#7 一昨日の依頼書
ぼーっとしているとラネーメの古い故郷のことを思い出す。リパラオネ連邦にラネーメ共和国が加入する前、ラネーメ人の生活は非常に素朴だった。モノづくりであれ、食事であれ、建築であれ、人々の繋がりであれ。この時代の殺伐さには、素朴さが失われた地平にはうんざりさせられる。
そんなことを考えながら、私とレシェールは舗装された道を歩いていた。田舎なんかでは珍しい
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レシェールは怪訝そうに聞き返したが、さほど興味もなかったのかすぐに町中の様子を眺めていた。最近風紀を乱すとして違法になった路上の靴磨きやら、屋台が堂々と出店している。屋台はちょっとした移動茶屋からヴェフィス人やラネーメ人向けの酒屋も出ていた。昼から飲んでいる人間を茶屋のリパラオネ人が皮肉り、酔っ払ったヴェフィス人らと乱闘騒ぎになるのは違法屋台街の風物詩と言えるが早朝の屋台には突っ伏しているろくでなししか居なかった。
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私が理解した様子を見て、レシェールも頷く。
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ヴァルガンテ――と一言で言っても色々な者たちが居る。独特な倫理の中で善人的な一面を持つフラン・ヴァルガンテの中で最も大きな勢力を持つのが
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そういってレシェールが指さした先には小さくターフ
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そういってレシェールは事務所の中へと入っていった。ヴァルガンテの顔見知りというのは割と適当なのかもしれない。
事務所の中は小綺麗だった。ラダウィウム色のカーペット、骨董品っぽいラネーメ時計、窓ガラスに歪みはなく、特権階級らしい家といえばそうだった。ルンペンからしてみればこんなところに定住するのは夢だったが、一方のレシェールはここの空気が苦手なのか、少し嫌そうな顔をしていた。
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レシェールが手当たり次第に戸棚を開け始める。私も目の前の机の引き出しを引いて中身を物色する。物色しながら、自分の今の奇妙な状況に愚痴が漏れ出す。
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ため息を付きながらもレシェールは手当たり次第に書類をめくっていた。
一方、私が開けた引き出しの中にはぐちゃぐちゃに丸め込まれた紙が入っていた。紙の端を持って強くひっぱるとある程度広げられて読めるようになっていた。
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依頼書の中身を見てみる。見るからに貴族っぽい名前がそこに連なっており、住所が書かれていた。証印まで押されていて、どうやら代筆に行ったことは確実そうだ。
レシェールも横からしわくちゃの依頼書を覗き込んでいた。
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答えるとレシェールは律儀に開けた戸棚を締めていた。ヴァルガンテのくせにいちいち行儀が良いのは何だかムカつく。同じように目の前の引き出しを閉めるとさっさと事務所の外へと出てしまった。
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