第十三話『呪われし者』

「まっかせるのー!」


「だ、誰だよそいつ!?どっから出てきやがった!?」


「とりあえずその話は後よ!とりあえずこいつ倒さないと!」


「ねえ、ライム。光剣操りながらみんなの回復出来たりする…?」


「もっちろん!余裕なの〜♪」


「じゃあライムそれでお願い!タイミングとかわからなかったらアヤカに聞いて!」


「わかったのー!」


「アヤカ!ライムに回復任せたから全力でやっちゃって!」


「…っと、りょーかい!」


「俺らはどうしたらいい、さっきまで客観的に見てたフウが支持してくれ!」


「えっ!?私!?」


何がどうして私になったの!?


客観的にって言っても私ゲーム経験そんなにないよ?


って言ってもみんな戦闘で忙しそうだしやるしか無いのかな…


「フウ!フウなら出来るよ!」


「っちょ、アヤカ!?はぁ〜。わかった、少しだけ時間ちょうだい!」


どうしよ、まずみんなのメイン戦闘スタイルからだよね。


まず私は支援、ライムは全距離魔法火力と回復、アヤカは近距離魔法火力と回復、レイナは遠距離物理火力、ファイスは中距離高速物理火力、ジュドラは近距離物理火力+壁って感じかな。


…ただの脳筋パーティじゃん…


ライム呼ぶ前は私とレイナはほとんどダメージ入ってなかったから、これしかないよね!


「ライムはさっきの指示通りに!アヤカは近距離から、ファイスは中距離から、レイナは遠距離からもう全力でやっちゃって!あと、アヤカはライムが手に負えなかったり見落とした回復補って欲しいかも!ジュドラは壁しながら攻撃お願い!」


「りょうかいなの〜」


「難しいこと言うね〜、まあゲーマーの腕の見せ所だしやってやりますか!」


「りょうかいっす!」


「わかったわ!」


「それくらい出来なきゃギルメンに合わせる顔がねぇ!」


これで倒せなかったら責任重大だけど、私だってパーティの一人なんだからそれくらいの責任負わないとね。


………


「ちょっとまずいな〜、そろそろMP切れるわー…」


「ライムも危ないかもー…っ!?みんな広域麻痺毒ブレスが来るの!」


「なっ!?」


まずい!今そんなの直撃したらダメージだってまずいのに、麻痺毒なんて食らったら全滅しちゃう…


なにか、何か私に出来ること…


そうだ!


「《スキル広域付与 状態異常耐性強化(中)》!」


「みんな!防御耐性!!」


うっ、毒だけ入っちゃったか…みんなは!?


「毒だけだった人は麻痺入った人回復するまでカバーして!」


「すまん、一番入ったらまずい俺が麻痺入っちまった…」


「そういうの後にして、とりあえず耐性立て直さないとね〜っと!」


「私もクリスタルダガーあるから少し参戦するね!」


「おっけー!麻痺入ってないのうちとフウとファイス、あとはライムかな。ファイスとライムで麻痺入った二人にダメージ入らないように立ち回って!うちも出来る限る限りヘイト稼いで壁やるから!フウはとりあえず死なないで!」


「おうよ!」


「は〜い!」


どうしよう、不意に戦闘しなきゃいけなくなったからすごい緊張する…


でもなんでかすごいワクワクもしてるんだよね。


というかクリスタルダガー何が出来るか試してないよね…


まず属性は風属性、魔力放出って武器の魔力なのか私の魔力なのかどっちなんだろ?


まあ両方やってみるしかないよね!


「えいっ!………」


「何してるの?」


「ねえアヤカ、武器の魔力放出ってどうしたらいいの?」


「自分の魔力を武器に込めるだけだよ!おっとっ…!」


「ありがとー!」


私えいっ!とか何恥ずかしいこと言ってんだ…


何か作る時みたいに体に流れる魔力を物に流し込む時と同じ感じで武器にこんな感じで…


「すごい、圧縮された空気が剣の先から伸びてる感じ?周りは風強いしどうなってるんだろ?」


「フウ!?それって魔剣だったの!?」


「魔剣?ってなに?」


「はぁ〜、とりあえず後で説明するから今はそれでやっちゃって!」


「う、うん」


ライムが剣持って戦ってる時みたいにこんな感じかなっ!


「ちゃんとダメージ入ってるね!そのままやっちゃって!」


「りょーかいっ!」


おぉー!これって私ちゃんと戦えてるよね!?


まだちょっと怖いし、慣れてないからどう動けばいいか全然わからないけど楽しいかも!


「フウー、一緒に戦うの楽しいねー!」


「そうだね!ライム、今度戦い方教えてくれる?」


「いいよー!ライム、フウの先生するー!」


そんな会話をしていたフウ達を見ていた麻痺組はというと…


「ものすごくほのぼのしいわね…」


「ああ、強敵と戦ってる感じは全くないな」


「まあ、二人が楽しいならいいんじゃないかしら?」


「死んじまったらそこまでなんだがな…」


「でも、逆に私達は見習うべきなのかもしれないわね」


「どういう事だ?」


「だって、私達も昔はああやって楽しくやってた時期があったのに今じゃ攻略攻略って必死でしょ?」


「確かにそれはあるな…」


「ごめん、私はそろそろ動けるようになったから先に行くわよ」


「ああ、すまん。俺もすぐに追いかける」


………


「こいつ強過ぎだよ〜…」


「だね…ブレスしてから全然ダメージ与えられてる気がしないよ…」


「ごめんなさい!回復したから私も参戦するわ!」


「お、ようやっと復活かな!意外と早かったね!?」


「姉さん、お帰りなさいっす!!」


「遅くなってごめんなさい!ジュッくんのもう少しで回復すると思うわ!」


これで私の出番も終わりかなー。


「わりぃ、遅くなった!」


「これで全員復活かな!全員で一気に畳み掛けるよ!」


「わ、私も!?」


「当然でしょ!」


「わ、わかった」



………



「………」


「俺は死を覚悟した…」


「安心して、私もよ」


「流石にうちも覚悟はしたね〜」


「俺もっす…」


「ライムも危なかったかもー」


確かに、ここまでメンバーが完璧に揃っててピンチになるほどの敵だったって事だもんね。


「あー、うちさ。みんなに1つ謝らなきゃいけない事があるんだよねー…」


「どうしたの?」


「えーっと、実はファフニール別のゲームでも戦ったことがあるんだけど、今回同様そのゲームも逸話を忠実に再現されてたの。それで攻略法なんだけど、本来ファフニールって回復魔法をあえてかけて解呪してから戦うものなんだよねー…。それで倒せば本来通りの報酬は貰えるんだけど、解呪前の状態で倒すと理不尽なほど強いからそのゲームだと特別報酬が入るんだよ。だからごめん、自分の欲でみんなを危険に晒しちゃって」


アヤカとジュドラが互いになにかを確認したかと思ったら。


「ごめんんなさい、アヤカに言わせてしまって…」


「すまん、実は俺らも知っててそのまま戦ったんだ…」


「フウやライム、ファイスには悪いことしちゃったわね」


「いいよ、倒せたんだし!」


「ライムも楽しかったから、大丈夫ー!」


「いい報酬貰えるのは嬉しいっすからね!」


「とりあえず私はフウに素材渡しておくわ、契約もあるしね!」


「そんならうちも〜」


「あ、俺も渡しとくっす!」


「お、おい!待て待て、その契約ってのはなんだ!?」


「ただの専属契約だよ〜」


「ええ、素材を渡して作って欲しいものがある時、直して欲しい時に協力してもらうって感じよ」


「なっ、おい!フウはそれでいいのかよ!?」


「フウ、普通の人ならこの反応が正解よ」


「あ、うん。流石にわかってきたよ…」


「ジュっくんは装備作ってもらって気づかなかった?」


「なにを気づ……いや、待てよ…って!確かに受け取った時が前夜祭真っ只中だったから考えもしなかったが、言われてみれば異常だな…」


「異常って…」


「少ししか残らないはずの素材で全身防具に武器、アクセサリーまでおまけに付きって事は失敗なしって事か!?加えて評価も平均で8を超えてやがる…フウ、お前どんなチート使ったらこんな事になりやがるんだよ!」


「どんなって私普通にやってただけだよ?それをチートって言われるのはなー…」


「わりぃ、頭に血が上ってた…そのー、すまん。あんなこと言った後であれなんだが俺も契約していいか?」


「大丈夫だよー」


「一件落着だねー!とりあえず初回討伐ボーナス貰っちゃおっか!」


「いくわよ、せーの!!」


「うち、金護竜の竜血だってー」


「私も同じね」


「俺も竜血だな」


「ライムも〜」


「私、龍の書Ⅰってやつ。龍語が話せるようになるらしいよー。全部で10まであるらしいよ」


「フウらしい物が出たね〜」


「あれ、ファイスは?」


「あ、姉さん。俺、金護竜の呪宝って名前のアクセサリーでしたね」


「「「!!!!!」」」


「どうしたの?3人とも驚いて」


「??フウー、呪宝ってなあにー?」


「そのままの意味なら呪われた宝って事かな?」


「竜血は1時間HPとMPが500増えるみたいだけど、呪宝はなんて書いてある?」


「あ、えっと…使用回数制限無しのアクセサリーで5分間竜人化か1分間竜化出来るらしいっすね!」


「なっ…!?」


「またデタラメな物出したわね…」


そんな感じでファフニール討伐も終わって奥の部屋にあったポータルで外に出た。


「予想はしてたけどやっぱ山頂だね〜」


「これは無駄に時間食いそうね…」


「ちょっといいっすか?呪宝試しに使って乗って降りちゃうのはどうっすか?」


「お、名案じゃねーか!!」


「それは確かにありだなー」


「でもどんな竜になるんだろうね?」


「「「あっ…」」」


「貴方達はもう少し考えましょうよ…何か説明欄に書いてないの?」


「お、書いてあったっすね!えっとー、ある一定種の中から自分の想像した物に一番近い種になるらしいっす!」


「これは間違いなく飛竜だな」


「間違い無いわね」


「じゃあいくっすよ!!!……」


「「「「っっ!!!?」」」」


「おぉー!これは面白いっすね!時間ないんで乗っちゃってくださいっす!」


「ライムは戻ってよっか!」


「はーい!」


「とりあえず街の前まででいいかしら?」


「そうだな」


「私もそう思う!」


「じゃあしっかり掴まってて下さいね!」


すごい!私達、飛んでるよ!


私語彙力あんまり無いから上手く伝えられないけどとにかくこれは最高だよ!


景色すごいし、ちゃんと空気抵抗無いしすっごい快適かも!


「これは凄いわね!」


「最高に気持ちいいね〜」


「街が見えたんでそろそろ降りるっすよ!しっかり掴まってて下さい!」


………


『ヘレヴィラの街へようこそ』


街を囲う様に壁が張り巡らされ、アーチ状にくり抜かれた壁の上にそう書いてあった。


「ここが今回のイベント唯一の街か、1つしか無いだけあってでかいな」


アーチを潜るとそこは大通りを中心として様々な店舗や住宅の立ち並ぶ西洋風の街並みが広がっていた。


高い建物は無く、高くても3階建ての建物しか見当たらない。


「ね、ねえ!あれって…」


「まじか!」


「ほらやっぱり!生きてるって言ったろ?」


「きゃー!トップギルドのマスターが勢ぞろいしてるよ!」


「まじ神!スクショしとこ!」


なんかアニメとかでよくある騎士団の帰還みたいに人で列が出来てるんだけど…


「いや〜、予想はしてたけどやっぱこうなるか〜」


「しょうがないっすよ、しばらく洞窟に籠ってたんでサーチもされなかったみたいですし」


「にしてもここまで来るとやりづらいわよね」


「これじゃまるで芸能人だね…」


「とりあえず宿屋っすかね?」


「私ははアイテム整理して外でちゃった方がいいと思うけどなー。宿屋に居る間に噂でも広まって余計に人増えても面倒だし…他のみんなはどう思う?」


「私はファイスに賛成して休みたい所だけれど、この状態の街に長居するのも難しそうって考えるとやっぱり私もフウに賛成って所かしら」


「俺は休めりゃどっちでも構わねー。まあ、宿屋の方が休みやすいって考えりゃファイスに賛成ってとこか」


「うちもフウに一票かなー」


「確かにちゃんと考えればフウの言う通りっすね…」


「じゃあとりあえずアイテム整理していいとこ街から出ちゃいましょ」


「そうだね〜。ポーションとかの必需品もうちのパーティには天才がいるしね〜」


「あぁ、サバイバル環境においてこれほど頼れる人材はそうそういないからな…」


とりあえず素材屋に着いていらないものを全員片っ端から売って素材屋の外に出たわけ。


まあ予想通り人だかりはまだあったんだけどね?


街を出ようと歩いてたんだけど…


「ねえ、この人だかりはいつまでついてくるのかしら…」


「なんのパレードだよって話だな…」


「それはそうとこの後の行き先は?」


「それなんだけどね〜!さっき小耳に挟んだんだけど、難易度が恐ろしく高い火山があるらしいんだよね〜。しかも入口が2種類あるらしくて、下は普通に入れるらしいんだけど、上は山登りの道中も強いしほとんどHPの減らない門番が居て入れないんだってさー。そこでね!」


「あ!私アヤカがなに言うかわかった」


「俺もだ…」


「うん、ファイスに竜になってひとっ飛びっしちゃえばいいじゃん!ってね」


「確かにそれなら人も振り払えるっすもんね!」


「確かに明暗ね」


「そうと決まれば出発っすね!いくっすよ!」


「え…え!?ファイス様が竜に!?」


「おい、なんだよあれ…」


「あんなアイテムあったっけか?」


「おい、現ファイブトップの4つが集結してるんだぞ?俺らにわからないことなんて一つや二つどころじゃないだろ…」


「あんな化け物連中勝てる気がしねーや…」


「バトルだけで言えばフウには勝てるだろ」


「おい、バカ!辞めとけって!フウのファンクラブギルドに狩られるぞ!」


…ん!?今なんかすごいことが聞こえたような気がする…


ファンクラブギルドってなに!


いや…聞かなかったことにしよ…


………


「近づくにつれて亜竜とか小型飛竜が多くなってきたね〜」


「時間もやばいんでちょっと飛ばすっすよ!」


「お、おい!待て!バカァーーー………」


………


「最後のあれ楽しかったね!」


「どこかの誰かさんは腰が砕けちゃったらしいけどね。ジュっくんったら可愛いんだから」


「もしかしてジュっくんずっと我慢してたのー?」


「う、うるせぇ…止まった状態で高い所は平気なんだが動いてるとダメなんだよ…」


「ジュっくん動けそう?」


「あぁ、問題ない」


「それじゃあいくっすか!」


にしても活火山の火口だけあって暑いよ…


地形ダメージって言うんだっけ?少しずつダメージ食らってるし大丈夫かな?


ん?先に見えるあれが例の入り口かな?


「こりゃまた随分とでっかい扉だね〜」


「両端にいるのってもしかして火竜かしら…?」


「ありゃ、ちょっとばかしまずいな…」


「そうなの?」


「そうっすよ、恐らくっすけどファフニール級2匹って考えるべきっすね…」


「あ、はい…」


いやいやいやいや、、、


どう考えてもダメでしょ!?


あれが2対って…しかもここ天上ないからあの2匹は自由に空飛ぶわけでしょ?


「どうしましょうか、逃げるべきかしら?」


「それは俺も賛成だな…こりゃ勝てる見込みがない」


「そうだね〜確かにイベント期間まだ残ってるのにこんな所で死んじゃもったいないしねー」


でもなんだろ、なんか引っかかるような気がするんだよなー…


「………」


「フウ、どうかしたっすか?」


「ん、気になることがあって…」


「どした〜?」


「あの2匹って飛べるんだよね?」


「そうね」


「ファイスに飛んで乗ってる時も今もそうだけどなんで襲ってこないんだろうなーって思って」


「「「「っっっっっっ!!!?」」」」


「いや、その考えは一理あるな。確かに引っかかる」


「確かに言われてみればその通りね…火竜がここの門番ならもう縄張り…いえ、戦闘エリアに入っていてもおかしくない距離だわ」


『オイ』


うわっ!?


「みんな気をつけて!」


「コチラニ攻撃ノ意思ハナイ。人ノ子ラヨ、コチラへ来テハイタダケナイダロウカ」


「どうしましょうか」


「いや、もうこの際いくしかないだろ」


「ちょっと待って、私行って来てもいい?」


「フウだけじゃ危ないっすよ!」


「大丈夫だよー。私、龍語話せるし!」


「そう言えばそうだったわね…」


「いや、それでもみんなで行こう。うちも何かあったら心配だし」


「わかった」


「んじゃ、みんなでとっとと行こうぜ!」


「急ニ呼ビ出シタリシテ申シ訳ナイ。我ハ火竜ガ一対フレビアト申ス」


「同ジク火竜ガ一対マデルヴァダ。ファフニールヲ滅ボシテクレタ事、感謝スル」


「ソンナソナタラニ願イガアル。コノ扉ノ中ノダンジョン、ソノ最奥地ニイラッシャル我ラガ火竜族ノ焔龍皇 グラデヴィナ様を助ケテ頂キタイ」


《緊急クエスト 焔龍皇の危機》が発生しました


「緊急クエストかー、うちはやるに一票かなー」


「私も!」


「俺も異論なしだ」


「私も異論はないわ」


「もちろんやるっすよ!」


『そういう事なので、ご協力させていただきます!』


『おぉ、そなた龍語が話せるのか』


『という事は龍の書をお持ちなのかね』


『ええ、まあ』


『龍の書は持っている数で内容が変わるものじゃ。大事にしなされよ』


『それでは門を開けるので後は任せたぞ』


『わかりました』


あっ、普通に龍語で話しちゃってた…


「なんか違和感ね…」


「あぁ…」


「そうだね〜。まあ今は進もー!」


「それじゃあみんな!行こっか!」


………


こうしてイベント2つ目のダンジョンが始まった。

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