フェミニストからの犯行予告(元ネタ:新宿クリスマスツリー爆弾事件より)

ときは、おバカこと尾場寛一おばかんいちがまだ本名の皆村良人みなむらよしとであった頃。


街は流石にクリスマスイブのムードで包まれていた。

その街中をおバカが歩いていた。

否、この場合は皆村良人と称した方がいいのだろうか?

「あのさぁ。どうせ俺は中学に上がれば改名なるんだからさ、

いっその事、新しい方で呼べよな?」

ああ、判ったよ。って何でナレーターのわたしが、

アンタにツッコミされないとならんのだ?

「いいじゃん。別に?アンタだって、オレのこの皆村良人っていう

名前の表記には何の愛着も無いんだろ?

お袋(コイツがこの小学6年の時点で故人)も

自分の苗字が嫌で仕方なかったみたいだし。」

ほほう。では訊くが何でその苗字が嫌いなのかね?

「だって、その苗字だと漢字は"皆"して"村"に引きこもるって読めるだろ?

オレだって小さい頃からお袋に言われたんだよ。

『男なら保守的になるな、生きてる間は常に変化と向き合い続けろ』ってさ。」

なるほど。って、いい加減にしろ。いちいちお前と

やりとりしては話が進まんだろうが?

「ああ、判ったよ。くれぐれもいきなりオレを死なすなよ?」

だから、メタい発言はもういいって!

このおバカは本来は真冬の高い山に同級生と引率の教諭と一緒に

登山をしていたはずなのであるが何でこの街中に居るのかというと、

一言で言えばボイコットしたのである。この男からすれば

この毎年恒例の中学受験を控えた児童を雪山登山に

引率するのが登山の専門家では無い学校の教諭であったからだ。

ただでさえ登山の経験が皆無な大人が更に登山経験の皆無な

児童を引率して冬山登山を決行して児童に精神的な強さを鍛え上げ

心に磨きをかけようという企画であったからだ。

おバカからすれば、前年において親父であった尾場勘吉と親戚、

実母の皆村加奈子を相次いで在日中国人や韓国人による

強盗放火殺人や強姦放火殺人によって奪われたのだ。

そこへ来てただ昔から行われているというだけの理由で

こんな安全の確保も何もあったもんじゃないという大人のロマンに

付き合わされて良くても凍傷で手足を失うか、悪くすれば

冬山が自分の終焉の地になりかねないのだ。

おバカからすれば、身勝手な大人の都合で家族を奪われ

自身の命を危険に晒されたのでは堪ったものではない。

そこでおバカは思った末に、教室で明日にでも冬山登山に

連れて行かれると判ったその日の間に姿を消したというのだ。

そして数日かけて逃げ隠れしている間に、冬山での教諭と児童の

謎の死となりその顛末をクリスマスイブを迎えた今日のニュースで知ったのだ。


そういう意味では、おバカとしてはもし、あのまま無理やりでも

冬山に連れて行かれたら自分はここには居なかったであろう。

すると繁華街の傍にある派出所を見る。おバカは無意識に物陰に隠れた。

それというのも警察の方でも、おバカが学校の行事をボイコットして

街の何処かに隠れ潜んでいるだろうと聞かされるはずだ。

パトカーやバイク、徒歩で巡回中の巡査に見つかるのでさえも

今のおバカとしては好ましくは無い。

その派出所から二人ほどの巡査が入り口から出てきた。

これは見つかったか?おバカとしてはそう考えた。

だが、二人の巡査はというと道路を挟んで反対側の

遮蔽物しゃへいぶつに身を隠しているおバカの事など

歯牙しがにもかけず派出所の裏に回る。

どうやらおバカとしては杞憂きゆうに過ぎなかったみたいだ。


二人の巡査が大きな紙袋を二人がかりで持って

派出所の入り口の傍に置いて紙袋を外すと、

そこにあるのは高さが50cmは下らないという

クリスマスツリーが露わになった。

それを二人の巡査が調べ出した途端、

凄まじい轟音とともに爆風と衝撃波が襲った。

無論、おバカは無意識に遮蔽物の中に身を潜めた。

爆発した後、爆煙が晴れるとそこにあったのは

瓦礫と爆発によってミンチ同然の肉片となった巡査と

爆発に巻き込まれたのか重軽傷を負った多くの通行人が

倒れ痛みと苦しさに悶えていた。

折角のクリスマス気分が台無しになったと思ったおバカは

結局、その場を離れ家路につく事にした。

誰も居ない自宅に戻った。するとその郵便受けに何かが

送られている。蓬色よもぎいろの封筒の様だ。

おバカはその封筒を開けようと思ったら何やら薄いモノが

仕込まれている様だ。そこで磁石を緩く滑らせて見る。

どうやら無理にでも手で千切って開けようとすると

手や指を怪我する仕掛けが施されているかも知れない。

そこでカッターナイフを上手く使っての開封を試みる。

すると案の定、カミソリの刃が仕込まれている。

そして一枚の白いA4サイズの紙が折りたたまれている。

それを広げて見たところ、その紙にはこう書かれている。


"おい、皆村良人のクソボケ。思い知ったか間抜け野郎。

お前は見ただろう、あの派出所がどうなったかを?

我らフェミニストは世の女たちが幸せになる為の理想には

お前の様な道徳もクソもあったもんじゃない男は

ハッキリ言って邪魔なんだよ。お前みたいな

嫌われ者はとっとと、この世から消えて無くなれ。

いいか?我らはこの社会を変えるためには、

無能な税金泥棒の最右翼である警察など、

物の数じゃないんだよ。判ったら来年早々にでも

荷物まとめてとっとと、この世から消えろ。

お前みたいに女性を困らせて省みない性格の

男どもは今の社会には害悪でしかないんだよ。

世の女性を幸せに出来るのはお前ら男性どもでは無い。


国際グローバルフェミニズム機構より"


「くっ!世の中の女性が幸せになるためには

この世のすべての男が邪魔だと?バカにしやがって。」

おバカとしてはたかが男性というだけの理由で

殺せば残った世の女たちは幸せだという、

独善的な理由で命を取られそうになったのが苛立たしい。


すると背後から声がする。

「ちょっと?」

どうやら制服警官が自宅の玄関前で

立ち止まっているのを見て話しかけたのである。

「何だ?」

「変な郵便物でも送られて来たんですか?」

「まあな。

その紙と封筒を見ればいい。

今夜の繁華街前の派出所で起ったのと何やら

関係があるかも知れないぜ?そこの隣の家の

郵便受けにも同じ様なモノがあるぞ。」

おバカは巡査にそこの隣家はじめ近隣の家の郵便受けに

投函されている封筒を取りに行かせた上で

自分の持ってる封筒と紙を手渡す。

そしてカッターナイフで開封させて読ませる。

すると巡査の顔つきが変わってくる。

そしてこう切り出す。

「この郵便物、私が預かって貰っていいか?

署に戻って調べさせて貰いたいのだが。」

「ああ。別に構わないよ?」

おバカがそういうと巡査は郵便物をバイクの後部にある

トランクに入れてバイクにまたがり警察署の方角に向かった。

「おい、何があった?お巡りさんが何やら

ウチの郵便受けに入ってたものを持って行ったが!?」

近所の男性がおバカに問う。

「オッサン、繁華街前の交番がえらい事になったのを

テレビか何かで見なかったか?」

「何?それはどういう事だ?」

そういうと自宅に戻りテレビのチャンネルを変えてみた。

するとその画面には繁華街の入り口にあった

派出所が大破しているというニュース映像が流れている。

それを見て驚いた男性はおバカに問う。

「何か、派出所が爆破され警官が二人も死んでる上に

通行人にもかなり被害が出てた様だが?

それと今のお巡りさんの様子と何か関係があるのか?」

男性の問いにおバカは飄々とした顔で答える。

「過激派による犯行声明分が届いたんだよ。

しかも、そいつらはアンタやオレをはじめ

世の男性はすべて淘汰するっていうのが犯行声明分だ。」

それを聞いた男性が驚きながら怒鳴る。

「何で俺が殺されないとイカンのだ!?

つか、何なんだその過激派組織はッ!?」

男性のあまりの怒りを見越しておバカは更に言う。

「フェミニスト団体だ。」

「な、何そのフェミニスト何だかフェ〇チオだか知らないが。」

こんなときによくもまあ、その様な性的行為用語を

口に出来るとはある意味、余裕があるなあ。

おバカは男性に呆れながら、自分は不本意ながら

その怪しげな団体と戦わねばならぬという事態に

及んだのを知るにつけ、もう自分は

はらくくらねばならぬと思うのであった。

そんなおバカの心胆しんたんさむからしめる様に空から

沢山の粉雪が降り注ぎ寒風かんぷうが吹きすさぶのであった。

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