キミの缶に入ってるお茶は大丈夫か?(元ネタ:長野毒入り烏龍茶事件より)

とある、暑い日の事であった。

この家の職業は塗装業と思われる年の頃は60近い男は

朝からの余りの暑さに堪えかねてのか、

朝食の時に冷蔵庫から取り出したばかりの

冷えた缶入りウーロン茶を一気飲みした。

その後、ご飯を三口ほど食べたところ

突然、胸が焼け付くような不快感がして口から泡を吹き始めた。

そして無意識にもがき苦しんで倒れた。食べたものは全て吐き出した。

男は、救急車で病院に運ばれたが8:12に死亡した。

病院は「急性心臓死」と診断した。

直前まで元気だった男の急死に不審を抱いた家族は

「検視」の依頼を要請し病院側では遺体の検視を行ったが、

急性心臓死の結論は変わらなかった。


彼の死の翌日の事だった。

その日の13:00頃、塗装業の男もよく利用していたスーパの店長が、

缶が変形したウーロン茶を発見した。

売り物にならないと判断し商品棚から抜き取り自らこれを飲んだ。

店長は一口飲んで味と異臭に気付き吐き出した。

早速、警察に不審物として届け出た。

警察がこのウーロン茶の缶を調べると、

缶の裏底に小さい穴を接着剤で埋めた跡があり、

中身を警視庁の科学捜査研究所に調査依頼したところ

それからは「青酸化合物」が発見された。


この事件を新聞で知った男性の家族は、

警察に届けるとともに男性が飲んだウーロン茶缶を警察に提出した。

結果、スーパにあったウーロン茶缶同様、

裏底に接着剤の跡があり青酸化合物が発見された。

そこで、科警研は病院に残されていた男性の血液を調べた結果、

青酸の反応が出たことを確認した。

警察は「無差別殺人」事件として大掛かりな捜査を開始したが、

有力な手掛かりは掴めていない。

男性の死は、スーパでの第二の事件が発生していなければ

永久に「急性心臓死」のままだった。


スーパーは国道から奥まった場所にあり、

地元の人の利用がほとんどであることや、

防犯カメラのない店、あるいは、

防犯カメラがあっても故障中の店を選び、

日曜日や特売の行われる客の多い日を狙って

毒入りウーロン茶を置いていることから、

犯人は店の事情に詳しい地元の人間で、

青酸カリの知識もあり、入手が可能な人物の犯行と見られている。


フェミニストどもは、事件の顛末をテレビで見ながら囁きあっている。

「この作戦は、上手く行ってる様だ。」

「くくく、そうよ。世の中の愚民どもの

うろたえぶりが目に浮かぶわ。」

「さて、キミたち諸君。」

「何かな?」

「何だ?」

「林原泳三の死に関して、しくじりがあったそうだ。」

「どういう事だ?」

「林原には、戸籍上、同居の養子が居たのだ。

それを野放しにすると泳三の死に関して、探り出す恐れがある。」

「それは大変だ。」

「そこで、その林原の養子である子息を強制立ち退きに反対している

地元住民ともども抹殺せよとの指示だ。」

「それなら、他愛も無い。」

「なら、答えはひとつだな。」

男たちは一斉に席を立った。

これが、この男たちにとっては転落への予兆になるとは知らずに。


そして毒入りウーロン茶事件からしばらく経った。

ゆうじは、一向に解決しない毒入りウーロン茶事件を

思い出すにつけ思いを強めた。

「あの事件は、きっとフェミニストによる無差別事件を装った

世の中の男性に対する無制限抹殺作戦であるに違いない。」

確かに自分ひとりではとても困難だろう。

だが、それでも今の自分は死ぬ事は出来ない。

彼らの野望を挫くためにも今の自分は潰される訳には行かない。

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