第3話スクールカースト(笑)
えっと、突然ですが私は楠環といいます。章陽高の1年2組が私のクラスです。
入学して1ヶ月が経ちますが、私には友達という友達はいません。
べ、別に苛められてるわけではないのです!人見知りの性格、というよりは臆病なせいで誰にも声を掛けれなかったのです。まあ私の話はいいのです。
入学して1ヶ月で、幾つかのグループができました。そう所謂スクールカーストに連なるグループです。
その中でも上位のグループの一人猿山くんが、よく私の席を占領してしまうのです。
「どうしたの、環さん?」
な、名前呼び!?突然の名前呼びに驚き振り向けば、そこには私の隣の席の村上ヒロミチくんが立っている。
え?あれ?いつも名字で呼ばれてた気が、それに何か雰囲気が違うような・・・。私の困り顔を見た村上くんは、私の後ろを見て「ああ。」と小さく笑う。私はただ村上くんの雰囲気に困っていたのだが。
この状況は2週間程前から始まっていたので村上くんもいつものことかと思ったのだろう。そして村上くんならいつも通りにこう言うはずだ。
「僕はHRまで正宗と喋ってるから、楠さんは僕の椅子に座っててよ。」
その言葉にちょっぴりときめいたのは秘密だ。しかし、今日は違った。
「猿山くん、環さんが来たからそこ退いてくれないかな?」
★ヒロミチ視点
「あんだお前は?」
俺の目の前には、猿山というクラスメイトがいる。俺の隣の席の楠環さんの椅子を、毎日のように占領している輩だ。
猿山は身長170㎝で、ボクシングのスポーツ推薦でこの学校に入学したと、自己紹介の時に言っていた。中学では全国大会にも出たことがあるそうだ。
それをかさに着て、一年生の中では幅を効かせているようだ。
「俺は村上ヒロミチ。もう1ヶ月も同じクラスにいるんだ、いい加減名前ぐらい覚えたらどうだい?」
異世界に行く前の俺なら、見てみぬ振りをしたままだったろう。だが、今は違う。コイツがどれだけ凄もうが、なんの脅威にもならない。まだゴブリンの方がマシだ。
「あんだと!やんのかコラァ!!」
俺は心の中でほくそ笑む。いや、顔も笑っているか。こういった輩は単純で正直助かる。何故かだって?強さを見せつければ黙るからだ。
だから俺は殺気を放った、当然猿山にだけだ。魔王すらもビビる俺の殺気に猿山は一瞬で気を失い倒れこむ。しかもお漏らしまでして・・・。
うん、ちょっとやり過ぎた!
★楠環視点
凄む猿山くんを見て、私は村上くんを見た。村上くんは視線を逸らすでもなく、恐怖に怯えるでもなくただ笑っていた。
私はそれが少しだけ怖かった。その数秒後、突然猿山くんが倒れた。まるで糸の切れた操り人形のように。しかも、お漏らしまでして・・・。
「環さん、席空いたよ?」
倒れた猿山くんを一瞥もせずに、村上くんはそう言ったのだった。
笑顔で言われても困る。何故なら私の席には、猿山くんのおしっこが掛かっているのだから・・・。
★姫野城視点
私の名前は姫野城姫乃。正直、両親のネーミングセンスにうんざりしています。
当然のように周囲からは姫と呼ばれます。街中で大声で呼ばれた時は恥ずかしくてたまりません。
そうですそんな話はどうでもいいのです。私が朝の巫女の勤めを終え、登校し教室に入ると阿鼻叫喚の真っ只中だったのです。
いつもと違う騒がしさに戸惑う私の横を、猿山くんの取り巻き二人がグッタリとした猿山くんを抱え教室を出て行きました。
その際に僅かなアンモニア臭がしたのは何故でしょうか?その答えはすぐに分かりました。
「姫、おはようー。」
私に気付き手を振りながら近寄るのは、私の幼なじみの丸井知恵だ。
「知恵、一体何があったの?」
私の疑問に知恵はぼんやりと答えてくれた。
「えっとー、村上くんと猿山くんがなんか睨みあっててー・・・。」
その後、いきなり猿山くんが倒れた、しかもお漏らしして。
「村上くんが何かしたのかしら?」
「ウーン、そんな感じじゃなかったかな?村上くん凄い笑顔だったし。」
私は知恵の言葉に引っ掛かりを覚えた。猿山くんは確かボクシング部で腕っぷしには自信があると、散々私に自慢していたのだ。それはクラスの皆も周知のはずだ。
そんな猿山くんに凄まれて、村上くんは笑顔だった?失礼だが私には村上くんが、猿山くんよりは強そうに見えない。
それに猿山くんは何故倒れたの?・・・そういえば、村上くんは今朝どうやって境内まで行ったのだろう?
境内に行くには、私が掃除していた階段を必ず通らないと行けないのに。
私は産まれて初めて、ある意味特定の男子の事が気になった瞬間だった。
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