雪山へ行くのなんて止めた方がよくね?(元ネタ:ディアトロフ峠事件より)

ここはとある雪山。

時は都会において多くの人々はクリスマスムードに包まれている。

そんな最中、そんな雰囲気を他所に

雪山の頂上近くの峠を歩いている一行があった。

そのパーティは男性教師を筆頭に男子が7人、女子が3人だけという

構成された人数である。

その歩いている最中、ひとりの男の子が呟いた。

「まーったく、皆村のアホが最後まで来なかったな?」

それを聞くと他の男子も我が意を得たりとばかりに言う。

「そうだよな。これはウチの学校じゃ、昔から決められている

しきたりなんだよ?」

「まったくだ。アイツはチキンだ!」

「ホントよね。皆村くんってホントに普段はガサツなクセに

変な所で急に怖気づくんだから。」

「甲斐性なしっていうのは、ああいうのが成りやすいのよ?」

多くの面々がそう呟く。

ちなみに、彼らが言う皆村とは皆村良人の事であり

後のおバカこと尾場寛一の事を指す。

彼らの言う学校でのしきたりとは、来年の今頃に

中学の受験を控える小学生らに、

この厳しい雪山での登山とを通じて、世の中の現実に負けない

姿勢と心を学ぼうという考えで行われた企画なのだが

本来ならこの一行の中に彼らの言っていた人物が入ってないと

いけないのだが、この男はあれこれと理由をつけて

ボイコットを決め込んだからだ。無論、この教諭としては

もしこの雪山登山を終えて下山したら、叱責し

曲がった性根を叩き直してやろうというつもりだ。

煩雑なので、わたしとしては皆村良人ではなく最後までおバカで通したい。

山の天候は秋の空の様に気紛れなモノで、登山口の時は

クリスマスイブを控える時期とはとても思えぬ程の快晴であったのに

頂上付近に迫ると段々、天候は悪化し視界が悪くなり

このままだと猛吹雪を迎えるは必定な状況を迎えた。

「止むを得ん。今日はここでキャンプだ。テントを急いで張れ!」

教諭はキャンプを命じ、自らもテント張りを行う。

だが、このキャンプが彼らの最後となった。


それからクリスマスイブを迎えた。

とあるお店の片隅に座っていた。

その男とはおバカであった。テレビでは

妙高山において小学校教諭と思われる成人男性一人と

小学生男子6人、女子3人の遺体が発見されたというニュースが

連日報道され、それらは発見された際に

誰からも一概には単なる凍死とか低体温症とかでは

片付けられない様な死に方をしていたのだ。

それというのもそれらの死体は死の直前において何らかの

奇行に及んだのか、ある者は全裸になってたり

ある者は薄着となって何かの幻覚でも見たのだろうか

殊更、嬉しそうな表情を浮かべてたり

男子と女子が裸で性行為をしている状態でお互い身を横たえたりと

あまりにも理解しがたい状態で死んでいたのである。


「ふん。何とかバックレて正解だったわ。

もしあのまま連れて行かれてたら俺もああなってただろうよ?」

おバカはその様に呟いた。

「さてと、今日はクリスマスイブだぜ。

今日は思いっきり普段の不満を忘れて堪能しないとな?」

そう言葉を吐き捨てるとおバカはコーヒー代を支払って

夜の街へ繰り出した。

その晩の街はクリスマスムード一色に包まれている。

彼はそのムードに染まろうと賑わっている繁華街の中へと

闊歩して行き、人混みの中へと埋もれた。

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