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魔道研究都市ナオスにはクラスが十一個あり、各クラス一校舎与えられている。更には、学生一人一人が研究者の為、学生一人につきに一部屋の研究室が与えられる。また、クラス内の学生同士がコミュニケーションをとるため、同クラスの学生の研究室が同じ建物にある。
『Ω』と呼ばれるクラス。校舎はとりわけ小さめであるが、クラスの人々が集まるミーティングルームは賑わいを見せていた。
天気は快晴。月曜日の午前、生徒は研究や講義を始めている時間帯だが『Ω』のメンバーは生徒会長直々に集合をかけられていた。
静寂の浪が広がり、学生たちは全ての会話を止めた。
期待に胸を膨らませるもの、固唾をのみ緊張するもの、学生たちの反応は様々だが、皆総じて入口の扉を眺める。
ガラリ、と扉が開き、他を圧倒する気配を纏い、一人の学生が入ってくる。
触れると怪我をしそうなほど鋭く精悍な顔立ち。贅肉のない均整の取れた身体。めらめらと音が聞こえてくるほど熱い男で、纏うオーラはまるで戦争直前の兵士だ。
彼の後ろには、学院では見かけた事のない二人の男がついてきている。
片方は、中性的な顔つきではあるが、気高く、上品な面構え。もう一方は、健康的できりりとした顔つき。共通して、鍛えられている様な引き締まった身体で、制服を乱さず着こなしている。
彼らを見て、二人の学生がちょっぴり反応をしたのを横目に見つつ、
「いやー、遅くなってすまんすまん。少しだけ話が盛り上がってな。みんなの大切な時間を削ってしまったことを謝罪する」
前方に立つ男は身に纏うオーラからは、想像できない程崩れた口調で謝罪を述べた。
「そんなことはないです! 会長自らクラスに来て頂けるなんて光栄です!」
知的な顔つきに、男にしては珍しい長髪の学生がそれに答える。どうやら、彼はクラスのまとめ役のようで、胸にリーダーのバッチがつけられている。
「いいよいいよ、俺が遅れて来たんだ。そうそう、
クラスリーダーの伏は会長にそう言われると、単純に嬉しかったのであろう、少し笑みを溢したが、すぐにいつもの知的な顔つきに戻す。
突如、会長は勇ましい顔つきに変わる。
「諸君達に言うことは二つある」
クラスの雰囲気が一変し、学生全員が気を引き締めた。
「まず、一つ目は、気づいているものもいるだろうが、俺の隣で立つ二名が新たに学院の仲間として加わった。彼らはこの『Ω』クラスに配属される。皆拍手で迎えてくれ」
パチパチパチ、とクラスのメンバーは二人に対し拍手する。
「そして二つ目だ、これは予定にはなかったのだが……。まずは諸君に謝罪させてくれ。――すまない」
会長の意味深な言葉に対し、ほとんどの学生が怪訝な顔をした。
だが、会長は自分のペースで話を続けて、
「今日からこのクラスは――」
不意に、不敵な笑みをもらし放った言葉は――
「――荒れるぞ」
会長は、では失礼する、と言って颯爽と出て行った。
クラス一同が、事態に対し全く思考が追い付かずに困惑している中、二人だけがこの結果になることを知っていたかのように動いた。
「とりあえず、俺らの自己紹介からでいいかい?」
はっ、と皆が意識を新人二人に向け、無言で肯定した。
「ありがとう。では簡単な自己紹介させてもらうよ。俺は
「
名前だけの簡潔な自己紹介を済ませると、陽は続けて――
「――今日からこのクラスは俺らが貰うことにした」
会長の言葉のこともあってだろうが、クラスの雰囲気がひやりとしたものに一変する。
かくして、あまりにも唐突に、平和なクラスに波乱が巻き起こった。
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