第三十二話『対階層守護者』

「ど、どうする?」


「見つけてしまった以上行くしかありませんわね。初回討伐報酬をみすみす他の方に渡す訳にはいきませんもの」


「だね!じゃあまず準備と大まかな立ち回り決めとく?」


「ですわね」


そこから私たちは話し合いを始めたの。


まず、持ち物の確認。


これはHPとMPの回復アイテムの所持数確認とアリシアが少し心許なかったから少しお裾分け。


次はポジション決め。


まず基本的には私がメインアタッカー兼おまけ程度のバッファー。


次にライムがタンク兼おまけ程度のヒーラー。


エルは万能型だからサブアタッカー兼バッファー兼ヒーラー兼おまけ程度にデバッファー。


アリシアがサブアタッカー兼バッファー。


「何と言いますか…ライムちゃんとエルちゃんはやれる事が多いんですのね?」


「まあライムはレアエネミーらしいし、エルに至っては神鳥だからね」


「そうでしたわね。そうなると立ち回りを絞るか万能型にするか悩みますわね…」


「まあ、エルならその場その場で臨機応変に立ち回れると思うよ?母親の経験?みたいなの引き継いでるらしいし」


「なるほど、それでしたら万能型で立ち回っていただきましょう。ライムちゃんの回復はどの程度なんですの?」


「エルよりは少ないかな?なんかイメージパラディンみたいな感じ?」


「わかりやすいですわね」


それからは前に戦ったロックタートルの物理が効きにくい相手だった場合の話になったの。


私があんまり役に立てないからタンク…というよりは攻撃させないように頑張りつつ、付与術で軽いバッファー。


ライムは後方からのサブアタッカーで光剣に集中してもらって数の暴力で押し切る。


エルはさっきと一緒で万能型だけど魔法攻撃を多めに立ち回る感じに。


アリシアは前衛でメインアタッカーに。


「この様な感じでしょうか?」


「そうだね。私があんまり役に立てないのが少しもどかしいけど…」


「タンク役も重要な役割ですわよ。そもそも生産職で従魔術師のフウ様が戦いの役割に入っているというだけで前提条件がおかしいんですのよ?」


「あはは…」


「フウはすごいの!」


「うん。ままはすごいんだよ!」


「ありがと」


こうやって言ってもらえるのは嬉しいね。


物理防御対策どうにかしないとなー。大鎌術でなんか魔法攻撃覚えられたらいいのになー。


ロックタートルは少ないダメージ与えていたけど、完全に無効化されちゃったらどうにもならないもんね。


ボス終わったらなんか考えないとなー。


「そうですわ。ライムちゃんとエルちゃんの魔法攻撃性のはどのくらいなんですの?」


「んー。ライムの方が上かなー。エルの魔法攻撃も十分ありがたいけどやっぱりサポート性能によってる気がする」


「そうしましたら、やはりわたくしがメインになりそうですわね。わたくしに務まるでしょうか…」


「大丈夫だよ。アリシア強いし、私より全然知識とかも豊富だもん!」


「そう言って頂けると嬉しいです」


「じゃあ、そろそろ行こっか!」


「「はーい」」


「ええ、準備は完璧でしてよ!」


そこから私とアメリアですっごい重い扉を開けてボス部屋の中に入ったの。


中は真っ暗で何も見えないし、なんかカサカサ音してるし…まさかGとかじゃ…


「フウ様も灯りを!」


そうだ考えてる場合じゃなかった!


「わかった!」


二人でライトを使い周囲を照らすと目の前に現れたのは上半身半裸の女性で下半身巨大蜘蛛の所謂アラクネだった。


「アラクネは素早い上に炎以外の魔法が効きにくいんですの!わたくしたちに炎攻撃はありませんし物理で押し切るしかありませんわ」


「わかった。最初に話した方だね」


「わかったのー!」


「はーい!」


まず私が付与術でバフ、エルの神鳥の加護でバフ神鳥の威圧でデバフ、アリシアが力の舞と回避の舞、速度の舞と防御の舞それぞれでバフ。


ライムが中央から、左右からは私とエルがアラクネに向かって突撃。


エルは後方からウォーターランスとアイススピアでアラクネの行動を阻害して、ライムの光剣がアラクネの退路を断ってそのままライムが先制攻撃を仕掛けて、反撃してきたアラクネの攻撃を防いでくれたの。


その勢いに乗ったままアリシアが扇でアラクネの片側の足を物理でそのまま攻撃したら、アラクネが体勢を崩したからそこを狙って私が跳躍と飛翔で真上に飛んで重力操作を駆使した渾身の一発を当てる。


そんな感じでこっち側の連携が見事にはまってアラクネの糸を使った攻撃に拘束、爪と牙の攻撃なんかも凌いで普通に勝っちゃった。


「あら、もう終わりかしら」


「お疲れさまー。まあ一階層のボスがオークだったしこんなものじゃない?」


「フウお疲れー。楽しかったねー!」


「ままお疲れさま!」


「ええ。現段階での話ですが、このゲームは階層守護者…ボスよりも探索やフィールドボスの攻略、ユニーククエストなどに重きを置いているのかもしれませんわね。まあこの先改装守護者が強くなって攻略難易度が上がる可能性は大いにありますが」


「なるほどねー勉強になるよ!あ、このあとはどうする?三階層まだ実装されてないから進めないけど」


「わたくしドロップアイテムの確認をしましたら落ちますわ」


「あ、そうだね。私確認忘れてた…。えっと…?」


私が手に入った種類はアラクネの外殻、アラクネの毛、アラクネの爪、アラクネの背甲、アラクネの鋏角、アラクネの生糸、アラクネーの高級機織り機、最後に階層初クリアボーナスの鍵。


あれ?


「アリシアどうだった?」


「ええ、外殻、毛、爪、背甲、鋏角、眼、あとは初クリアボーナスの鍵が落ちましたわ」


「全部アラクネって前についてる?」


「…?ええ」


「なんかさアラクネじゃなくってアラクネーの高級機織り機ってのが落ちたんだけど何かわかる?」


「ああ、それでしたらアラクネって元々神話では人の姿でしたのよ。当時は機織りの技術が凄かったそうでそのせいで他の神々と色々あって蜘蛛の姿になったとされているんですの。その神話に基づいて当時の名前の機織り機がドロップしたのではないかと思います」


「よく知ってるね。なんか可哀想だけど、悩みが解決できたから良かったよ。ありがと」


「いえ、礼には及びませんわ」


その後、私がアリシアの使わない素材を買い取った後そのまま別れの挨拶をしてアリシアがログアウトしたの。


私もポータルを使って街に戻ってからその日はログアウトした。


………


ちなみにこれは後日譚なんだけど、私たちが攻略してしばらくしてから私の所に機織り機の買取希望が殺到したの。


しかも、種類が高級だけじゃなかったみたいでその下に上級、中級、下級、ボロボロっていう階級があったみたい。


私は高級を持ってるからコレクションがわりに各一個ずつ買取だけして、他はギルメンに希望者がいれば買取って感じにしたの。


しばらくそんなことが続いたんだけど、ある日最高級機織り機の買取希望があってそれを買い取った時に節目としてギルドとして買取をしない旨を公表してようやく機織り機騒動が落ち着いたの。

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