第6話 変化

 バンド練習の後、メンバー全員を、スタバに誘った。

 皆に、先日のライブの「つんつんしている発言」を、実はまだ気にしている事を伝えた。わざわざ伝える事かな? と思ったりもしたけれど、心の底にずっとあるので、云ってみる事にした。


「私、ずっとあの事を気にしているの。ちょっと、正直、他人の意見が怖くなってる」


 メンバー間の空気が、微妙になった。そりゃそうだろう。数週間前の事を、未だに引きずっていて、今さらわざわざ云うなんて。

 この空気、どうしようかと思っていたら、美夏が口を開いた。


「実は私も、怖いんだ。職場の人に陰口云われたって平気なんだけれど、うちらのバンドを見たお客さんの意見は、正直怖い。」意外だった。


 美夏いわく、ライブ直後は深く考えなかったけれど、後から重く考えるようになったらしい。そして、他のメンバーも、似たような事を思っていたらしい。


「自分だけが気にしすぎなのかなって思って、云えなかった」誰かが云った。


 結果的に、全員同じ気持ちだった。メンバー全員で話し合った、バンドの事を。

 せめて、見ている人を不快にはさせないライブをしたい。その勢いのまま、明日と明後日のスタジオを予約した。


 そして、そのまま私のメンタルの弱さの話になった。


「絢未は一人で抱え込むから、こっちが入れなかった。いい機会だから、話し合おう」美夏が云った。


「私も昔、辛い時期があった。良い言葉に救われた、その本を絢未に貸す」七瀬が云った。


「絢未ちゃんは凄くお洒落だよね。もっとメイクやファッションの事を考える時間を多くしても良いと思う。もっとお洒落になっちゃうよ」くるみがにこにこして、云った。


 とりあえず私は被害妄想をやめて、好きな事を考える時間を増やす事にする。そう決めて、私たちのスタバ会はお開きになった。


    ○


 一人車で帰る途中、私の胸は熱くなっていた。とても重厚な時間を過ごせた。

 帰宅したら、姉と梢が泊まりにきていた。私は、梢と話す時間を増やした。

 梢の発言は、自分の気持ちと、疑問が主だった。

 梢と話していると、気付かされる事が多い。年をとるにつれて言葉を覚える度、どれだけ言い訳が多くなっていることか。

 梢に合わせて、私の思考もポジティブになっていった気がする。


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