#6 不可解な状況
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大声に叩き起こされた。昨晩、レシェールの家に泊まってから、いつの間にか私は椅子に座って眠ってしまっていたらしい。寝起きで身体に力が入らないせいで椅子から転げ落ちそうになっていたところを踏ん張って、声の主を探す。狭い部屋の中を見渡すと直ぐにいがみ合っている二人の男が確認できた。レシェールともう一方は昨日の取り巻きを連れていたヴァルガンテの男――どうやら、今日はぼっちで来たらしい――だった。
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指を差し合ってお互いを非難しているところは何だか滑稽だった。だが、静観しているわけにもいかず椅子から立ち上がって二人の元へと向かった。
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尋ねると二人の顔が同時にこちらに向いた。奇妙な連携感がその滑稽さを引き立てていて、気を抜けば笑ってしまいそうになったが必死に堪える。レシェールは頭を掻きむしりながらも私が起きてきたことに
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頷いて答えるがそれでも相対する男は目を細めて引かない様子だった。
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二人の煽りあいは止まった。ハッとしたヴァルガンテの男の方が頭を振って冷静になろうとしていた。自らの懐から
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そう言って、ヴァルガンテの男は仏頂面でくっちゃくっちゃと噛み香を噛み始めた。そんな様子を見たレシェールは不満げな顔を浮かべていたが、ややあって疑念の顔を彼に向けた。
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確かにレシェールの問は真っ当だった。レシェールたちのヴァルガンテと対抗しているヴァルガンテであるアクラプテゼースは教法公証人が警察などに犯罪の証拠を持ち込むのを危惧していた。ならば、逆に殺されたなら一件落着な気もしなくもない。
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眼の前のヴァルガンテの男の焦り様といえば、最初に意気揚々とレシェールの家に居座っていたときと大変りしていた。それだけの大事が進行しているのだろうが、自分にはどうしても実感が持てなかった。
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男は頭を抱えながら、苦しそうな声を出していた。
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不機嫌ながらも冗談じみた顔でそう言って男は袖から紙切れを取り出してレシェールに渡した。彼はそれを聞くとため息をつきながら私の腕を掴んだ。
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戸惑う私の断末魔も気にせず、レシェールはヴァルガンテの面倒な男をよそに私を部屋の外へと引っ張り出していった。こうして、アウトローとルンペンのでこぼこ探偵ごっこが始まったのであった。
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