第6話 お前はいくつだ!

今年で48になる麻友子マユコは、少しの憂鬱そうな顔で信号待ちをしていた。

ランチにスリランカカレーを食べ、会社に戻るところだった。

口先だけのダイエットはタベホ(食べ放題)のナンに包んで美味しく食べてしまった。

今日も食べ過ぎ注意報の鐘は鳴りっぱなしである。


なかなか変わらない信号を待っていたその後ろから、キャーキャー言いながら同僚の紗千サチが来た。

この地球上の何処に居てもうるさいであろう紗千は、声で居場所を教える動物なのだ。


しかし、隣に来た紗千は無言のまま麻友子の顔を見ていた。

こんな事は今まで一度も無かった。

そして2人同時に「どうしたのぉ?」と口にした。

紗千は、私はどうもしてないよ。麻友子がそんな憂鬱そうな顔してるの初めて見たよ。何があったの?

その言葉に麻友子は、何も無いよ。何も無いから憂鬱なんだよ。もう48か〜、結婚もしてない、彼氏も居ない、貯金もない、家も賃貸だよ。私には何も無いんだな‥‥。

そんな風に考えてたら憂鬱になってきてさぁ。48歳って終わってんなぁ〜なんてなる前から考えてたら、どんどん憂鬱さが増してきてさぁ〜。

そんな麻友子に対して、道路の方を指差して紗千言った。

ほら見てごらん。

紗千の指差す方を見ると、ポポポポッと言うカワイイ音で走るバイクが有った。

麻友子が何あれ?カワイイねと言った。

あれ48才だよ。48年前のカブだよ。形はレトロだけど、色変えて楽しそうに乗ってたじゃん。きっと居るよ、ポンコツおばさんが好きな人‥‥たぶん‥‥。紗千は笑顔で麻友子に言った。

麻友子は、ポンコ‥‥たぶ‥‥と声を出さず口だけ動かすことしか出来なかった。

きっと麻友子は、後でさらなる憂鬱に襲われる憂鬱だろう‥‥。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

出表壱 朝野花子 @hanakoasano

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る