戦う詩人と人形の町、または賭博人

Fafs F. Sashimi

#1 運命とチャンスは別物


 見上げていた。


 目の前には壊れて途中から光っていないネオンサイン。そこには"Esacesle最高の velfezainal賭場"という言葉が並ぶはずだったのだろうが、途中で途切れて"Es賭場で velfezainalあれ!"となっていた。それが賭場の入口の前に立つ私――フェリーサ・アタムには愉快に感じられた。違法である賭場を運営しながら「最高の賭場」と胸を張っておいて、その裏で摘発されないかとびくびくしている裏社会の運営者の心理を如実に表わしているように感じられたからだ。


 突っ立っていると路地裏にあるその入口を行き交う人がちらほらと見える。そういった人間は私のことを絶対に一瞥していた。賭博場に似合わぬ可憐な少女が居ると見ているのか、それともみすぼらしい浮浪者の子供が餞別を待っていると見ているのか。そんなことは私には問題ではなかった。

 手元に握られたレジュ紙幣はその現実を痛いほどに表している。今、ここに立っているのはその日暮らしを変えるためだ。まともな服も買えず、路上で適当な仕事を得てはその日の命を繋いでいるこの生活を変えるためだ。


 ピリフィアー歴1992年だか、1993年だか知らないが祖国デーノ共和国はちょうど今戦争中だ。第二次国家統合戦争クアッド・ホメーンアッシオヴェン・エルミエスムという仰々しい名前がついたこの戦争は、全世界を巻き込んで互いに侵略と支配を進めていた。働き手を動員された多くの貧しい家族は子供を路上に捨てて、私のようなストリートチルドレンが大量に生まれることになったわけだ。こうなってしまえば成り上がる手は一つしか無い。


"Ers fai賭けに molkkavol勝って velfezaino成り上がる......"


 自分を突き動かしていた希望。その呟きは壁に染み込むようにして消えていった。賭場に足を踏み入れようとすると身体が震えた。入り口を通るとすぐに聞こえてくる喧騒に緊張感が高まる。部屋の中では様々なゲームが行われていたが、その隅で殴る蹴るの好き放題をされている奴が居ることに目が行った。イカサマがバレればあの様になると聞く。私にとってはまともに賭けても負ければその日の食事は抜きということになる。それはそれで死活問題だったが、仕事は他にもある。そう考えれば今までここに来なかったことが馬鹿らしく思えてきた。暇して後方の安全地帯のリゾートで私腹だけでなく自分の腹を肥やしているとある戦争成金曰く、人生を変えるチャンスはそこら中に転がっているという。自分にとってはこれがそのチャンスとやらなのだろう。

 適当なテーブルに向かって、手を打ち付けた。その中には100レジュ紙幣3枚が入っていた。定食ラネーディンにちょっとしたデザートでも付けたくらいのものが食べられそうな価値の値段だ。一般人にとっては微妙でも、ストリートチルドレンのようなろくでなしにとっては高額となる。これで一週間は生き延びられるからだ。


"Hahはっ! Vaj najstiお嬢ちゃん, velfezainerlestanそれじゃあ es versece賭け金が少なすぎる! Dosnud jaお家に帰りな!"


 テーブルに付いていた男は見下しながら、そういうと手でハエを払うように私の目の前で手を振った。身なりからストリートチルドレンだと気づいていたのか、最後の言葉に皮肉が込められているように感じた。私達の家といえば路上だ。その言葉は見えないところで勝手にくたばってろと言うのと何ら大差ない――にしても、デーノの市民としては兼ね一般的な――考え方だった。

 私はテーブルに身を乗り出して、男に詰め寄った。賭けが出来ないにしても、煽られたなら黙ってはいられない。


"Jol co nivルンペンごとき velfezainに怯えて flesvergonj手も出せないって nilila lasことだね?"

"Jeiおい, Intarmerdettいい加減にしろよ."


 皮肉を言った隣の男がイライラしながら、私の言葉に反応した。


"Miss ad cope俺らとお前 cecioじゃあ elme waxes格が違うんだよ. Cene niv勝負に lkurf laなら keke lar atねえよ!"

"Xi xi良いじゃねえか! Fqa esこいつ xarne do面白いぞ."


 皮肉男がそういうとイライラ男はため息を付いて諦めたような顔になった。この間、数分。テーブル付きのディーラーは静かに目を閉じながら、カードを切ったりしていた。目の前の会話に興味も無いようだった。

 イライラ男はいきなり下衆な笑みを浮かべながら、私に詰め寄ってきた。人差し指を私の額に押し付けると少し強めに突いた。


"Paだが, mi atakesesお前の参加には dhenefos virotola'c条件を cope'st設ける."

"Dhenefosasti条件?"

"Jaああ, Fi mi molkkaもし俺が勝ったら, mi fentonお前のことは好きに lus coさせてもらう."

"...... Mi es niv私はノーモンシェーヌ normonxernuじゃないんだけど."

"Olじゃあ, selene coここで逃 zailemalefeげるのか? Ers jasna ja臆病者じゃないか."


 臆病者と言われた瞬間、血が沸騰するほどに怒りの感情が湧いてきた。お前のような遊び人に私の人生が分かってたまるか――そんな言葉も出ずにテーブルを叩きつける。イライラ男は半分嘲笑気味に、皮肉男はビビって目をパチクリさせながら私をまじまじと見つめていた。


"Carliいいよ, lecu fas始めよう. Jol mi alt alle全部勝ってみせる."

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る