偶像 第三章

 衆議院はけんけんごうごうとしている。

 総理総裁は疲弊しているようだ。

 議長にそうされて総理総裁が答弁者席にてきちよくするといわく〈ですからわたくしがまんいちですよ学園側から賄賂というか一〇〇万円を享受していたという証拠があればですねわたくしはほんとうに辞職も覚悟しますよ〉と。総理総裁が着席し野党の若手議員が質問者席にせんかいする。いわく〈証拠があればほんとうに辞職なさるんですねならば我我が証拠を提示すればいいわけですね〉と。与党側からざんぼうめく。〈結局証拠なんてないんだろう〉〈えんざいで我我を瓦解せしめようなんてくさった根性だ〉と。再度総理総裁が挙手して議長がりようしようまた答弁者席にきつりつする。〈ですからわたくしがまんいちですよ学園側から賄賂というか一〇〇万円を享受していたという証拠があればですねわたくしはほんとうに〉といったところでまんさんとよろめいた総理総裁は片手でとうわしづかみにしてくずおれてゆく。会議場は造次てんぱいせいひつとし与党野党両陣営からじゆつてきそくいんするこえが木霊する。胎内のえいふうぼうおうしている総理総裁のかいわいに与党議員がさんそうしてきて絶叫するなか議長がする。〈静粛に静粛に〉

 総理総裁は病院にきようどうされる。

 内閣総理大臣秘書官のきようどうによってけいおう義塾大学病院へと救急搬送されるとしゆつこつたる脳出血がおくそくされCT検査を遂行された。脳出血は確認されずMRIで脳梗塞の検査が実施される。はくの診察室にて顔面そうはくの内閣総理大臣秘書官に院長のいうことには〈MRIで脳血栓が確認されました心臓のしようがいが原因となる急激な脳塞栓とは相違して動脈硬化のために脳内で血液がかたまっている状態というわけです〉ということである。つゆいささこくそくたるがんぼうをゆるめた内閣総理大臣秘書官はいう。〈いますぐにでも手術をおこなってください〉と。院長はいぶしぎんほうはつをくしけずりながらほうはいためいきをしてつづける。〈先程もうしあげたようにこれは急性ではありませんおうから脳髄ぜんたいで動脈硬化がおこっていたようでなり深部での血栓も見受けられますよくて植物人間最悪死も覚悟してくださいまでくると世界的な名医でも理想的なる手術は無理でしょう〉と。指先をけいれんさせた内閣総理大臣秘書官いう。〈どんな名医でもですか〉と。院長は意味深長にいう。〈ひとりをのぞいて〉と。

 院長はまたためいきをする。

 きつきようしたようながんぼうで内閣総理大臣秘書官が沈黙するなか診察室内のPCでインターネット検索しながら院長はいう。〈ひとりはいるんですよ〉と。〈せきの手とよばれる天才がね〉と。〈ですが安心はできません変人なんです〉と。かくやくたるPCの画面には千葉県内の某救急医療センターのHPが展開されクリックしてゆくとひとりの医師のしやしんと経歴が表示される。さいかいたるがんぼうでスキンヘッドの男性医師だ。名前は熊谷てつと記録されている。院長はいう。〈のう新潟県内の偏差値三〇台のだいがく生だったんですがねなにゆゑかだいがくを中退して三浪したうえで東京だいがく医学部に入学主席で卒業後カロライナ脳神経研究所にて神の手とさんぎようされる脳外科医のきようべんのもとでりようをみがき帰国脳外科のみに冠絶した医師として年間二〇〇人の困難なる脳外科手術を実験台とよび成功させている天才です〉と。内閣総理大臣秘書官はきんじやくやくとしていう。〈紹介状をおねがいします〉と。院長は複雑怪奇なるがんぼうだ。〈期待しないでくださいやつはほんとうに変人なんです〉という。

 総理総裁はきようどうされる。

 東京都内からドクターヘリが出発し千葉県へとこうしようする。ぎようこうにもこんほうたる救急医療センターの屋上にはかいなるヘリポートが設置されていたのでつつがくドクターヘリはセンターにほうちやくした。かいてんするプロペラがめいているなか総理総裁はストレッチャーにて搬送されてゆく。ヘリポートに巨漢があらわれた。熊谷てつ医師だ。医師いわく〈もう死にそうじゃないかそこそこの実験台だな〉と。ないに階段からヘリポートに女性看護師がちんにゆうしてほうこうした。〈聴性脳幹反射=ABRによると遷延性意識障害の患者様のⅠ波からⅣ波の反射が低減していますこのままではホメオスタシスの維持が不可能になるとおもわれますもう限界ですいますぐにでも手術を〉と。医師は絶叫する。〈すまんが総理総裁の手術は中止だかえれ〉と。内閣総理大臣秘書官が〈こつの非常事態ですよ〉とさけぶ。医師いわく〈総理大臣にかわりはいてもゆきちゃんにかわりはいないんだよ〉と。

 新患をひんせきしてさけぶ。

〈手術を開始する〉と。 

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