第3話 はずだった
おーい、お金の神様!
おーい、金運って奴よ
何処にいるんかいのぉ〜
何処にあるんかいのぉ〜
古いノートパソコンでネットをしながら話す彼
キッチンで料理を作っていた
何ぃ〜なんか言った〜?
ビールかなぁ?
と、お得意の唐揚げを大皿に盛りながら言った
彼はノートパソコンから目を離さずに
違うよぉ〜スゲー物件あったんだけど価格がねぇ〜
3800万円で売ってるんだけどさぁ〜
必要以上にノートパソコンの画面に顔を近づけながら言う
なになに?
山盛り唐揚げを運びながら春華が言った
じゃじゃーん! 今日は唐揚げパーティ!
熱々食べようー
彼が春華の方に振り返ると、口の周りを油でテカらせながらながら、ちゃぶ台に行儀よく座っていた
早く食べよー熱々だよー
春華のその言葉に
そんな行儀よく座って、待ってます見たいな顔してぇ~
口の周りがテカテカしてるぞ
彼は、ノートパソコンを閉じながら言った
春華は歯をチラッと見せながら無邪気な笑顔で
だってー美味しそうだったんだもーん
彼はそんな春華が好きだった
だからこそ二人で暮らせる家が欲しかった
今は小さなアパートに春華が実家から通っていた
このアパートは、彼が学生時代から住む部屋
。家賃は28000円、水道が定額2000円とかなり安い部屋だった
安さ以外取り柄のないこの部屋は、春華と付き合い出してから直ぐに手狭になり、ふたりの新居を探していた
彼は子どもの頃から貯金をし、学生時代には節約に節約を重ね、未だに安アパートに住む節約男子だ
今は貯金が1000万円ある
これだけあれば、結婚式、住宅ローンの頭金、引っ越し費用など、無理無く行ける
はずだった。そう、会社を首にならなければ....。
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