episode 19
「クローノ、指輪貸して」
「はい」
クローノは指輪を外し、レンラに手渡す。
レンラは指輪に力をこめた。
「えいっ」
目をつぶって、念じ続ける。
……だが、指の傷が治る気配はない。
「やっぱりダメだ。この神器、いくら使っても私を認めてくれない」
レンラは笑う。
そして、指輪をクローノに返した。
「クローノ。よろしく」
「はい」
クローノが力をこめると、パチッと静電気のような音がし、瞬く間にレンラの傷を塞いだ。
傷はきれいさっぱり失くなっている。
「とまあ、こんな風に、能力を使うには、まずその神器に認められないといけないんだよね」
「全員が全員、能力を使えるわけではないってことか」
「そうそう。だけど、一生使えないってわけじゃないわ。
普通は使おうとすればするほど、『練度』が高まって、ある地点を超えたら神器に認められるの」
なるほど。
『練度』か。
「能力を使おうと思ったら、
とにかく使おうとすればいいんだな」
「うん。ただ、最終的には『練度』だけじゃなくて、『才能』も必要なんだけどね」
『才能』が必要。
つまり、どれだけ努力しても使いこなせない人間がいるということだ。
どうやら、神器ってのは気まぐれらしい。
「わたくしには『才能』が足りない。この神器のポテンシャルを完全には引き出してやれないんだ。
もし、『才能』のある人間がコレを使ったら、足を再生させることができるかもしれないが……」
いいことを聞いた。
足を再生できる可能性はゼロではない。
この情報を得ただけでも、収穫だ。
問題は『才能』のある人間を用意することか……。
「あの黄色い髪の女の子」
「エルね」
「あの子、強いでしょ。たぶん」
あの時感じた迫力。
あれは、間違いなく強者の迫力だ。
「そりゃ、彼女は
第一位?
知らない単語がポンポンと出てくるな。
まあ、今はいいや。
強いってことなんだろう。
「エルには『才能』があるんじゃないの?」
『才能』があれば、足を再生できる。
だったら、エルが指輪を使えば……。
「あるけど、それはエルの神器に対してのね。
例えばAっていう神器が使えるからといって、Bという神器が使えるとは限らないの」
「……」
俺はここで悟った。
足を再生する。
仮に『練度』を高めて、その神器を使えるようになったとしても、
それに必要な『才能』は相当であると。
「ちょっと難しい話が続いたけど、ようは、神器を使うには『練度』と『才能』が必要ってこと」
「……大体わかった。ありがとう」
ぐう、と腹の虫が鳴った。
昨日から、何も食べていない。
窓の外を見ると、すでに日は落ちかけていた。
夕陽が、全てをオレンジ色に染め上げる。
「ダン。お腹空いたの?」
「うん」
「じゃ、
「かしこまりました」
この後、俺は再びレンラに背負われ、
食堂に連れていかれたのだった。
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