第1話 ポンコツ神様降臨
目を見開くとそこには神々しい光を放つ神様っぽい人が一人。こちらを優しく包み込むような黄金の瞳で見つめている。
「あなたを千年間待ち続けていました」
そう告げられ、ぽかんとしてしまう私。何がどうなっているのかついて行けない。というか、誰?
困惑している私を見て、彼は微笑みかけ言う。
「ようこそ、ぼくらの神殿へ」
知らない人に声をかけられている。というか、誘われている…?
(これはかなりまずい状況…この人も精神的にやばそうだし…)
何を言えばいいのか迷っていると純白の光と共にもう一人白銀の髪の男性が現れた。彼は私を一目見て、神々しく光っている………金ピカ…に何かを語りかけている。
(コソコソ話?にしては、二人とも声が大きすぎる…)
二人の話の内容はこうだ。
金ピカ「ねぇ、ちょっと」
白銀の髪の人「なんです?まぁ、何となくは察しましたけど」
金ピカ「だよね?あの子、何も喋ってないよ?口ある?人間だよね?」
白銀の髪の人「ちょっと!声が大きいですよ、椎名様!あとチラ見しない」
金ピカ「あ、こっち見てる…コワッ」
白銀の髪の人「あなたがあちらをチラチラ見ていたからでしょう?後、あちらからしたらあなたが一番変人です」
金ピカ「……。君に言われたくないよ、笑笑」
ポンポン
白銀の髪の人「いや、僕もあなたには言われたくなかったです。あと、肩を叩かないで下さい」
金ピカ「なんで!?」
白銀の髪の人「筋肉痛なので」
というような会話が10〜15分続いた。
(学校帰りで疲れてるのに長話かぁ。はやく終われ〜)
暇だったので近くにあるベンチに座り、時を待つ。我ながら冷静だと自分でも自覚している。
ここは私の家に近い公園。私の家はアパートで親は私が幼い頃に不運な交通事故で亡くなった。今は高校生、ここまで育つことができたのは私の祖父のおかげだろう。家賃も払ってもらっているので本当に感謝しかない。でも、そんな祖父も今は病院のベッドの上である。
私が暇そうにしているとそれに気がついたのか、白銀の髪の人がこちらに歩み寄り、私に手を差し伸べてくれた。
「僕はあの人の神使、伊吹です」
とあちらにいる金ピカを指さながら自己紹介をしてくれる。
(とりあえず、この人は信頼できそうかな。なんというか声がいい、落ち着く…あ、あの人は…?)
私も伊吹さんというイケボと同じ方向をむく。
何を思ったのか、金ピカがこちらに足を進めてきた。そして、急に手を振り上げて伊吹さんを指さす。
「こら、現ご主人様を指差すんじゃない」
と言い、ずかずかとこちらへ歩み寄る。それを阻止しようとする伊吹さん。この二人は一体どんな仲なんだろう……。てか、何してるの?
とりあえず、私も何か喋らなくてはと思い、二人に話しかけることに。
「えっと…、貴方達は誰ですか?あと私とは知り合いなのですか?私は存じあげませんが」
私の問いかけにきょとんとしている二人。そして、金ピカの方は大笑いしだした。
くっ、失礼なやつめ…腹筋に連続パンチを決めこようと思ったが伊吹さんが申し訳そうにこちらを見つめているので我慢することに。
そんな伊吹さんを放っておいて金ピカは容赦なくこちらへと踏み込んでくる。
「まずは、僕たちの正体だね」
急に元気よく喋りだす金ピカ。それを冷たい目で見る伊吹さん。
とりあえず、関係性は放っておいて話でも聞こう……
「とりあえず、簡単に言うトォ。僕は神様だョ〜!」
急に意味深な言葉を発する金ピカ。それを聞いた伊吹さんが金ピカに瞬足のラリアットをぶちかます。
「ぐゥはァ!」
勢いが強すぎたのか気絶する金ピカ。なんだかんだで楽しそうに見えるのは私だけだろうか?……。
急な展開であったものの、私は金ピカが気絶している最中に伊吹さんからたくさんの話を聞いた。とりあえず、金ピカが言う神殿?とやらに入ることに。
私の家系はあの金ピカ、いや椎名様と言うのだっけ?と千年前からある約束をしていたらしい。詳しくは教えてくれなかったが、私の家系には鬼の血筋が流れており、人間達から身を隠すための薬を金ピ…椎名様から頂いていたらしい。
(なんだ、いいやつじゃない…っていうか、私の家系そんなにすごかったの!!)
と思ったのも束の間、その薬と引き換えに
「はぁぁ!?労働力?」
伊吹さんの話の最中、私はつい声を張り上げてしまった。その声で寝かされていた椎名様が目覚める。
「はい、なので貴方にはここで働いて貰わねば…いけない…んです」
申し訳そうな伊吹さんの顔。
「もちろん、ただとは言いません。貴方にも迷惑ばかりかけていましたから」
「迷惑?」
つい、伊吹さんの発言が引っかかる。
“かけていました”って、昔何処かで会ったみたいに言ってる……けど…。
そして、その中に無理矢理入ってくる椎名様。空気読め。
「だから、僕の神使として働いたらいいんだヨ?あれ、君何歳だっケ?」
ふざけた喋り方ね…ムカつくので無視
「えェ、ひどォ」
「本日2回目のラリアットをかまされたいですか?」
「………」
伊吹さんの一言に静かになる椎名様。
そこに、伊吹さんが分かりやすく説明してくれる。
「簡単にまとめると貴方は今16歳なので学校は……神使になるのですから行かなくてもいいと思いますけど…」
どうします?というような顔で覗き込んでくる二人。伊吹さんはともかくこの金ピカは何故かムカついてくる。
「でも、私の祖父が…」
話そうしたその時、椎名様が突然私の肩を掴んだ。
「な、なんです?」
びっくりして、声が裏返る私。
椎名様は相変わらずのニコニコ顔で笑いかけてくる。それを不気味に思ったのか伊吹さんもすぐ様止めにかかる。
「一体どうしました?椎名様?」
伊吹さんの問いかけに対して椎名様は
「体験とかやってみる?」
とやる気満々に言う。それには、伊吹さんも何故か納得しているご様子。
「確かにいいですね、体験。案外、役に立ちますね椎名様」
(てか神使体験とかこの世にあるんだー。いつも暇そうにしてそう、この人。見たまんま、神使は伊吹さんぐらいかな?大変なんだろうな…)
「それに貴方の両親からもOKサインがあったので。どうです?新しい人生切り開いてみませんか?」
と急すぎる提案をする伊吹さんの話について行けなくなる私。
というか、両親と知り合いだったの?あれ?亡くなってるよ?頭が混乱してくるし、この金ピカなんかムカつくし。
今、思い返せば今日一日で色んな事が起きた。でも、これが私の新しい人生の始まりだったのかもしれない。
「あ、ちなみにお名前聞いてませんでしたね」
伊吹さんが私に問いかけてきた。私は
「千冬です、」
と答える。あまり、変なことを言ったつもりはなかったのだが、ほんの少し椎名様の顔が険しくなっていたのが目に入った。そう、ほんの少しだけ…。
っていうか、はやく寝たい…
* * * * *
豊穣の椎名神、みんなからは椎名様と呼ばれている。
「千冬かァー」
「椎名様、本当にいいのですか?」
背後から仕事をしていた伊吹が喋りかけてくる。
「こら、仕事に専念しなさィー」
いつも通りに振る舞うが、驚きを隠せれていないのがもう伊吹にはバレばれだろう。
「仕事に専念って、それ貴方が仕事に専念してから言える立場ですよ、椎名様」
「あいあい」
適当に合図をしとく。
「でも、本当の事、言わなくて言いんですか?千冬さんに」
珍しくよく喋る伊吹。
「いいよいいョ、話すぎたら頭パンクしソ〜じゃん?☆」
「………。お言葉ながら椎名様…。自分をJKとお考えで?いや、キモ…というか、最後のキラキラいります?」
「あぁァー、あぁァー、聞こえまセェーン」
伊吹の言葉をわざと遮り、外に出る。
今は夜中。その空には、三日月が浮かんでいる。そして、僕は思い出す。
あの血塗られた記憶を……
いつかは本当の事を言わなければならない時がくる。それがいつくるかは分からない。その時まで、正体を隠しきれるだろうか?
「うわぁ、寒っ」
流石に寒くなり、屋敷内に入る。そこには、ボーと佇んでいる伊吹がいる。
「なァーに、してるの?」
背後から近づき伊吹に抱きつく。
それでも伊吹は動じなかった。
(いつもなら、“ボーイズラブ”がなんとかって言ってたのに)
そして、ふと伊吹の手元を見るとそこには一枚の紙があった。
そして、4人の名前が記されている。
この世界は秘密が多い。そのうちの一つ、それは報われなかった人生を送った人間が生まれ変われる場所であるということ。
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