デスクライトの下で

 デスクライトの下で、私はじっと歯車を見つめていた。深夜の2時を過ぎようとしている。歯車は全く動かない。時計なんて、修理に出せば綺麗に動き出すのは知っていたが、私はじっと見つめていた。

 大切にしていた腕時計の針が止まった瞬間、私の息も一瞬止まった。一緒に生きてきたのだと知った。だから、その分私は、私の分身と言ってもいいほどお気にいりの歯車をマジマジと見るのだ。

 そうすれば、動かずとも、大事なものを見落とさずに、自分の心に落とし込める気がした。私にとって大切な時間だった。

 カチカチと、もうひとつの歯車が回っている音がする。私はこの音が大好きだ。一定のリズムが、耳元で聴こえるのが好きだった。精緻が詰まった、大切なものだ。だからこそ、お気に入りには動き出して欲しかったのだ。

 触りはしない。満足いくまで堪能したあと、私はライトを消した。パチン、と消した瞬間に、大海原と星空が見えた気がした。

 あぁ、なんて素敵な時間を過ごしたのだろう。

 明日、時計は修理へ出す。大事な時間を一緒に刻んでいくために。

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