ちてきた。
しかもその化物の手には巨大な斧があり、刃には血のりがついていた。
「早く離れて!!!」
グレネードランチャーを持ったアキの指示通り、、俺とユキは化け物から離れた。
離れたのを確認すると、アキはグレネードランチャーの引き金を引き、化け物に炸裂弾を放った。
炸裂弾は化け物の身体に命中し、大きな爆発音と共に膝をつき、動きが鈍くなった。
アキは再びグレネードランチャーに弾を入れ構えると、化け物は息を吹き返し、巨大な斧を勢いよく振り回し、アキ達を吹き飛ばした。
「おい!!!大丈夫か!!!」
俺は吹き飛ばされたアキに声を掛けた。
壁に強打したアキは気絶していまし、化け物はアキにとどめを刺そうと足を引きずりながら巨大な斧を引っ張っている。
俺はすぐさま立ち上がり、アキの元へ走った。
アキの元へ行くと落ちているグレネードランチャーを持ち、目の前に現れた化け物に銃口を向けた。
「ええい、これでも食らえ!!!」
俺はもう何も考えていなかった。
いや、考えている余裕などなかった。
アキを救う為、俺はグレネードランチャーの引き金を引き、炸裂弾を放った。
炸裂弾は化け物に見事命中し、化け物は斧を落とし、あお向けになって倒れてしまい、血を流して死んだ。
「た、倒したのか?」
無我夢中でしかも一瞬の出来事だったので何がどうなったのか理解できなかったが、少し時間が経っても化け物はピクリとも動かなかった。
どうやら倒したようだ。
俺はアキと共に壁にもたれ、ようやく落ち着きを取りもどした。
「大丈夫ですか?レイさん」
俺の目の前にユキが現れた。
「ああ、大丈夫だ」
「よかった、アキさんは無事ですか?」
「ああ、どうやらさっきの攻撃で気絶したようです」
「そうですか・・・」
俺はギンザンとスターベアーの様子が気になり、
「ところで君の兄さんとスターベアーは?」
「あの二人なら大丈夫です、丁度今気絶から覚めたところですから」
ユキが後ろを見ると、頭を抱えたギンザンとスターベアーが俺の元へ駆け寄ってくれた。
「イタタ・・・、大丈夫か?」
「ええ、なんとか」
「そうか、今日は飛んだ災難だな」
「ですね」
ギンザンはヘラヘラ笑っていた。
「ところでアキちゃんは大丈夫か?」
スターベアーはアキの様子を見て言った。
「ええ、気絶しているだけですから」
「そう、フフフ・・・」
スターベアーは微笑んでいた。
「な、なんですか?いきなり・・・」
「いや、その様子をみるとまるで姉妹みたいだなと」
俺のとなりで寄りかかっているアキを見てスターベアーは姉妹のように見えたのだろう。
「まあ、そう見えても可笑しくありませんよ」
「だな」
すると、気絶していたアキが目を開けた。
「イタタ、ごめん」
「大丈夫ですか?」
俺はアキに肩を貸しながら言うと、
「うん、大丈夫よ」
「そうですか、もう肩を貸す必要はありますか?」
「もう離して大丈夫よ」
「そうかい・・・」
俺はアキの手を離し、アキはふらつきながら立っていた。
「ふう、まさかあの攻撃を食らうとは・・・」
「あの、さっきの化け物はなんですか?」
俺はあお向けで倒れている化け物に視線を向けた。
「ああ、あれは処刑者よ」
「処刑者?」
「シティ・オブ・デットのボスキャラみたいな奴よ、警察署をうろついていたとは想定外だったわ」
アキは頭を手でさすりながら、
「西側を探索している時、奴は東側へ向かっていたから心配してホールへ戻ったらレイとユキがシャッターから出てきたと同時に現れたのよ」
「なるほどね」
どうやらアキ達三人は西側を探索中に処刑者を見かけて、しかもそいつが俺とユキが探索していた東側へと行ったから戻って来たとの事だ。
アキ達が戻って来なければ俺とユキはなすすべもなく処刑者に殺され、ログアウト出来ずに死んでいただろう。
そう考えると、アキには感謝してもしきれないな。
「あの、ありがとう」
俺は思わずアキに礼を言ってしまった。
「こちらこそありがとう」
「いえいえ、おれ・・・私は当然の事をしたまでです」
危ない、一瞬俺と言う所だった。
「俺・・・?まあいいや、でも処刑者を倒すなんてすごいわね」
処刑者を倒した事がそんなにすごいのか?
俺には分からなったが、
「そうですかね?」
「そうよ、初心者は一度倒されても可笑しくないくらい強いんだから」
どのくらい強いのかさっぱりだが、どうやらアキの中ではすごいことになっているらしい。
「そうなんですか?私はそこまで強いとは思いませんでしたが・・・」
「ええ・・・嘘・・・」
アキの表情はまるでハニワのようなポカーンとした表情だった。
「まあ、アキさんのグレネードを使ったので・・・」
「え?」
アキは落ちているグレネードランチャーを拾い、装弾数を確認すると、
「ええ・・・使ったの?」
「はい・・・無我夢中で・・・」
すると、アキは火薬が空になった薬莢を持ち俺に投げつけてきた。
「このアホが!!!」
「ええ!!!」
俺は顔の前に飛んでくる薬莢をギリギリのところで回避し、アキの方を振り向いた。
「最後の一発だったのに・・・」
アキは涙目だった。
俺とアキは殺されそうだったのに、なぜ俺が怒られなければならんのか・・・。納得いかないが、ここは堪えて。
「ええっと、ごめんなさい」
「はあ・・・いいわよ」
ものすごく不機嫌だった。
「それより、メダルは手に入ったのですか?」
俺は不機嫌なアキに視線を合わせないようにしながらスターベアーとギンザンに言った。
「ああ、黄色いメダルなら手に入ったぞ、そっちは?」
「赤いメダルなら・・・」
「残るは緑のメダルか・・・」
お決まりパターンだが、意外と最後のメダルが見つかりづらいものだ。
そう思って身構えていると、
「緑のメダルは見つけたけど鍵がかかっているのよ」
「そうなんですね」
今度は鍵か・・・。面倒な物が増えたとおもっていると、スターベアーはポケットからカードキーを出し、俺に渡してきた。
「探索中に武器庫を見つけたんだが、お前さんに丁度よさそうな武器が保管されていたから後で行くといい」
「あ、ありがとうございます」
俺は半信半疑でカードキーを受け取った。
なぜ半信半疑かというと、スターベアーは丁度よさそうな武器といいながら実は大した武器ではないという子供みたいな事をしそうな性格だからだ。
もし、そんな事をしでかしたらタダじゃおかん。そう思いながら俺はカードキーをサイドバックにしまった。
「これからどうしますか?」
俺は他の4人を見ると、
「とりあえず最後のメダルのカギを探そう」
急にアキが元気になった。
「そうですね、鍵のありかは?」
俺はスターベアーとギンザンに聞くと、
「メダルは武器にあったんだけど、暗証番号を打ち込まないと開かねえのよ」
ギンザンは舌打ちしながら言った。
「暗証番号ね・・・」
スターベアーとギンザンなら武器庫の保管している棚くらい簡単に破壊しようなのに・・・。
そんな都合のよい事を考えてながらボブのメモを眺めていると、紙の隅に小さく書かれた四ケタの番号が目に入った。
「4875・・・」
俺はもしやと思いギンザンに暗証番号について聞いた。
「あの、その暗証番号って何ケタですか?」
「ええ?たしか四ケタだったような・・・」
なんというか、あっけないな。
ボブは全ての謎解きをしていたようで、メモを読めば全て謎が解けるようになっていた。
俺はメモを持っていながら全く理解していなかったようだ。
なんのために分担して探索したのか・・・。これこそ時間の無駄というものだ。そう思いった俺はギンザンに、
「それなら今すぐ武器庫へ行きましょう、暗証番号も分かったので」
「本当か!!!どうやって分かった?」
「ええっと・・・」
俺は何も言わずにメモを見せた。
ギンザンは目を細くしながらメモを眺めると、
「なあ、今すごく時間を無駄にした気分だ・・・」
「そ、そうですね・・・」
ギンザンは深いため息をついた。
「早く行くか・・・」
「は、はい・・・」
俺が返事すると、ギンザンはホールの中央にある女神像のところにいるアキやユキ、スターベアーの方を見て、
「ああ、ちょっと武器へ行ってくるから見張り頼んだぞ」
「はーい、いってらー」
ユキは俺と行動していた時とは明らかに違う態度で返事していた。
俺はギンザンの跡を追い、血まみれのオフィスを抜けた先にある武器庫へ着くと、ギンザンは立ち止まった。
「ここが武器庫だ」
武器庫は物置ほどの広さしかなく、壁にある棚には弾丸や銃が入っていたのか何かを立てかける金具や、小さい引き出しがあり、奥にはスターベアーが言っていたカードキーが必要な棚があり、その棚にはショットガンらしき銃が保管されていた。
「もしやスターベアーが言っていた丁度よさそうな武器って・・・」
「ああ、奥にあるのがそうかもな」
俺は早速奥の棚へ移動し、サイドバックからカードキーを取り出し、差し込み口にカードキーを差し込んだ。
すると、ロックが解除され、棚の扉が開いた。
俺は棚に立てかけてある銃を手に取った。
「これってどこかで見た事あるな・・・」
銃を眺めていると、
「ウィンチェスターM1887ショートバレルだな」
俺が手に入れた銃はターミネーター2で登場したショットガンで、引き金の下にレバーがあり、そこで使用した薬莢を飛ばす事の出来る銃だ。
「なるほど、これはありがたいな」
俺はスターベアーに感謝したと同時に、半信半疑になっていた自分に反省した。
しかも隣の棚には緑の箱があり、その中にショットガンの弾が20発ほどあり、弾も補給できた。
強力な武器を入手した俺はメダルの存在も忘れてはいなかった。
「ところで、メダルはどこにあるんだ?」
「ああ、それなら入り口側からみて右の棚だ」
ギンザンの証言通り、右の棚を見ると、緑色に輝くメダルが透明の引き出しの中に保管されていた。
俺はショットガンを背中にかけ、サイドバックからメモを出し、暗証番号を打ち込んだ。
すると、鍵が開くような音と共に引き出しが開き、メダルを手に入れた。
「ようやく三つ揃いましたね」
「そうだな」
三つのメダルが揃い、後はホールへ戻るだけだと思っていたが、こういうホラー演出には行きはよいよい、帰りが怖いという言葉がある。
そう、こう言う時に限って何かが起きるというもの。
そうと知らずに俺とギンザンはメダルが揃い、後は戻るだけという軽い気分でいると、オフィスから天井から何かが落ちてくる音が聞こえた。
「ん?なんだ?」
俺は暢気に構えていると、ギンザンの目つきが変わっていた。
「チッ、これはちょっとヤバイかもな」
「え?一体なにが?」
俺は状況が飲み込めずにいると、次の瞬間、かすれた鳴き声と共に武器庫のドアを引っ掻く音が聞こえた。
どうやらドアの向こうに化け物がいるらしい。
しかも、鳴き声は一つではなかった。
「どうやら奴らに気が付かれたようだな」
「奴らって?」
俺は何が何だかサッパリだった。
「アキとスターベアーとの探索中に見かけた奴だ、アキ曰くレッドブレインという化け物らしい」
俺はまた嫌な事を聞いてしまったようだ。
「そのレッドブレインってなんですか?」
「脳がむき出しで鋭いつめを持った化け物だ、かなり動きが速く厄介な敵らしいが、視力が無いから音を立てなければ襲われないと聞いた」
ギンザンはドアを睨み、右手にはいつでも刀を抜けるよう鞘に手をかけていた。
「でも音を立てなければいいという事は、このまま部屋で黙っていればいいのでは?」
「そういう訳にもいかないらしい」
「なぜですか?」
俺は頭を傾げていると、
「さっきの解除音で俺たちの存在に気が付いたみたいだな」
「ええ・・・」
どうやらカードキーを使った時の解除音と、暗証番号で引き出しを開けた時の音で署内を徘徊していたレッドブレイン達に気が付かれてしまったらしい。
なんてこった、これじゃあホールに戻れないじゃないか。
そして、ついにそのレッドブレインという化け物がドアを突き破って入って来た。
脳がむき出しで、真っ赤な筋肉細胞がむき出し、しかも鋭い爪をもった怪物がギンザンの方へ飛びついてきた。
だが、ギンザンはその攻撃を回避し、刀でレッドブレインの胴体を真っ二つにした。
「うわ・・・」
真っ二つに切られたレッドブレインの下半身が俺の足元に落ちてきた。
「声を上げるなよ、奴ら目は見えないが音には敏感だから、足音にも気を付けろ」
ギンザンが小声で言ってきた。
どうやら悲鳴や足音に注意しながらオフィスを抜けようと考えたらしい。
ギンザンは抜き足差し足で武器庫を出て、オフィスの様子を見た。
すると、天井には2匹のレッドブレインが辺りをうろついていて、まるで獲物がいないか確認するかのように首をキョロキョロしていた。
「気が付いていない、行くぞ」
ギンザンは小声で俺に指示し、レッドブレインに気が付かれないよう細心の注意を払い、オフィスへと足を進めた。
抜き足差し足で俺とギンザンはホールに出られる扉へと向かうのだが、音を立てないようにするというのがとても難しく、悲鳴を上げないよう俺は手を口元に当てながらギンザンの後ろについて行った。
レッドブレインの声を我慢しながら進んで行き、ホールまであと少しという時、扉の前にレッドブレインが落ちてきて、まるで扉へは行かせないという意思表示をしているかのように思えた。
「どうします?」
俺はギンザンに小声で聞くと、
「仕方ない、やるか・・・」
ギンザンは音を立てないよう刀を抜き、レッドブレインが後ろを向いた時を狙って刀を刺そうとしていた。
おして、レッドブレインが後ろを向いたその時。
ギンザンはレッドブレインの首を突き刺した。が、レッドブレインは突き刺れたと同時に大きな鳴き声を上げ、もう一匹のレッドブレインが猛スピードでこちらへ向かってきた。
もう一匹のレッドブレインがギンザンに飛びかかろうとした時、俺は思わずショットガンを手にし、レッドブレインの頭部を狙い発砲した。
ギンザンに飛びかかろうとしたレッドブレインは頭部を破壊され、一方手前で倒れた。
「何やっているんだ!!!」
ギンザンは思わず怒鳴った。
「い、いや。危ないところでしたので・・・」
「確かに危なかった・・・けど・・」
ギンザンは俺の後ろを見て唖然としていた。
「おい、早く逃げるぞ・・・ヤバイ事になった」
「え?」
俺は振り返ると、オフィスには2匹いたはずのレッドブレインが5匹に増えていた。
「に、逃げましょう」
俺とギンザンは襲われるのを覚悟でホールへと出られるドアへ直行した。
俺とギンザンはドアを蹴り開け、ホールへ出ると急いでドアを閉めた。
俺とギンザンはホールの方を振り向くと、アキとスターベアー、ユキは正面玄関から押し寄せる大量のゾンビに囲まれていた。
「二人とも遅いわよ!!!」
アキはマシンガンを撃ちながら俺の方を見た。
「何が起きた!!!」
「見れば分かるでしょ!!!ゾンビ共が入って来たのよ」
アキが怒鳴ると、スターベアーが嘆くように。
「どうやら長居し過ぎたようだな」
「そんな愚痴は後にして!!!メダルは?」
アキは再び俺の方を見ると、
「ああ、ここにある!!!」
「それならはやくこっちに来て!!!残りのメダルはハメておいたから」
女神像を見ると、赤いメダルと黄色いメダルは既に取り付けていて、地下への扉が見えていた。
「わかった!!!」
俺とギンザンは目の前にいるゾンビたちを倒し、アキ達の元へ駆け付けた。
「早くメダルを!!!」
俺はアキの指示通りに女神像へと行き、緑のメダルを取り付けた。
すると、固く閉ざされていた鉄の扉が開き、俺とアキ、そしてギンザンとスターベアー、ユキはその中へと入った。
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