#2 荒稼ぎは命を削ぎ落とす
目の前のテーブルには伝統的な紙机戦の札が裏向きに配られていた。テーブルに付いているのは中流階級っぽい服装の男二人と制服をきっちりと決めているディーラー。先程までイライラとしていた男は気持ち悪いほどににやけていた。分の悪い戦いになってしまったと思うも後悔先に立たずという状況だった。
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煽ってきたイライラ男は皮肉男と顔を見合わせて、私の牽制に大笑いした。
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面白くもないやり取りにため息が出てきてしまう。そんな反応に男二人は肩をすくめて何もなかったかのように振る舞っていた。
ダドータのルールなら知っている。時折、ストリートチルドレンの仲間が持ってきて遊んでいたときがあったからだ。
ダドータには紙机戦という札を使う。札の構成は黒と赤の札に分かれる。同色札のワイルドカードとなる「船」が1枚、「0」が3枚、「1」が4枚、「2」~「8」が2枚、「将」が2枚、「王」が1枚、「皇」が1枚各色ずつにある。これはどんなルールでも同じだ。しかし、ダドータの場合プレイヤーは山札から五枚手札を配られ、異なる色でも良い同じ数字札三つ・二つか同色の連続する数字札三つ・二つで2・2・2か3・3というペアを作り、"
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感情を感じさせない声で言うとディーラーが手札を配り始めた。自分の手札は赤1、赤2、赤3、黒2、黒2となっている。黒の同色同数ペアが出来ているので、この場合は赤のどれかを捨てれば良い。山札から一枚引くと赤2が出てきた。この場合、総枚数が2枚の赤3よりも4枚である赤1を残したほうが受け入れ枚数が多い。
考えているとテーブルをこつこつと叩く音が聞こえた。イライラしていた男が人差し指でテーブルを突いていた。
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言い返してから赤3を出す。すると目の前の男が
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テーブルに残った手札を叩きつけるとディーラーは点数計算をした後に捨て札側に持っていった。そしてまた山札から五枚づつカードが配られてゆく。
そうして何回もの勝負が繰り広げられたものの私は面白いほどに負けていた。人生の運が悪いのは認めるけれども、勝負運まで悪いとは我ながらに呆れる。最後の最後には軸人同色六連入終季という役で自分の点棒はマイナスになってしまっていた。つまり、掛けた所持金以上に金を支払わなければならないということである。そして、そんなお金は手持ちには無かった。
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ごまかし、逃げようとして後ずさりするもその後ろからもうひとりの男が肩と腕を掴んできた。ニヤケ顔が気持ち悪い男はゲームの前に参加条件を設けてきた男だった。
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言い終わる前に男は私を壁際に押さえつけた。衝撃が頭に響いて、一瞬意識が飛ぶが、夜を売るノーモンシェーヌになるくらいだったら死んだほうがマシという強い感情で意識を取り戻した。睨みつけられた男は視線を反らした。
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そう言いながら、もう一人の男と目配せする。
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すっと血の気が引いた。何を言う気も起きず、逃げようと必死にもがこうとした。しかし、男に背後から押さえられて身動きが取れなかった。もう一人の男が手荷物から縄を取り出す。
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男が縄で私を縛ろうとした瞬間、肩に手が這った。男が振り返るとそこにはまた別の男が現れる。グレーの袖が巻かれたアンフィレン・アパート、ブロックチェックのスカーフを付けたその姿は
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